星逢い 8





1年生が学校生活に慣れるころ、オリエンテーションキャンプがある。

全学年共通で学校が空になる。

3回目ともなればいい加減色々となれるけど、やっぱり校外学習は気分転換になって良いと思う。


このオリエンテーションキャンプには肝試しがある。

先生達のストレスの発散のために行われているのだろうか...

けどさ、そんなのしなくても...

「何だ、は怖いのか?」

からかうように不知火が言う。

「こ、怖いワケないでしょう?!」

暗闇から「ばぁ!」と人が出てくるのが苦手であって、心霊特集とか全然平気。

だから、逆に人工的なそれは苦手。お化け屋敷とか、こういう肝試しとか。

ただ、夜中に墓地を散歩してきなさい、って言われる方がまだマシだったりする。

「はっはー。んじゃ、俺が見届けてやろう」

そう言って不知火はあたしの手を引いてスタスタと歩き始める。

「ちょ、速い」

「んー?そか。これくらいで良いか?」

そう言ってのんびりとした歩調に変わった。

「うん、これくらい」

丁度良い速さになって、指定されたコースを歩き始める。

「ぎゃーーー!」と少し離れたところから声が聞こえてビクリとなった。

「ん?どうした、。怖いのか?」

完全に楽しんでる不知火が腹立たしくて、あたしはそこで頷けない。

「怖いわけないじゃない。ちょっとビックリしただけよ」

「強情だな」と笑いながら不知火は歩く場所を変えた。

さっきまでは車道側を歩いていたけど、今はあたしが車道側。

何で位置を変えたのだろうと思って見上げると

「だって、先生方が出てくるとしたらこっちからだろう?」と言う。

たしかに、茂みがあるほうから出てくるのがセオリーと言うか、姿を隠すのはそこしかないんだからそうなるか...

「あ、あたしビビッてないって!」

「はいはい。ビビッてないならこれは何だ?」

ぎゅっと握っている不知火の手にあたしの爪が食い込んでいた。

「あ、ごめん」

手を離そうとしたら不知火が逆にぎゅっと握ってきた。

「や、そっちは別に良いんだけど。怖いなら素直に怖いって言えって」

「怖くいないって!」

「がおー!」

ムキになって不知火に返したところで茂みから何かが出てきた。

「きゃーーーー!!!」

目の前の不知火にしがみつく。

「...陽日先生。こいつ、本気で怖がってるんでやめてください」

頭の上で不知火の声がする。

不知火の体からそっと覗くとウチの学校で一番小さな先生、2年天文科の担任教師、陽日直獅先生が困ったように立っていた。

「あ、。すまん。そんなに驚くとは思わなかったんだ。ごめんな?」

謝られるとそれはそれであたしが猛烈に恥ずかしい。

「あ、いえ。あの、こちらこそ、ごめんなさい」

「この先の先生方にも連絡しておこうか?驚かすなって」

それは、肝試しの意味が...

「そうなると、俺は暗闇をコイツと何もなしに歩くことになるんでそこまでの気遣いは良いですよ」

と不知火が言う。

うん、そのとおりだ。

「そうか。気をつけていけよ」

心配そうにそういった陽日先生はまた茂みに隠れていった。


「ところで、

暫く歩いていると不知火が声を掛けてくる。

「何?」

「お前はいつまで俺に蝉のようにしがみついているんだ?」

「...あ」

バッと離れると不知火はクツクツと笑う。

「お前もたまには可愛いところあるんだな」

「失敬な!いつもそれなりに可愛げがあるはずよ!!不知火が気付いていないだけで」

何とかそう返すと不知火はやっぱり苦笑して「そうかぁ?」と返してきた。

「ま、手くらいは繋ごうぜ」

そう言って不知火が差し出した手をぎゅっと握る。

「ビビッたが先に走ってってこけて怪我をしたら大変だからな」

これ、当分からかいの材料にされる。

「去年は大丈夫だったでしょ!」

...去年?

去年は..どうだったっけ?

ズキッと頭が痛んだ。

「ああ、そうだったな。どうしたんだよ。突然苦手になったのか?」

まだまだからかいモードの不知火だ。

うん、去年もこれに参加した。去年は平気だったのに、今年はダメとか...

?悪い、からかいすぎたか?」

「あ、ううん。去年平気で、何で今年ダメになったのかなってあたしも不思議で...」

「ま、今年は月が出てないからか?去年はもうちょい明るかったと思うぞ」

「そうだったっけ?そうか。暗いからなんだね」

「何だよ、突然強気になって。現金なやつだな」

苦笑してそう言う不知火に、

「ま、何かあっても不知火を盾にしてダッシュで逃げれば良いしね」

と言うと

「お前、たまに結構酷いよな」

と呆れたような声音が返って来た。









桜風
12.6.22


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