| 夜、大学の課題に向かっていたは机の上のカレンダーを見てふと手を止めた。 「あ、そっか」 カレンダーに手を伸ばしてそれを手元に引き寄せる。 4月19日に花丸をしている。 不知火の誕生日だ。 しかし、今の彼は日本に居ないのだ。 時間を見つけては海外を放浪している。 たくさんのものをその目で見て感じて、自分の経験として積み重ねていきたいと考えていると以前言っていた。 彼らしいその言葉には苦笑を漏らしてしまった。 何もいえないではないか。 「まったく、何処をほっつき歩いてるの」 カレンダーの4月19日を睨みながら思わず呟く。 ふいに携帯が着信を告げ、見ると文句を言った相手でちょっと焦った。 「もしもし?」 『おう、俺だ。久しぶりだな、元気だったか?』 「うん、元気。それよりも一樹は今何処の国にいるの?」 が問う。 『んー?うん』と歯切れの悪い返事には首を傾げた。 「今回の旅、どう?」 ちょっとだけ話題を変えてみた。 『相変わらず刺激を受けるな』 「体は大丈夫?無茶してない?」 の言葉に不知火は苦笑を漏らす。耳元の苦笑はもう聞きなれた。いつも彼は自分の心配を苦笑で返すのだ。 『大丈夫だって。ったく、心配性だな、は』 「当たり前じゃない。どちらかといえば、一樹が無茶をする性格なのが悪いんだと思うけど?」 の言葉に『へいへい、いつも心配をかけてます』とあまり反省しているとは思えない言葉が返ってきては盛大な溜息を聞かせてやった。 『なあ、今日は星が良く見えるんじゃないか?』 「ん?ああ、そうかも。天気が良いからね」 そう応じながらはベランダへ足を向け、カーテンを開けて空を見上げる。 月が出ていて、外灯も点いているので少し明るい夜だがそれでも星は瞬いている。 「うん、見えるわ。えーと、スピカが見えるし」 『そうだな、ペガススの四角形も見えるな』 「ホントだ..って。今、日本なの?!」 驚いて声を上げるに気を良くしたようで『おう』と弾んだ声が返って来た。 「何よ、もう!」 『そう怒んなって。あー、そうだ。上ばっかり見てなくて下を見てみろよ』 まさか、と思ってベランダに出てマンションの入り口辺りを見たら不知火が軽く手を上げる。 「ちょ!ばか!!」 そう言って通話を切っては玄関に向かって駆け、ドアを開けて鍵も掛けずにエレベーターホールに向かった。 しかし、エレベーターを待つのがもどかしくて階段を駆け降りる。 「一樹!」 「おい、戸締りは?!」 自分の胸に飛び込んできたを抱きとめながら不知火は問う。 「もどかしくて」と答えたに「しょうがないなぁ」と苦笑を漏らした。 「なあ、家に入れてくれよ」 不知火の言葉に「え、あまり片付けてない」と恥ずかしげにが言うが「良いって。あとこれ」と言って近所の洋菓子店の箱を掲げる。 「一樹って普段は甘いものはあまり好きじゃないって言ってるじゃない」 の言葉に「に、俺の誕生日を祝ってもらいたいから買ってきた」と不知火が言う。 「呆れたー。自分から誕生日を祝ってなんて、今いくつよ」 心底呆れた表情を浮かべてが言う。 「だって、自分で用意しないと祝ってもらえないだろう?」 「帰ってくる日を前以て言っててくれたら張り切って用意したわよ」 「ははは、悪い。迷惑かなって思ったんだけど、に会いたくなったんだ」 本当は今日は実家に帰ってゆっくり休もうと思ったんだけど、と不知火が続ける。 その言葉に思わずは言葉をなくした。 「一樹って結構ずるいのよね」 むくれて言う彼女に「そうか?」と悪びれずに不知火は肩を竦める。 「じゃあ、まあ。ご招待しましょう」 そう言って不知火から離れたが「あ、」と呟き、不知火を見上げた。 「おかえり、一樹」 そう言って背伸びをして彼にキスをした。 少し驚いた表情を浮かべた不知火だったが、気を取り直して「ただいま、」と彼女にお返しのキスをした。 |
桜風
11.4.19
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