| 久しぶりの休みで、やっと自分のために時間を裂くことができるようになったディアッカは取り敢えず買い物に出た。 ずっと気になっていたことのひとつだ。 そして、帰ってきて首を傾げる。 というか、急いでリビングに向かった。 仕事に出るようになって、ついでに家を出た。 実家の方が楽なのは楽だが、口出しされることも多々あったのでそれが嫌だったのだ。 そして、やっと手に入れた、少し手狭な自分の城に不法侵入者があったのだ。 人の気配は、ソファの辺りにある。 静かに覗き込むと、やはり予想したとおりの人物がそこで穏やかな寝顔を浮かべていた。 「...ったく」と呟く。 文句をすぐさま言ってやりたいが、寝ているものを起こしてまで今すぐ言わなくてはいけないことでもないので、ディアッカは溜息をつくことで取り敢えずは自分の不満な気持ちをやり過ごした。 買ってきたものをしまっていると「おかえりー」といかにも寝起きの声がしてディアッカはソファに向かった。 「なんで、がウチにいるんだよ」 不法侵入者の・はディアッカにとっては親戚筋の人間だった。もっと詳しく言えば、従姉だ。 「エルスマンに遊びに行ったら、おじ様がディアッカが独り暮らししてるって教えてくれたの」 「...どうやって、ウチに入ったんだよ」 「おば様が、これをくれたの」 そう言ってポケットから鍵を取り出した。 何かあったらいけないから寄越せ、と母に言われて仕方なく渡していた合鍵だ。 ディアッカは脱力した。 「貰ってくるなよ」 「今度返すつもり。ディアッカに預けたらおば様に返してくれる?」 「もう渡さない」 「じゃあ、ちゃんとお返ししないと」とは笑い、「よっこいしょ」と起き上がって彼女はキッチンに向かう。 「コーヒーを貰ってもいいかしら?」 「オレのも淹れて」 ディアッカの言葉に軽く手を上げて応えたはコーヒーを入れる支度を始めた。 「あれ、豆は一々挽くの?」 「そっちんが美味いから」 「面倒でしょ?」 そういいながら豆を挽き始める。 「あんま家でゆっくりしないからいいんだよ。豆を挽くと『休み』って感じがしてこれまた格別」 「そんなに家に居ないの?家賃が勿体ないわね」 は笑いながらそういった。 まあ、そのとおりだ。何度かの言ったように思ったが、それでも自分のテリトリーがあるのは嬉しいものだし、金銭的には困っていないから今のままでいいのだ。 「だって忙しいんだろう?」 「まあ、ねー。家賃が勿体ない程度には」 ああ、だから「家賃が勿体ない」とすぐに言ったのか。 ディアッカは納得した。 「んで、何でウチに来たんだよ?」 「せっかく出来た自由な時間だったから、ディアッカを買い物に付き合わせてみようと思って」 「オレの意向は?」 「宇宙の彼方」 ディアッカは深い溜息を吐いた。これみよがしに。 しかし、はそれが目に入っても意見を変える様子はない。 「オレ、今帰ってきたんだけど...」 「ああ、わたしもさっき来たところ」 「...どこに行くんだよ」 抵抗しても無駄だろう。彼女との付き合いは長いし、それで身につけた諦めだってある。 しかし、その諦めを笑ったのはだった。 「うそうそ。買い物って言っても、ほら、バーゲンとかに行きたいと思っただけだし。それに、買っても使わない可能性が高いからさ。無駄遣いになりかねないのよね。ディアッカが家に居たら無駄遣いに付き合わせてみようって思ってただけだから」 「ホントにいいのかよ?」 「お疲れ様の従弟を連れまわさなきゃいけない程には、ストレス溜まってないのよ、まだ」 そういいながらはカップを持ってきた。 ディアッカは「サンキュ」とそれを受け取る。 「そのソファ」と床に座ったが今ディアッカが腰を下ろしているソファを指さした。 「ん?」 「寝心地良いね」 笑いながら言うにディアッカも笑った。 「だろ?これを選んだ基準って『寝心地』だから」 「どこで買ったの?」 「今度付き合ってやるよ」 ディアッカの言葉には目を丸くして、そして笑う。 「ありがとう」 「ま、たまには姉ちゃんの面倒見てやらないとな」 「子供のときはわたしが散々見てあげたもんね!」 の返事にディアッカは渋面を作り、それを見たは声を上げて笑った。 |
桜風
09.9.1