| が急に消えた。 「ばいばい」という言葉を残して。 「?!」 「一樹会長?」 颯斗が不思議そうに声をかけてくる。 「が、消えた...」 「一樹?」 誉が詳しく話しように促すけど、何て話したら良いんだ? が、消えちまったんだ。 「俺も、見た」 そういったのは陽日先生だった。 「どうした、お前達」 星月先生がやってきて、の卒業証書入れの筒を拾い上げる。 「これは、誰のだ?」 「の、です」 俺の答えに星月先生は「そうか」と呟いた。 「何か、知ってるんですか?!」 「保健室に来なさい」 そう言って歩き出す星月先生の後を、俺達は揃って付いていった。 保健室で聞いた星月先生の言葉に俺達は何も言えなかった。 「俺も、中々信じられない話だとは思っているぞ」 「じゃあ、は...」 「はっきりとは分らないが、『帰った』というのが妥当だろうな」 と星月先生が言う。 「けど、琥太郎先生。そんなSFみたいなことが」 「仕方ないだろう。それ以外考えられない。直獅も見たんだろう、が消えるところを」 星月先生の言葉に陽日先生は俯く。 「が、自分がこの学園に在籍中に消えてしまったら寮の机の引き出しを捜してくださいって言っていた。今から行ってみるか?」 星月先生の言葉に俺は縋るように「はい」と返事をした。 の部屋は綺麗に整頓がされていた。 いつでも居なくなれるように、と思っていたのか。それとも、寮を出るための準備だったのか。 「夜久、引き出しの中を探してもらえるか?」 同性の月子が触った方が良いだろうと言う星月先生の配慮だ。 月子は頷いて「失礼します」と呟いて引き出しを開ける。 「これ、でしょうか」 月子が見つけたノートは、『記録』と書いてあった。 日付の古い順にパラパラと捲っていく。 少しずつあいつが自分の記憶の齟齬に気付き、いつか帰ることを悟ったことがわかっていく。 「俺がから相談を受けたのは確か、文化祭が終わってからだ」 文化祭で思い出した。 俺は、あいつに聞かれた。去年誰とスターロードを歩いたのか、と。 俺は、去年のスターロードはと歩いていない... ずっと、ずっとあいつはいつ居なくなるかわからないその存在をどうして良いか悩みながらこの学園で生活していたのか。 忘れないでと言われた。きっと俺だけが聞くことの出来たあいつの弱音だ。 簡単に忘れられるかよと俺は答えたはずだ。 そうだ、忘れられない。忘れられるはずがないじゃないか... が居なくなっても俺達の日常はなくならない。 それぞれ進路が分かれたけど、たまに誉や桜士郎と会うことがある。 飯を食って、酒が飲めるようになったら杯を傾けて。 たまに、ふと思い出す。 が居たときは4人だった。 何となく、ひとり足りない気がする。 大学を卒業して司法修習生として勉強を続けていたとき、ふと夢を見た。 桜の木の下であいつが泣いている夢。 そして、この感覚は、普通の夢じゃない。 星詠みの力が視せた未来だ。 どうしたら良い? こうやって星詠みの力で俺はあいつを視ることが出来た。だったら、まだ繋がっている筈だ。 「に会いに行く」 誉と桜士郎に告げた。 「一樹?」 「何を言ってるのか、分ってる?」 2人は驚いて心配してくれている。 「ああ、分ってる」 「のあのパターンを考えると期間限定か、もうこっちに戻れないかだよ?」 「覚悟の上だ」 「一樹の夢はどうするの?弁護士としてたくさんの人を助けたいんじゃないの?」 「どっちも手に入れる。俺は欲張りだからな。おじさんには、もう話した」 俺の言葉に2人は呆れたような、諦めたような溜息を吐いた。 「わかった。僕はもう止めない。に会えたらよろしくって伝えて」 「まったく、一樹は強情だな。これ」 そう言って桜士郎が封筒を渡してきた。 「向こうに持っていけるかわかんないけど。もしかしたらさ、は俺達のことを夢だと思ってるかもしれない。それは、ちょっとやだろう?」 封筒の中身を見ると、卒業式の後に撮った集合写真。皆ぎゅうぎゅうに詰めて何とかフレームに納まったそれだ。 「は俺達にとって幻じゃなかった。その証拠に、写真に写ってる」 桜士郎が言う。 「...ああ」 「じゃあ、一樹。もう会えないかもしれないけど、僕のこと忘れないでね」 「俺も俺も」 「...ああ、お前らこそ、忘れるなよ」 |
桜風
12.8.17
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