| 「何だ、年末年始も帰らないのか?」 届出を陽日先生に渡すとそういわれた。 「はい」 「まあ、良いけど。親御さん、心配しないか?」 「大丈夫ですよ」 そう返すと「わかった。受理しておくからな」と言われた。 皆が帰省している様子を窓から眺める。 あたしが『帰る』ときは、此処からいなくなるとき。 受験もしないし基本的にやることがないんだよなー... 図書館に通い詰めるくらいしか思いつかなくて、図書館に向かっていると「!」と呼ばれて振り返ると眩しい光があたしを襲う。 っていうか「白銀!」と犯人の名を呼ぶと「くひひ」と笑っている。 「眩しいじゃない!」 「は今回も帰らないの?」 あたしの話を聞け...! 盛大な溜息をひとつ吐いて「うん」と頷く。 「そうなんだ?楽しくなりそうだね」 「は?」 「じゃあねー」 ...なんだ? 図書館でごっそり借りた本を読んでいるとドアをノックされた。 「はいはい?」 出てみると不知火だった。 「わお!」 「今晩鍋をするから手伝ってくれ」 「何の話?」 話が見えないんだけど? 不知火が手短に話をしてくれた。 「へー、生徒会も面倒ごとを引き受けたもんだね」 「...そういや、お前この寮にひとりになるな」 「あー、そうだね。うん」 「よし、。宿直の先生が来るまで俺達と一緒に行動しろ」 「はあ?!」 なに、突然。 けど、不知火が命令形で話を言いきったと言うことはそれは、決定事項となる。 「あー、はいはい。他の子たちにはちゃんと不知火から説明してね」 「ああ。荷物準備しておけよ」 「ん。準備できたら行くから」 「わかった。あ、そうそう。闇鍋もするから食材提供しろよ」 「...はぁ?!」 相変わらず突拍子もないことを考えるもんだ。 マヨネーズは食材じゃないから怒られるだろうな... とりあえず、お泊りセットを用意してクロワッサンを手にあたしは部屋を出た。 「不知火」 声をかけると振り返った不知火がポケットに手を入れる。 「これ、宿直室の鍵だ」 そう言って投げてきた鍵を受け取って「これ、食材」とテーブルの上にクロワッサンを置いて宿直室に向かった。 「先輩!」 月子ちゃんが駆けて来た。 「さっき、一樹会長に聞いたんですけど。先輩も一緒に宿直室に?」 「不知火が決定事項だと言うので。自称、この学園の支配者だしね。ま、全力で逆らいたいことでもないから」 あたしがいうと「先輩も一緒だなんて、楽しみが増えました」と言われてちょっと困る。 そんな楽しみにされても楽しいこと出来ないよ? 夜になり、まずは普通の寄せ鍋を食べてその後にお待ちかねの闇鍋。 今の時期、受験を前に実家に帰らずに寮に残って勉強をするという生徒が少なくなく、結構賑やかな食事となった。 除夜の鐘に耳を傾け、日付が変わって新年の挨拶。 「これ、いつ片付けるの?」 「鍋は食堂に持って降りるつもりだけど...」 「コタツも少なくとも屋内でしょう」 先生方の留守をいいことに、コタツを拝借し、先ほどまで使っていたのだ。 よくもまあ、本当に思いつくものだ。 |
桜風
12.8.3
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