星逢い 6





生徒会が入学式の準備を着々と進めている。

この学校は全寮制だから、新入生は入学少し前から学園生活を始めるけど、やっぱりまだ学校に慣れることはできず、入学式を経て初めて学校の一員となるのだろう。


「あら?」

そういえば、月子ちゃんに聞いたなと思った。

「こんにちは」と声を掛けると彼は驚いたように振り返った。

「1年天文科、えーと..土萌くん?」

「そう..ですけど」

「月子ちゃんから聞いてたの。転入生が居るって」

「彼女が?あの...」

あ、そか。

「ごめん、あたしは2年星詠み科の。よろしく」

「よろしくお願いします」

「ところで、土萌くんは..迷子?」

「あ、いえ...」

あ、そうか。この年頃の男の子に『迷子』はないか。

「土萌くん、何処に行くの?」

「視聴覚室です」

「あ、奇遇ね。あたしも視聴覚室方面に用事があったの。一緒しない?」

わ、わざとらしかったかな...

「...お願い、します」

視聴覚室に向かいながら彼に話を聞いた。

彼は、今ご両親がフランスに居るそうで、ご両親は天文学を研究されている方だとか。

「じゃあ、土萌くんはこっちに一人で?」

「はい。けど、寮だし、困りません」

確かに。あたしも困ってないもんな...

視聴覚室のあるフロアに着いた。

「このまままっすぐ行ったら右手に『視聴覚室』ってプレートが見えると思うから。たしか、5つ目くらいの部屋だったと思う」

「ありがとうございます」

土萌くんはお礼を言って教室を数えながら歩いているようだった。

あ、そうか。海外生活が長かったら漢字を読むのが難しいかな...

かといって今から追いかけて行くと彼のプライドに障るかもしれないし。

年頃の男の子は、何とも難しいなぁ...



それから数日後の入学式の日、不知火は壇上で唖然とするような演説をした。

学園の支配者は自分で、自分が白といえばカラスも白だ、と。

どこの独裁者だ。

そして、壇上から1年宇宙科の子..たしか、天羽翼って不知火が言っていたと思うけど、彼を生徒会にスカウトした。

公開スカウトだ。

「あの演説はどうかと思うよ」

教室に戻ってきた不知火に言うと

「去年も同じコト言っただろうが」

と彼が笑う。

ズキンとまた頭痛。

「あ、あー...そうだね。逆に二番煎じはどうかと思うって」

「うーん...そうか。もうちょっとひねりが必要だったか」

「鹿を指差して馬って言うとか」

「それって『馬鹿』の故事成語じゃなかったか?」

「あらー。良くご存知」

笑って返すと「...」と半眼になって不知火が何かしら訴えようとする。

「って、そうだ!なんかに構ってやってる時間はなかったんだ!」

「構って欲しいとかいった覚えはないわよ!」

教室を慌てて出て行く不知火の背中に言葉を投げつけて彼の背中を見送った。

1年宇宙科の天羽くん。無事に逃げ切れるのだろうか...

月子ちゃんと青空くんは比較的大人しい子だったから一応は、生徒会室に集まってくれていたみたいだけど。

普通は帰るでしょう。あんなワケのわかんない演説の中で指名されたって。

廊下を歩いて見下ろした先の桜は既に八分咲き。

そろそろお花見日和と言うことらしい。









桜風
12.6.8


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