星逢い 7





快晴の昼休憩。

春は此処で食事をするに限る。

購買でおにぎりを購入して桜の木の下にペタリと座る。

「声を掛けろよー」

不意にそういわれて振り返る。

購買の袋と缶コーヒーを持っている不知火だった。

「静かにお花見しようと思ったからね」

「おい、。その言い方だと俺が騒がしいみたいじゃないか」

「まあ..否定はしません」

そう返すと苦笑いして「ったく、可愛くないな」と言われた。

「見事だな、今年も」

「桜は、本当に心奪われるよね」

「星と同じだよな」

そんなことを言われてどう言う意味か分らない。

「どういう意味?」

「桜も星も見上げて愛でるもんだ」

...確かに。

不知火はごろんと寝転んだ。

「先に食べたら?」

おにぎりを齧りながらそう言う。

「んー、眠い。寝る方を優先しようと思う」

そう言って不知火は有言実行。寝息を立て始めた。

寝るには少し寒いのではなかろうか。

仕方ないので、あたしのジャケットを掛けてあげた。

見上げて愛でるもの。

桜は、高いところからなら見下ろして見ることは出来るけど、やっぱり見上げた方が『桜』って感じがする。

「くひひ、お邪魔して良いかな?」

振り返るとシャッターが切られた。

「ちょっと、不意打ちはやめて」

眩しい...

「んー、だって。ふとした瞬間の方が人は良い表情をするんだよ。あ、一樹の寝顔撮っとこう」

「珍しいもんじゃないでしょう」

「僕も、仲間に入れてもらって良いかな?」

金久保までやってきた。

「さっき、廊下から見下ろしたら2人の姿があったから。お邪魔かな、って思ったんだけど」

「変な気、遣い過ぎ。ご覧の通り、星月学園の王様はお昼寝中よ」

「そうみたいだね。けど、は寒くない?一樹は無駄に頑丈だから風邪なんて引かないよ」

そう言いながら金久保は不知火に掛けていたあたしのジャケットを取り上げて返してくれた。

「女の子は体を冷やしたらいけないからね」

と言う。

「ありがとう」

そう言って受け取ったジャケットは不知火の体温で暖かくなっていた。

「あ、あったかい」

サァ、と風が駆け抜けた。

「桜って花びらがヒラヒラと散っていくのに、何で潔いって印象があるのかな?」

「どうしてだろうね。お茶は、季節感を大切にすることを求められているんだよね。だから、どの季節の何でも僕は好きだよ」

「夏..梅雨の雨も?」

「うん、雨も」

「秋は..紅葉」

「月見もあるよね」

「そか。冬は雪」

「うん、そうだね。全ての季節にはそれぞれ良いところがあるよね」

「そうか。今は、時間に追われる生活が多いからそんなことは中々考えないよね」

ふと、空を見上げると星の位置で季節を感じ、景色の中の花で風情を知る。

「奥深いね、お茶の世界って」

「良かったら教えてあげるよ」

「んー..ちょっと性に合わないかも」

あたしが返すと「残念」と金久保が肩を竦める。

「けど、誉の茶は旨いからな」

不意に加わった声。

「不知火、起きた?」

「おー、よく寝た」

そう言いながら伸びをする。

そうえいば、白銀が静かだ。姿を探すと今度は彼が寝転んで寝息を立てている。

「白銀が動いていないのって結構違和感」

あたしが言うと「あー、いつもスクープ探しに余念がないもんな」と不知火が苦笑する。

「なあ、のそれ。何だ?」

「購買で『新発売』って書いてあったから買ってみた」

思いつくトロピカルフルーツが全部入ってるんじゃないかと思われる代物だった。

「へー」と言いながら不知火が手を伸ばすから渡すとゴクリと一口飲む。

「こら!」とあたしがいうと物凄く眉間に皺を寄せて返してきた。

「甘すぎないか?」

「あたしもそう思う。てか、飲むなら一言断ってよね!」

「あー、んじゃ。これを一口やるから文句を言うな」

そう言って不知火御用達の缶コーヒーを渡されるけど

「これ、何回も飲んだことあるからパス」

と返す。

「何だと?!缶コーヒーの中では比較的旨いんだぞ、これ!」

「そんなこと、今問題にしてる?!」

「あーあー...ホント、当てられちゃう。僕、先に教室戻ってるから」

そう言って金久保が立ち上がる。

「あ、ちょっと。これ、どうするの?!」

白銀を指差して聞いてみると

「子供じゃないんだし。教室くらい迷子にならずに帰ってこれるよ」

金久保って時々白銀にとことん冷たい。

「し、白銀。金久保帰るって。起きないの?」

肩を揺すって起こそうとしたらガバッと引き寄せられた。

あの、これって...

「白銀、あたしはアンタの抱き枕じゃない!!」

「桜士郎、を離せ!」

「桜士郎、何やってるの!」

あたしの抗議はもちろん、不知火と金久保の声も届かない模様。

ゴツン、と良い音がしたかと思うと「いて!」と白銀の腕が緩み、その隙に金久保があたしを引き起こしてくれた。

「何だよ、痛いよ一樹」

「お前が悪い」

唸るように不知火が言う。

「うん、当然の報いだよね」と金久保。

「お嫁にいけない...」

「え、どうしたの?、お嫁に行けないの??」

白銀の頭の上には『?』が沢山。

そんな白銀の様子に思わず噴出し、不知火と金久保も笑い始める。一人置いてけぼりな白銀だけはやっぱり『?』状態で「どういうこと?誰か説明してよ」とあたし達に訴えるけど、あたし達は笑ったまま。

やがて、原因はどうでも良くなったらしい白銀も笑い始めた。









桜風
12.6.15


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