星逢い 21





目を覚ますと母の顔があった。

ああ、帰って来たんだって思った。

母は涙でぐちゃぐちゃになりながらあたしが目を覚ましたことを喜んだ。

状況の把握がイマイチで気ないけど、あたしは病院で寝ていて、これは..集中治療室?

近くで母が何かを言っている。

言葉が上手く聞き取れない。

さん、わかりますか?」

顔を覗きこんできたのは、ドクターかな?

あたしの目にライトを当てて、たぶん、瞳孔反射の確認だ。

あたしは、どうやら集中治療室に入らなくてはならない何かがあって、星月学園での生活はその間に見た夢だったんだ。

夢、だったんだ...

ぎゅっと握っていた右手が緩む。

あたしは動けない。

母があたしの手の中にあったものを見せてくれた。

涙が零れる。

夏に、不知火から貰ったピアスだ。

あたしはそれを握り締めていた。

夢じゃなかった。

現実とも言いがたいけど、夢と言って終わらせることが出来なくなってしまった。



あたしは交通事故に遭って、約1ヶ月重篤な状態で集中治療室にいたそうだ。

医師も「諦めた方が良い」と言ったそうだ。

母は星に祈った。

流星群の時期だったからいくらでも星が降って来たと言う。だから、ずっと祈ってくれたとか。

そして、医師が見放したあたしはものの見事に戻ってきた。

あたしが経済に多少詳しいのは当然だ。

何せ、今大学生のあたしは経済学部に通っている。

そうか、だからなんだとすぐに納得した。

交通事故のお陰で1年休学しなくてはならなくなった。

星を眺めて、時々涙を流して思い出に耽る。

あまりに星に詳しいから友人達に「あんた、何学部よ」と笑いながら指摘された。

あたしは、1年間星にまつわる専門的な教育を受けたのだからこれくらい出来て当たり前だ。

大学を卒業して、社会人になってピアスホールを空けた。

最初から不知火がくれたピアスは付けられないと聞いて衝撃を受けたけど、安定したらすぐにあのピアスをつけた。

いつまでも女々しいと思う。

まあ、あたしは女だから『女々しい』は間違っていないけど。

いつまで想っても仕方ない。

あれは、夢の世界なんだから。

ピアスは奇跡で、もしかしたら元々これを買って帰るときに事故に遭って、色々と記憶がぶっ飛んで不知火に貰ったって記憶を摩り替えているだけなのかもしれない。

いや、それが一番可能性として高い。


就職して2年目の春。

去年はそれどころじゃなくて、やっと空を見上げるようになったのはあの星逢いの時期だった。

そして、今年はあたしはひとり桜の木の下で花見をしている。

桜を愛でながら、星も愛でる。

手には、あの時は無理だったチューハイ。

見上げて、桜を見ていても、星を見ていても辛くて、辛くて...俯いた。

ポタリポタリと涙が零れて、溢れてどうしようもない。

「桜も星も見上げて愛でるもんだぜ」

不意に届いたその声、その言葉。

あたしは驚いて振り返った。

「なん..で...」

「久しぶりだな、

あたしは言葉が出なかった。









桜風
12.8.17


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