極彩色の無色 8





から事情を聞いた劉輝はリオウの外出の許可を出し、自分も付き合うといった。

勿論、周囲は全力で反対したが、結局劉輝が押し切った。

「では、案内してくれ」

「こっちだ」と言って案内しようとしたらわき腹を思い切りリオウにド突かれた。

「こちらでございます」

わき腹を押さえながら言い直してが劉輝とリオウを町に案内する。

馬を、と言われたが馬は団子を食べているときに繋いでおかなくてはならない。

近いし若いんだから、とが言い放って町に向かっていった。


3人で茶屋の団子を食した。

が言ったように、あの室で食べた団子よりも店で食べた方が美味かった。

勿論、食べ物は出来たてが一番美味しいのだから当たり前といえば当たり前かもしれない。

それに、あの閉塞した室で食べるよりも開放感のある茶屋の店先で食べる方が美味く感じるのにも頷ける。

、寒くないか?」

「ああ、特には。あんたは寒いのか?」

一応、身分を隠した方がいいだろうから、ここは乱暴な口を聞いても良いかとリオウは仕方なくの『あんた』を見逃してやることにした。

「リオウはどうだ?」

「大丈夫だ」

がリオウを見る。自分だって、と言いたそうだ。

その視線に気付いたがリオウは気付かぬ振りをして、皿の上の団子に手を伸ばした。


団子を食べ終わり、てくてく歩く。

戻る途中、が足を止めた。

「劉輝、リオウ。私はあの木の根元にいる。こちらの様子は見えているから何かあっても必ず間に合わせる」

そう言って少し離れた所に向かっていく。

あそこまで離れるとには会話は聞こえない。

道沿いの少し大きめの岩に劉輝が腰を下ろした。リオウはそれに倣って彼の隣に腰を下ろす。

東坡関塞に劉輝が来たということは、返書の使者であるリオウと言葉を交わしたいと考えたのだろう。

だから、2人きりで話ができる場所が必要だと思った。

戻れば誰かしらが護衛だという名目でリオウの行動に目を光らせるだろう。

リオウだって、きっと劉輝に伝えたい言葉があるはずだ。

何やらリオウが劉輝に訴えている。

投降でもしろと話をしているのかもしれない。それもひとつの手だ。

だが、ここで彼が投降をしたらどうなるだろう...とりあえず、貴陽には用なしだな。

はそんなことを思いながら彼らの対話を見守った。

やがて二人は立ち上がり、を振り返った。

は彼らに向かって歩き出す。

「終わったか?」

「ああ、ありがとう」

劉輝がそういい、がリオウを見るとスッキリした顔をしていた。

グリグリと乱暴に撫でてみると「やめろ」と抵抗された。

は笑う。

3人は並んで東坡関塞への道を歩いた。

帰りは殆ど会話はなかったが、それが気にならなかった。


リオウが東坡関塞を発つ日、は門までは出てこなかった。

あの日、は東坡関塞に帰ってからは多くの人の説教を食らって疲れたようだったと劉輝から聞いた。

リオウに近付くことを禁じられたらしい。

まあ、強引に色々やらかしたからな、と思った。

「リオウ!」

名を呼ばれてそちらを見るとが居た。

「落とすなよー」

そう言って何かを投げて寄越してきた。

団子だった。

近づけないから、と食べ物を団子を投げて寄越すとは何事だ。

リオウはそう思ったが、その団子がまだ温かいことに気が付いた。

「それを食べて大きくなれよ!」

「団子ででっかくなるかよ!」

そう返してリオウは貴陽に向けて馬を進める。

とは再び会えるだろうか...

彼女は『面白い』からこの陣営に居るといった。つまりは、これからの劉輝の選択によっては、彼女はこの陣営を離れると言うことだ。

だが、何となく彼女とは再び顔を合わせることになる気がした。

縹家の血による予知なのか、それとも純粋な予感なのかはわからないが、そんな気がしていた。









桜風
12.8.11


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