星逢い 1





ズキン、と頭が痛む。

どうしたんだろう...

!」

名前を呼ばれて振り返る。

あ、え..と。

一瞬名前が思い出せない。

「どうした、ボーっとして」

ポンと肩に手を置いた彼を見上げた。

「ああ、うん。ちょっと頭痛」

「大丈夫か?」

心配そうに顔を覗きこまれた。

「うん、季節の変わり目とか、そういうときにあるから。そんなことより、今日の不知火はちょっと遅めじゃない?」

クラスメイトの不知火一樹に返す。

「今日は良いんだよ。そういや、昨日の課題。お前やったよな?」

「やってなきゃ、かなり拙いよね」

笑って返すと「そーだけど。ちょっと答え合わせさせてくれないか?」と苦笑いが返って来た。

「いいよ」

「くひひ。おはよ」

にゅっと出てきた人物に「わあ!」と声を漏らして思わず後ずさる。

「んー、もう!ってば驚きすぎじゃない?」

「いーや、これはお前が悪い!」

そう言って不知火が赤紙の三つ編みにゴーグル眼鏡の白銀桜士郎を軽く小突く。

「あー、うっかり心臓が口から飛び出るところだった」

「出すな」「くひひ、それはスクープだ」

あたしの言葉にそれぞれが返して笑う。


「おはよう」

階段を昇っていると声を掛けられた。

「誉!今日は朝練か?」

「うん。、おはよう」

「おはよう、金久保。今年こそインハイだもんね」

挨拶を返すと金久保は「うん」と頷く。

金久保は弓道部の主将で、今年こそインターハイの出場を目指している。昨年は、そこそこいいところまで行ったらしい。

「んじゃ、なー」

「またね」

そう言って不知火とあたしは教室に入った。

あたしは、星月学園2年星詠み科に所属する生徒で、あと数週間もすれば3年に進級することになる。

星詠み科は星詠みの力がなければ入れない学科。

だから、クラスの人数も他の学科のクラスに比べれば少ない方だ。

不知火とはクラスメイトで、昨年まであたしひとりがこの学園の女子だったから不知火が何かと気をつけてくれたお陰で楽しい高校生活を送れている。

教室の自分の机の上に鞄を置いて椅子を引く。

ストンと座ると、先ほどよりは少しは頭痛も治まってきている。



「ん?」

見上げるとノートを持った不知火が立っていた。

「ああ、そか」

忘れてた。

バッグからノートを取り出して不知火に渡す。

「んじゃ、お前にはこれ」

そう言って不知火が渡してきたのは経済新聞。

「オッサンだねぇ...」

「じゃあ、読むお前はオバサンか?」

「レディは歳を取らないの。知らなかった?」

「知らなかったな。そんな都合の良い設定」

そう返しながら不知火はあたしのノートと自分のノートをにらめっこしていた。

あたしは借りた新聞を広げて株価にざっと目を通す。

「不知火って、株するんだっけ?」

「高校卒業するまでは手を出すつもりないなぁ...」

ノートに視線を落としながら不知火が言う。

「あ、そ。今、たぶん超買い時な銘柄、見つけたんだけど」

「あと1年後に頼むわ」

本当に今はするつもりがないらしい。

「今から研究しておいてあげる」

「頼りにしてるぞ。わり、消しゴム貸してくれ」

鞄からペンケースを取り出して消しゴムを渡す。

そういや、何であたしって経済が得意なんだっけ??

今更のことながら、疑問が胸に静かに広がった。

ズキンとまた頭が痛む。

...次の休憩時間に痛み止めでも貰ってこようかな。









桜風
12.5.3


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