| 卒業式を明日に控え、あたしは身の回りを整理した。 とりあえず、寮を出なくてはならない。 困ったぞ、と。 あたしは此処に居るはずのない存在で、理由も分らずに此処にいる。 寮を出ると言うことはどこか別の場所で生活をしなくてはならない。 どうしたら良いんだろう... 星月先生が知り合いに頼んで住み込みで働かせてもらうか?と言ってくれたけど、あたしが突然いなくなったら迷惑が掛かるし... かといって、未成年だから何かをするにも親の同意みたいなのが必要になるし... いっそ、永久就職か?! ...ないわぁ。これは一番ないわ。 まあ、此処に来たのも突然で、不都合のないようになっていたんだから、きっと帰るときも不都合がないんだろう。 ポジティブに考えることにした。 じゃないと、考えても答えが出ないんだもん。 卒業式では、不知火の可愛い子供達からのサプライズがあって、本当に心に残る卒業式を迎えることが出来た。 教室を後にして一度保健室による。 「ああ、」 「星月先生、お世話になりました」 「いや。それで、これからどうするんだ?」 「んー、困ってマース」 「だから、俺が紹介して...」 「あたしが突然消えたら先生の信用もガタ落ちでしょう?それは頷けません」 「しかし、なぁ」 「まあ、何となくですけど。何とかなると思います。とりあえず、お世話になりましたのでお礼を、と思いまして」 「...わかった。どうにもならなくなったら連絡をしなさい。少し考えてみるから」 星月先生は、あたしの突拍子もない話に付き合ってくれた唯一の人。 いや、神楽坂くんもいるか。 正門に向かっているとぽんと肩を叩かれた。 「ああ、金久保」 「今日でお別れだね」 「うん」 「ねえ、正門で写真撮らせてよ」 「皆で撮りたいね」 「そうだね」 そんな会話をしながら正門に向かうと、白銀と不知火もいた。 「、何処に行ってたんだよ」 「保健室。星月先生にお礼を言いに」 「あー、そうか」 ふと周りを見たら知り合いの後輩たちがいた。 「ね、集合写真とかどうかしら?」 「くひひ、いいよ。俺が撮ってあげる」 白銀が言うけど、 「それ、セルフタイマーとか出来ないの?若しくはそこを行く人を捕まえて...」 「おー、それじゃあ俺が撮ってやるよ」 陽日先生が突然現れてそう言う。 「じゃあ、お願いします」と不知火が言い、あたし達はぎゅうぎゅうになりながら並んだ。 「んじゃー、撮るぞ」 そう言ってシャッターを切る音が耳に届く。 ふと、名前を呼ばれた。 必死に、あたしのことを呼ぶ声。帰りを心から願っている声。 ああ、そうか。次に住むところは考えなくて良かったんだ。 「おい、」 振り返った不知火と目があった。 「ばいばい」 |
桜風
12.8.10
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