| あのヴァレンタインの日に両想いが発覚し、そのまま付き合い始めたイザークと。 しかし、2人の間には険しい試練が待っていた。 いや、そんなことは簡単に想像できてた。 そう。少なくとも、には。 イザークはなるべくと共に登下校をしたいと思っている。というか、共に過ごす時間をたくさん確保したい。 それを知ってるイザークの幼馴染のディアッカは気を遣ってくれているが、他の人達、特に女子たちが何とかして邪魔をしようとする。 イザークが特定の女子と仲がいいだけでも気に食わないのに、さらにはイザークと付き合っている。 それを静かに受け入れられない人が多いのだ。 それこそ、良く思いつくな、と感心したくなる方法で毎回2人の時間を邪魔する。 「おい、お前は楽しそうだな...」 イザークもいい加減我慢の限界に近づいてきている。 いつも楽しそうに幼馴染と下校している親友のディアッカに思わず八つ当たりをしたくなるほどだ。 「てか、俺はちゃんと気を遣っての居るときはお前と一緒にいないようにしてるじゃん。お前がイイコをやめれば済む話じゃないの?」 ディアッカにそう言われてイザークも深い溜息を吐いた。 そのとおりだと思う。 しかし、一度作り上げた『優等生』という像を壊すのは容易なことではない。 もう一度、イザークは深い溜息を吐いた。 「この調子だと、大変そうだよな」 からかうようにディアッカが声を掛ける。 「何のことだ?」 「ホワイトデー、って知ってるよな?」 ディアッカに言われて初めて気が付く。 最近は周りにとの時間を邪魔されていて、イザークはその時間を確保するのに躍起になっていた。 つまり、すっかり忘れていたのだ。 「参考までに聞くが、ディアッカは何をプレゼントするつもりだ?」 「えー?教えたくねぇ..って、ゴメン。えーと普通にキャンディかな?」 ディアッカは、勿体ぶろうとしていたがイザークに鋭く睨まれて撤回した。 絶対に後が怖い。 「キャンディ?そんなもので良いのか?」 「んー。ま、アイツならな。甘いもん好きだし?イザークの場合は...やっぱ、何でもない」 「言いかけてやめるな。俺の場合は、何だ?」 何かを思いついたのにそれを口にすることをやめたディアッカにイザークは続きを促す。 「いや、俺が口出しすることじゃないと思ったんだけど...一緒に居てやることじゃないか?『モノより、思い出』ってね?」 そう言ってディアッカはヒラヒラと手を振って去って行った。 その背中を眺めながらイザークは 「モノより、思い出..か」 何やら考えていた。 運が無いとしか思えない。寧ろ呪われているのではないか? イザークは強く思った。 どうやら、はホワイトデーにはパーティがあるらしい。父親の顔を立てて自分も出席しなければならなくなったそうだ。 は済まなそうにイザークに謝罪をする。 の家も名家といえば名家だ。色々用事が入っても仕方の無いことだ。 イザークもそういう経験は良くあるし、とても大切なことだと言うことは良く分かる。 そう自分を納得させようと努力するも、上手くいかない。 とうとう、イザークの我慢の限界が来てしまった。 パーティ会場に向かってエレカを走らせた。 そのまま会場に乗り込み、 「!」 恋人を見つけて駆け寄った。 「イザーク?!えっと、どうしたの?」 「、どうしたのかね?」 「お父様!」 の様子を見た父親が声を掛けてきた。 「初めまして、ミスター。私はイザーク・ジュールと申します。これから、貴方の大切な姫君を攫う者です」 そう言って、イザークはを横抱きに抱いて会場を後にした。 会場は一時騒然としたが、そのあと一際大きな笑い声が聞こえた。の父親だ。 「氏。あの、嬢は...」 「堂々と攫われてしまったな。面白い少年だ」 そう言ってまた笑い、来賓たちに「我が家の姫は王子に攫われていきました」と挨拶をして回った。 「ちょっと、イザーク!」 「うるさい!!」 イザークのしたことに対して抗議の声を上げただが、イザークに一蹴されて思わず言葉を飲んだ。 「俺だって、いい加減我慢の限界だったんだ。それなのに、お前と来たら...」 「仕方ないじゃない!イザークだって分かるでしょ?親の顔を立てないと...それなのに、途中で私が抜けちゃったらお父様、きっと困っているわ」 が沈んだ表情をしたのを見て、イザークは初めて冷静になり罪悪感を感じた。 エレアかを走らせ、暫くすると小高い丘に着く。 「...」 イザークは優しく声を掛けてを車から降りるように促す。 目に涙を溜めたままのが車から降り、その前にイザークが片膝をついての手の甲にキスをした。 「姫、今宵は私とお伽話を語っていただけませんか?」 突然のイザークの行動には涙が引いてしまった。 きょとん、として首を傾げてイザークを見る。目の前のイザークの顔は暗闇の中でも分かるくらい真っ赤だ。 は声を立てて笑い始めた。 「笑うな!」 「だって、イザークったら...」 ドレス姿でお腹を抱えて笑うに、イザークは自分の着ていた上着をかけてやる。 「ありがとう。...ごめんね、イザーク」 顔を真っ赤にしていたイザークは 「いや、俺こそ。の立場を考えずに...すまない。戻る..か?」 恐る恐るイザークがそう言うと 「あら?お伽話を語るのではなくて?王子様」 がイタズラっぽく笑ってみせた。 「ううん。それよりも、もう私たちがお伽話かもね?『パーティの途中で突然姫を攫った王子』って。お伽話というより、伝説かもしれないけど」 そう言ってクスクス笑う。 「そうだな、語られる側になってしまったかもな」 そう言いながらイザークも微笑んだ。 |
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