| 「ってか、どう思いますかねー!!」 「コーラ飲みながら管を巻くのはやめろ...」 ダン、とグラスをテーブルに叩きつけて言うにディアッカが呆れながら言う。 「またか」と傍を通りながらイザークがぽそりと言った。 「なぁにか言いましたかァ?!」 「なにも?」 そんなことを言うイザークに「ケッ」とは返して「おかわりー」とディアッカにグラスを突き出した。 「オレはお前の小間使いかよ...」とぼやきつつディアッカはの要望を叶えるべく椅子から立ち上がった。 「で?今回は何だって?」 の前の席の椅子を引いてイザークが問う。 「キミには僕のようなのは必要ないだろう、って。はぁ?!って感じじゃない?」 「そりゃ、言うって」 いつの間にか傍に居たラスティがの隣の椅子を引いて座った。 「何、そのシッタカブリな口調」 半眼でが言う。 「いやぁ、本人が言ってたから。たまたま聞いたんだよー」 へらへら笑いながら言うラスティが妙に憎らしい。 「グハッ」と声を漏らした後、呻きながらテーブルに突っ伏したラスティはしばらくその状態のままだった。 「あいつどうしたんだ?」と戻ってきたディアッカがラスティの状態を見つつ聞くと、「いつものことだ」とイザークが返した。 なるほど、と納得したディアッカはの前にグラスを置いた。 「今回は何て?」 「イザークに話した」 ディアッカの問いにはがそのように答え、イザークは肩を竦める。 「実はですね?」 復活したラスティが突然口を開いた。 「先日、デートをしておりました。すると、暴漢たちに襲われたそうです。要は、カツアゲとかそんな感じだったらしいのですが...彼氏は逃げようとしました。が、彼女の方が喧嘩を買って自分たちを囲んでいた複数人をあっという間に伸したそうです。男は自分の彼女が物凄くおっかない生き物のように思えたらしく、ゴメンナサイをしたそ..!!」 最後まで言えずにラスティはまたしてもテーブルに突っ伏す。 今度はわき腹にのひじが刺さったのだ。これは痛い。 しかし、ある意味自業自得。 前に座る友人たち2人は冷めた視線でラスティを見ていた。 「ま、そういうこと。何なのさ。自分が何も出来なかったからって。何?自分より強い子はちょっと...ってふざけんなー。自分が弱いことを棚に上げて全くよー!!」 またしてもコーラで管を巻く。 ディアッカは溜息を吐き、イザークは頬杖をついての愚痴を一通り聞いてやることにした。 「ま、は黙ってれば深窓の令嬢だもんなー」 「黙ってれば、って何?!」 「口を開けば、相手に反撃の隙を見せず。拳を交えれば大抵は男の方が地面とキス」 「...嫌に楽しそうに言うわね、ラスティ。今度はどこをどついてほしい?」 にこりと微笑んでが言う。 「じゃ、オレ今日の講義は終わったから帰るー」 慌てての隣から去っていくラスティを呆れ顔で見送ったイザークとディアッカだったが、「んじゃ、オレも授業あるから」とディアッカが先に席を立った。 「えー!あたしの小間使い!!」 「それ、誰のことだよ」 辟易とした表情でディアッカはそう返してそのまま食堂を後にした。 イザークを見ると「愚痴なら聞いてやるが、コーラのお替りは自分でしろ」と返されては肩を竦めた。 グラスの中のコーラを飲み干して立ち上がる。 「いいよ、ありがとう。まあ、そこそこすっきりした」 苦笑してはそう言い、バッグを肩に掛けてグラスを返却して食堂を出て行った。 その日の晩、珍しい人物から電話があった。 「どうしたの、イザーク。珍しいね」 『明日、暇か?』 「昼間は授業があるけど...あ、でも午後は休講だった。何?」 『夜は空いてるんだな?』 「空いてる。何??」 『じゃあ、明日午後..そうだな6時ごろ迎えに行くから家に居ろ』 「どこ行くの?」 『明日言う』 そう言ってイザークは電話を切った。 何のこっちゃ?と思ったが、まあ、いいやと思って特に何も考えずに明日を迎えることにした。 イザークは予告どおりに午後6時ごろにやってきた。 「たしか、は浴衣を着ることが出来るな?」 そう言って風呂敷を差し出してくる。 「何?」 「着替えろ」 命令されてムッとしたが、まあいつものことだと思ってはイザークに差し出された風呂敷を受け取って自室に戻った。 「ねえ、これどうしたの?」 着替え終わって戻ってきたがイザークに問う。 「母上のだ。ただ、柄が少し派手だからもう自分は着られないといっていた。着られる人が居たら譲りたいって言っていたから良かったら貰ってくれ」 「うわ、イザークんちのだったら物凄く上質のものでしょ?いいの?」 「そう言ったと思うが?」 「じゃ、もらう。エザリア様にお礼を言っておいて」 「向こうも同じ事を言っていた。貰ってくれると言ったら礼を言うように、と」 そのままイザークの運転する車でどこかへと向かう。 「そろそろ教えたまえ」 が言うと 「このプラントの少し田舎の方に行くと、祭りがあるそうだ」 とイザークは前を向いたままそう言った。 「今日?」 「昨日や明日だったら、意味ないな」 嫌な言い方ね、とが言うがイザークはその言葉を黙殺した。 しばらく車内は無言だったが、やっと開けた道に出るとが楽しそうに窓の外の風景を見ていた。 「凄い、何これ」 「蛍だろう。川がきれいな証拠だ」 「すごいねぇ」と窓の外を眺めながら声を漏らすにイザークは微笑む。 車を停めて祭りの会場に入ると意外と人が多かった。 「近隣の町からも結構人がやって来るらしいからな」 「イザークってこのお祭りよく知ってるの?」 「いや、今日が始めてだ」 その言葉には目を丸くしてイザークを見上げた。 「気分転換になったか?」 イザークの問いには満面の笑みで頷いた。 ドン、と大きな音が鳴り夜空に花火が広がった。 「凄い!」 「これだけ大きな音が鳴ってるし、みんな上を向いている。時間は少ししかないかもしれないが..泣けるぞ?」 さすがにこのイザークの言葉はにとっても意外で、思わず俯いた。 しかし、は顔を上げて笑う。 「泣かない!」 「いいのか?」 は頷く。 「あんな奴のために流す涙は、あたしの中に1デシリットルもない!」 「それはそれは...」 イザークは苦笑した。 「でも、イザーク。ありがとう!!」 花火の音に負けない大きな声でが言い、イザークは返事のかわりに軽く手を上げて応えた。 |
桜風
09.8.1