| この学園は、所謂田舎にあるから雪が降れば必ず積もる。 こんな雪、見たことないな... 「おはよう、寒いなー」 「不知火の格好を見たら余計に。コートくらい着てよ」 ジャケットにマフラーを軽く巻いてるだけとか...! 「おりゃ!」 「ぎゃ!!」 不知火の冷たい両手があたしの頬を挟む。 「冷たっ!」 あははと笑いながら不知火は駆けて行き、あたしは追いかける気にもなれず、教室でやり返してやろうと心の中で復讐を誓った。 12月はベツレヘム星祭がある。 つまりは、クリスマスイベント。 生徒会を中心にこれを企画し、大きなもみの木に飾りをつけてクリスマスツリーを皆で作り上げていくのだ。 数日掛けて作り上げるツリーのお披露目はパーティでのメインイベントだ。 点灯したツリーは美しくて、こんな間近でこんな立派なツリーをあたしは見たことがない。 「どうだ?」 誇らしげに不知火が声を掛けてきた。 「文句なしに、御見それしました」 完全降伏。 「だろ?みんなで頑張ったんだ。よし、次は屋上庭園だ」 「は?」 不知火に誘われるままに屋上庭園に向かった。 不知火の放送に促されて他の生徒達も屋上庭園に向かう。 天羽くん作成の打ち上げ花火が夜空に上がり、そして雪もちらつき始めた。 「すご...」 雪の降る中、花火を見ることなんて今までなかった。 本当、不知火は凄い。 勿論、この花火を発明したのは天羽くんで彼がいなかったらきっとこれは叶わなかった。 けど、アイデアは間違いなく不知火だと思う。 こういうサプライズは得意そうだ。 「どうだ」 と不知火がまた言う。 「文句なしに、以下同文」 「同文って...」 苦笑しながら不知火が言う。 「凄いね、不知火は」 「翼の発明だ」 「思いつきは、不知火でしょう?」 「俺が思いついても実行に移せるのはあいつらが力を貸してくれるからだよ」 そう言って自分の可愛い子供達に視線を向ける。 「ぬいぬいー!」と天羽くんが手を振っている。 「孝行息子と孝行娘だね」 「自慢の子供だちだよ」 笑いながら返した不知火は「冷える前に中に入れよ」と言って生徒会メンバーの元へと駆けて行った。 皆が帰った頃を見計らって体育館に戻り、ツリーをじっと見上げていた。 あたしはこれをいつまで覚えていられるのだろうか 「何だ、まだ帰ってなかったのか?」 振り返ると不知火がいた。 「ビックリした...」 「俺だってビックリしたぞ」 そう言ってあたしの隣に立つ。 「どうした、感動してまた見たくなったのか?」 からかい口調の不知火に「うん」と素直に返す。 「ど、どうした?」 「なによ」 見上げると「いや、何ていうか...」と少ししどろもどろ。 「あたしが素直だと調子が狂うって?」 「ああ」 頬を掻きながら不知火が言う。 「そう?良いじゃない。クリスマスの奇跡と思えば」 「...自分で言うなよなぁ」 呆れたように不知火が言い、あたしは苦笑する。 ぺたんと不知火が座る。 あたしもその隣に座った。 「冷たいだろう」 そう言って不知火はジャケットを脱いで「これ敷け」という。 「いいよ。あたしはタイツ穿いてるし」 お尻に敷くのを断ったらそのまま不知火のジャケットはあたしの肩に掛けられる。 「不知火は戻らなくていいの?」 「いいよ、今晩はに付き合う。気の済むまで見てろ」 「うん、ありがとう」 絶対に忘れたくなくてこの目に焼き付けるように、じっとツリーを見上げた。 |
桜風
12.8.3
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