星逢い 15






月子ちゃんのクラスの喫茶店は大盛況で、担任、教育実習生は勿論、なぜか保健医まで借り出されていた。

「星月先生、何でこのクラスの手伝いをしているんですか?」

聞いてみると

「話の流れでそうなった」

と返された。

どんな話の流れがあったんだろう...?

月子ちゃんのおすすめメニューを注文して口に運ぶ。

カリスマシェフ東月くんが作った料理はリピーターを呼ぶのに充分で、お陰で忙しさから解放されないとか。

月子ちゃんはそれを誇らしげに、嬉しそうに言うけど、教育実習生の水嶋先生と星月先生はうんざりといった感じだった。


。スターロードに行かないか?」

「うん、いいよ。って、不知火も寂しいねー。誘う相手があたししかいないとか」

「お前はそもそも誘ってくれる人がいないんだろう?」

何か酷いことを言われた!

まあ、いいや。

学外からのお客さんもこのスターロードを楽しみにしているらしく、たくさんの人が歩いている。

「大盛況ね」

「だろう?」

「...ねえ、不知火は去年誰とここに来た?」

「去年?そりゃ、どうせ誘ってくれる人がいないだろうってので、を誘っ...」

不知火が黙り込む。

そう、あたしは誘われていないはず。

「あれ?お前と一緒に歩いた気がするんだけど...去年、お前誰と歩いた?」

「さあ?」

肩を竦める。

不知火が答えの出るはずのない記憶の迷路に入り込みそうだったから

「冗談よ。あたしが去年も付き合ってあげたに決まってるでしょう」

とその思考を中断させた。

「お前なー、変なことを言うなよ」

ガシガシと頭を掻きながら不知火が言う。



少しずつ綻びてきた。

もう止められそうもない。元々、期間限定だったのだろう。

神楽坂くんがあたしを『流れ星』と言った意味はそれだ。彼にはどうやら見えていたようだ。

此処最近はあたしの頭痛は随分と減った。

種がわかった。だから無理に記憶の改ざんを行う必要がないんだ。

誰が行っていたのかわからないけど、あたしにはこの学園に在籍していたという辻褄が合うような記憶の改ざんが行われていた。

そして、それはあたしの周囲の友人知人たちにも。

では、記録の改ざんは?

学校の在籍記録とか、内申書。

そのほか、学校生活に必要な記録はどうなっているんだろう...


ドアをノックするとガチャリとドアが開いた。

「どうした、

目を丸くして星月先生が言う。

「相談が、あるんです」

「学校じゃ拙いのか?」

さすがに私室に生徒を入れるわけには行かない。しかも、女子生徒を、だ。

少し悩み、「明日の授業、サボって良いですか?」と言った。

「どうした?俺の立場で『良い』とは言えないぞ」

それもそうか...

けど、誰にも聞かれたくない話だ。

「...ただ、体調不良で保健室に来るのは拒めないな」

星月先生の顔を見上げると苦肉の策と顔に出ている。

「わかりました。夜分遅くに失礼しました」

ペコリと頭を下げて部屋に帰る。



星月先生に呼び止められる。

「はい」

振り返ると心配そうな表情だ。

「今すぐじゃなくても、大丈夫なんだな?」

「ええ、明日相談させてください」

「わかった」

そう頷いて星月先生はドアを閉めた。静かな廊下にはあたしの足音だけが響く。









桜風
12.7.27


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