| 不知火は書店に用事があったらしい。 「あ、受験本?」 「はそういう準備しないのか?」 「あー...」 ちょっと前にしたような気がする。あれ? ズキズキと頭が痛くなる。 「おい、?調子が悪いのか??」 「ううん、大丈夫」 「大丈夫って...顔色悪いぞ」 そう言って不知火は書店内のソファを見つけてあたしを座らせて「ちょっと、会計だけ済ませてくるから大人しくしてろよ」と駆けて行った。 どうしたんだろう。 此処までくると自分の体調不良が怖くなる。 怖くなると言うか...何となく気付いていなくもない。 気付きたくないから本当は見ない振りをしているだけなんだ。 あたしは、自分の記憶にないこと、引っかかることがあったら頭痛がする。 頭が痛くなって思い出す。 これまでのも思い出せばそうだった。 タイミングは分る。だけど、その原因は何だろう。 記憶喪失? まさか、記憶はある。ちゃんと..ある... 『ちゃんと』? 「」 思考の迷路に迷っていると声をかけられて顔を上げると心配顔の不知火。 「悪いな、調子が悪いのに付き合ってもらって」 「ああ、ううん。此処最近予告なしで頭痛がしてるから。気にしてたら全然何も出来ないし。すぐに収まるからって。こっちこそ変に気を遣わせてるよね」 にこりと笑っても不知火は心配顔のままだ。 「ね、不知火の用事ってそれだけ?」 「あ?ああ...終わったけど」 「じゃあ、さ。映画見ていこうよ、せっかくここまで出たんだし。見たいのあるんだ、あたし」 少し考えた不知火は「わかった」と頷き、手を差し出してきた。 見上げると「こっちの方が安心するから」と言われた。 まあ、離れて歩いてるよりは様子が分かるってことなんだろうな... その手を取って立ち上がり、モールに入っている映画館へと向かう。 「どれだ?」 「あのアクション映画。アクション大丈夫?」 「ベタベタな恋愛映画よりはずっと良い」 そう言われた。 たまにあのベタベタな恋愛映画って見たくなるんだけど。糖分摂取って感じで。 「行くぞ」 声をかけられた。 「アレ?チケット」 「今買ってきた。これ、お前のな」 1枚渡される。 「あ、今払って良い?」 「奢ってやるよ」 「払う!」 「...んじゃ、ポップコーンとアイスコーヒーを奢ってくれ」 どう考えてもチケットの方が高いのに... けど、たぶん、此処でごねてもたぶん受け取ってもらえない。 だったら少しでも返せるほうが良い。 「サイズは?」 「Lで」 「了解」 売店に並んでポップコーンと不知火のアイスコーヒー、自分のオレンジジュースを購入して映画館の席に着いた。 洋画にありがちなお約束シーンがこれでもかと詰め込まれた映画だった。ある意味、ベタもいいところだった。 映画を見終わると日も傾いていた。そろそろ帰りのバスに乗ったほうが良い。 「パフェは今度で良いか?」 「映画奢ってもらったからチャラでいいよ」 そういうと「そうか?」と不知火は不思議そうにする。 バス停に向かっていると露店があった。 手作りアクセサリーのようだ。 思わず足を止めると不知火も足を止めてくれた。 「お前でもこういうの好きなんだな」 からかい口調で言われた。 ちょっと腹立つけど「まあねー」と軽く返す。 耳たぶを触ってみた。ピアス、空けたいな... ピアスは安くて可愛いのが結構ある。 今日、帰ってピアッサーで空けようかな。 「どうした?」 「ピアス、空けたいなーって」 「学生のうちはやめとけ。親御さんに世話になってるのに、貰った体を傷つけることになるだろう?人それぞれだけど、俺はやめた方が良いと思う」 そうか... まあ、いつでも空けられるし。病院で空けてもらった方が安心だし。 今は諦めよう。 「どれが気に入ってるんだ?」 不知火の顔があたしの顔の真横にある。 「あ、えーと。これ」 青い石のついたシンプルなものだ。パッと見て惹かれた。値段も手ごろだし、買っちゃおうかな。いつか空けるつもりだし。 「おっちゃん、これ頂戴」 不知火も欲しかったの?!けど、あたしが気に入ったのを取るって横入りもいいところじゃない!! 包んでもらった小さな袋を「ほら」とあたしに出した。 「手、出せって」 ぼうっと見上げていると苦笑いを浮かべて不知火が言う。 手を出すとその上にそっと置かれた。 「いつかピアスホールを空ける気なんだろう?」 頷くと 「そん時にでも付けろよ」 と言う。 今日は心臓もおかしいのだろうか。ドキドキと鼓動が早くなる。 「げっ!バスの時間!!」 腕時計を見て不知火が言う。 「え?ホントだ!!」 走り出す不知火と一緒にバス停を目指す。 手を繋いだままの全力疾走。 あたしのドキドキが不知火には気付かれませんように... |
桜風
12.7.13
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