| 休憩時間に保健室に向かった。 ドアをノックしてあけると誰もいない。 薬はさすがに取って行ったら拙いよな... 怪我をした人が勝手に消毒をするのとは勝手が違う。何より、薬の管理をするのに、在庫が勝手に減ってたら先生も困るだろう。 仕方ない、と思ってドアを閉めようとしたら 「どーしたー...」 と保健室のベッドから声がした。 「あの、2年星詠み科のです」 「どうした?」 そう言ってベッドのカーテンが開き、中から白衣を着た保健医が顔を出した。 あ、また名前をど忘れしてる。 「...寝てたんですか?」 「ああ、そこそこ寝心地は良いぞ」 しれっと返されて言葉をなくす。 「あの、頭痛が」 「風邪か?」 「熱や咳はないですし、鼻づまりとかもないです」 「一応検温しておきなさい。薬か?」 「いただければ」 渡された体温計を脇に挟みながら..そうだ、星月先生。保健医の名前を思い出せた。 星月先生の言葉に頷く。 「そんなにつらいのか?保健室で休んでいっても良いぞ?」 「あ、薬をもらえれば」 丁度体温計が鳴り、表示している数字を見ればあたしの平熱そのもの。 「低いな」 「こんなもんです」 「そうか。じゃあ、これ。効くまで少し時間が掛かるぞ。あと、少し眠くなるかもしれない。辛かったら保健室にまた来なさい」 水の入ったコップと錠剤1錠を渡された。 受け取って服用し、コップを返す。 「はい、ありがとうございました」 お礼を言って保健室を後にする。 「先輩!」 廊下の向こうで手を振る女の子がいた。 手を振り返すと彼女が駆けて来る。 「どこかお体が悪いんですか?」 あたしが歩いてきたのは保健室の方角だ。 「あー、ちょと頭痛。大丈夫。月子ちゃんは、移動教室?」 「はい」 彼女が昨年というか、今年度入学してきたお陰で女子の人口が倍になった。 そう、1人から2人に。 彼女は天文科で生徒会執行部に半ば無理やり引き込まれたので不知火の知り合いでもあるし、弓道部に所属しているから金久保の後輩でもある。 両者と友人関係を築いているあたしは、彼女とは早くに知り合い、今は友人という間柄だ。 「月子ー!」と月子ちゃんを呼ぶ声に彼女は振り返って「今行くー」と返している。 彼女は幼馴染2人と共にこの学園に入学し、学園生活を謳歌している。 「じゃあ、先輩。失礼します」 「うん。あ、そうだ。今晩遊びにおいで。おやつあるから」 そう言うと月子ちゃんは嬉しそうに頷いて幼馴染が待つそこへとまた駆けて行く。 教室に戻ると不知火が心配そうにまた顔を覗きこんできた。 「どうだ?星月先生は居たか?」 「あー、お昼寝の邪魔をしてしまったよ」 苦笑して返すと不知火も苦笑いを浮かべた。 「せめて放課後まで待ってもらいたいよな」 「だよね」 勤務時間中ではないか。 「薬貰ったからもうちょっとしたら痛くなくなると思う」 「辛かったら保健室で、それこそがベッド使わせてもらえよ」 不知火の言葉に頷くとチャイムが鳴る。 先生が教室に入ってきた。 窓の外を眺める。 どうやら今の時間は1年の星座科が体育のようだ。 弓道部の副部長の宮地くんが目に入る。彼も金久保の後輩として知り合い、甘いもの好き同士としてたまに話をするようになった。 意外なギャプだな、と今思い出しただけでも可笑しくなった。 |
桜風
12.5.11
ブラウザバックでお戻りください