| ついこの間まで本当にただの幼馴染だったディアとあたし。 それがヴァレンタインデーというイベントをきっかけに『彼氏と彼女』になってしまった。 といっても何か特別に変わることもなく、ただの幼馴染だった頃とあまり変わらない。 学校に行くのに一緒に行くのも時々だし。まあ、帰りは一緒だけど... あたしとディアが一緒に居ても周りは気に留めない。 付き合う前から一緒にいることが多かったし、幼馴染だってことはきっと周知の事実だから。 イザークさんもヴァレンタインを境に恋人が出来たらしいけど、そっちは苦労をしているようだ。 前にディアが「イザークも要領悪すぎ」とかってぼやいてた。 何となく、そういう感じだなと思って思わず笑ってしまった。 しかし、イザークさんほどではないにしても、ディアだって人気がある。 普段の見た目は軽薄そうだけど、時々見せる真剣な表情ときたら... さらに、――これはついでだろうケド――お父さんが最高評議会の議員だしね。まあ、色んな思惑が行き交ってるようだ。 そんなこんなで、あれからそろそろひと月が経とうとしている。 今度は女の子がお返しを貰える日が近づいてきてるのだ。 あたしが毎年インパクトのある、きっと食べるのに非常に困難を要するものをあげても、ディアは必ずホワイトデーにはキャンディをくれていた。 実は、あたしがお菓子の中で一番すきなのはキャンディだ。 甘いものは幸せな気持ちにしてくれる。そして、キャンディはその幸せな時間が長く続くのだ。 それを知ってか知らないでか、ディアのホワイトデープレゼントはキャンディだった。 今年もきっとそうなんだろうと期待しつつ、少し残念に思ったり。 折角『彼氏と彼女』になったというのに、前と変わらないというのは少し寂しいと感じてしまうのはきっとあたしのワガママ... 「あら、ディアッカくん。いらっしゃい。どうぞ上がって」 「こんばんは、お邪魔します」 今年のホワイトデーは我が家で過ごすことになった。 お母さんにはディアッカと付き合うことになったって伝えたし、お父さんもお母さんからその話は聞いたようだ。 で、何故かホワイトデーに娘の彼氏をウチに招待することにしたのだ。 ...お父さん、オトナゲナイ。 「いらっしゃい、ディア」 「ああ、こんばんは。おと、..おじさん」 ディアはリビングに居たウチのお父さんを『お父さん』と言いそうになったようだったけど、お父さんに睨まれて言い直す。 ホント、大人気ない... 夕飯を一緒に済ませて少しリビングで過ごすけど 「。ディアッカくんとお部屋でゆっくりしなさい」 お母さんにそう声を掛けてもらえた。 「はーい。じゃあ、行こうか、ディア」 「ああ。じゃ、失礼します」 お父さんが何か言いたそうだったけど、お母さんに睨まれて結局あたしたちを見送ってくれた。 「ごめんね、ディア」 「いや。まあ、仕方ねぇだろ?」 そう言ってあたしの頭をくしゃっと撫でる。 「忘れないうちに、これやるよ」 そう言ってディアがくれたものは毎年恒例のホワイトデーのプレゼントのキャンディ。 ラッピングされたそれは一つ一つが宝石のようでとても綺麗。 「ねえ、キャンディって宝石みたいだよね」 「ガキのときもそう言ったぜ、は」 ディアは覚えていたらしく、ククッと笑う。 あたしはその宝石の1つを口の中に放る。 甘いものはやっぱり幸せな気分にしてくれる。 「ねえ、ディア。知ってる?甘いものって幸せな気持ちをくれるんだよ?」 「ふうん...」 そう気のない返事をしたディアが 「なら、俺もその幸せ、分けてもらおうかな?」 と言ってイタズラっぽく笑った。 ディアがあの笑顔を浮かべると大抵碌なことじゃない。 そう思って構えているとディアに抱き寄せられてキスされた。 「んー、確かに、幸せな気分になるな」 すっとぼけたようにディアが呟いた。 あたしにとっても、いつものキャンディがいつも以上の幸せ気分になった。 でも、何となく、負けたような気がしてあたしは言葉にしなかった。 |