| 夏休みに入ると食堂の人口密度がグンと下がる。 部活がある生徒は残るのだろうが、そうでなかったら家に帰るみたいだ。 寮に残る場合は寮監に届出が要るので職員寮の陽日先生に届出を出した。 「何だ、1日も帰らないのか?」 「ひとつ所に留まってくれる両親だったら考えましたけど」 そう言って返すと 「あー、のご両親は引く手あまたの研究者だったっけか」 「みたいです」と肩を竦めると「わかった。受理しとくぞ」と陽日先生が届出を机の引き出しに仕舞ったのであたしは職員室を後にした。 「おう、」 「不知火、どうしたの?」 「生徒会の関係で職員室に用事。そういや、はこの夏も帰らないのか?」 「うん、その予定。帰るって言っても両親がウロウロしてるから」 「お前のところはそうだったな。あ、ちょっと待ってろよ」 そう言って不知火は職員室に入っていった。 何だろう... 暫く職員室前で待っているとやっと不知火が出てきた。 「悪い、待たせた」 「全くだ」と返すと「お前、これから暇?」と聞かれた。 「暇..という表現はヤだな」 「じゃあ、時間取れるか?」 「取れなくもない」 そう返すと不知火は苦笑して「んじゃ、その時間ちょっとくれ」と言われた。 「なに?」 「街に買い物に行きたいんだよ。付き合ってくれ」 「えー...」 「何か奢ってやるから」 「スペシャルパフェ」 モールの中にあるカフェの一番大きなパフェだ。一人で完食は至難の業とも聞いたけど、弓道部の宮地くんが達成したと聞けば出来るかもしれないと思うじゃない? 「お前、自分で全部食えるんだろうな。残すなよ」 「頑張る!」 ぐっと握りこぶしを作って言うと 「んじゃ、30分後に正門前な。俺、一旦生徒会室に戻らなきゃならないから」 と諦めたように不知火が時間と場所を指定して生徒会室に向かっていった。 30分後の正門前には既に不知火がいた。 「お前の方が寮に戻ったのが早いのに、何で俺よりも遅いんだよ」 「いいじゃない。暑い中待ちたくないんだもん」 そう返すと「俺はお前を炎天下の中、待ったぞ」と返された。 「んじゃ、後でアイスコーヒー奢ってあげるから」 と宥めてみると「ま、それで手を打ってやるよ」と不知火は宥められてくれた。 バスに揺られながら街に向かう。 「不知火は帰省するんでしょう?」 「一応な。すぐに戻って来ようとは思うけど。は?」 「あたしは学園が大好きだから!」 「はいはい。学園が好きなのはともかく、ご両親がいる国に行けば良いじゃないか」 「どんだけコストが掛かると思ってるの?ゆっくり出来ないかもしれないし。パス」 なるほど、と不知火は頷いた。 「今は何処の国にいらっしゃるんだ?」 「えーと...」 ズキンと頭がまた痛くなる。 「?」 「南米、だったかな?そこをウロウロするって」 「地球の裏側か...コストどころの話じゃないな」 時間も非常に掛かる。 「てか、お前まだ頭痛が続いてるのか?今から医者に診せるか?」 「ううん。いい。たまにだし」 「頭痛はあまり軽く見ないほうが良いらしいぞ。せめて星月先生に相談しておけよ」 「はーい。不知火がとうとうあたしのお父さんになっちゃった」 「心配させるお前が悪い」と小突かれた。 バス停で降りると日差しが刺すように痛い。 ふと翳ったと思ったら不知火が立っている。 「不知火が暑くない?」 「俺は男だから日焼けとか気にしなくて良いけど、は気になるだろう?」 「何処で覚えた、その紳士っぷり!」 「何だ?カッコイイか?惚れてもいいぞ??」 「善処します」 あたしの政治家的な逃げ口上に不知火は苦笑して、「じゃ、行こうぜ」と歩き出した。 |
桜風
12.7.13
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