| 「あー...アー...んんっ..あー」 少し離れたダイニングテーブルで紅茶を入れているが変な声を出していた。 ソファに座っていたディアッカは驚いて彼女を振り返った。 「...?」 ゆっくりソファから立ち上がり、ディアッカは彼女に足を向けた。 結局が病院を退院したのは、戦争が終結してから1ヵ月後だった。 の入院中は皆でお見舞いにも行ったりした。そんな中で悲報を受けもしたが、その話はにはしていない。ただ、彼女も何か感じ取ったらしく、そういった少し気遣っているような雰囲気は時々見え隠れしている。 彼女の喉の傷はレオンが消した。プラントの技術があればあの程度なら簡単に消すことが出来る。 それでも、何年もは首にスカーフなどを巻いていたので何も巻かないのは落ち着かないらしく、大抵何かしら巻いている。 退院したは良いが、元々ヘリオポリスに住んでいたにはプラントで住む場所がない。 また、戦争が終わってからまだ間が経っていないためプラント内の混乱状態の中で最初から自分で探すのも楽ではない。 は自分で何とかすると言ったが、ディアッカがあっさり説得して一緒に住み始めて既に9ヶ月が経った。 「どうかしたか?のどの調子が悪いんだったら兄貴のトコロに行くか?」 心配そうにの顔を覗き込む。 「え?あ、ううん。大丈夫」 驚いたようには首を横に振る。 「違うの。ほら、わたしって随分声を出してなかったでしょう?だから、ホントにこんな声だったかな、って...」 なるほど、とディアッカは納得した。 「けど、女の子でもやっぱり大人になったら声が落ち着いてくるって話、聞いたことあるな」 とディアッカが言うと「そうなんだ...」と神妙な顔つきでが相槌を打つ。 「そういや、今度の休みっていつ?」 ディアッカがに聞く。 「お休み?」 「ほら、少し長くもらえるって言ってただろう?シフト制になるけどって。まだ決まってない?」 ディアッカは戦後もそのままザフトに残った。 といっても、ザフトの機関に勤めているというだけで、戦場がなくなったためパイロットの数もそう必要ないという中での転属だ。左遷とかそういう表現をするものたちも居たが、給料がもらえて、出来れば命を張らずに済むならそれに越したことはないと思う。まあ、パイロット時代に比べれば給料が減り、少し痛いと思っていることも事実なのだが... しかし、性格が柔軟なディアッカはどこに行っても適応する自信があったし、実際適応した。それなりに快適な職場環境を築いている。 一方、はレオンが紹介してくれた民間会社に勤務している。 大きな工場を持つ、家電製品の会社だ。 何かを造ったりするのが単純に好きなは就職先がどこであれ、技師として働くことが出来るように配慮してくれたレオンにとても感謝している。 ディアッカはそんなレオンの顔の広さに驚き、そしてちょっと嫉妬もしている。 何でこうも簡単にを喜ばせることが出来るのだ。これが、“大人の余裕”というやつなのか。 「あれ、まだ言ってなかったっけ?ひと月後。1週間程度だけど」 そういって詳しい日程を口にしたにディアッカが「んじゃ」と言う。 「オレも同じ時期に休みを取るからどっか行かないか?1週間あったら旅行できるし」 ディアッカの言葉には嬉しそうに頷いたが、はっと表情を変える。 「大丈夫?1週間もお休みって」 「大丈夫。逆に、休み取れって上司がうるさいんだ。部下が休みを取れないような仕事の振り分けしてるような評価を受けることになるって。査定のマイナス部分らしいぜ」 苦笑して言うディアッカに、はほっとしたように笑った。 「じゃあ、行きたい」 「どこがいい?こっちに住んで随分たつけど、このコロニー以外は全然見てないだろう?」 ディアッカに聞かれては少し悩み、あるコロニーを指定した。 緑自然が多いというのが特徴で、のどかで気候が良いため別荘地として栄えているコロニーの話を、以前ニコルから聞いたことがある。 そのコロニーについては、ディアッカは勿論、イザークやラスティ、アスランまで知っていた。 皆が口をそろえて「良いコロニーだ」と言うものだから興味を持ったのだ。 「まあ、行っても良いけど...花が咲くにはちょっと早いかも知んないけど、良いのか?」 「けど、新緑がきれいかも。そりゃ、一面のお花畑を見てみたいとも思うけど...」 がそう言ったため 「了解。まあ、また別の季節に行ってみても良いしな」 とディアッカは頷いた。 あのコロニーには実家の別荘がある。そこを使わせてもらおう。家族があそこを使うのは大抵夏だし、今の時期は誰かが使うという予定も入っていないと思う。 実家のがだめだったら、別の友人に頼んでみても良いし。 こういうとき、自分の実家と生活水準が似ている友人が多いのは助かる。 不意に袖をちょいちょいと引っ張られてディアッカはを見た。 「あのね、ディアッカ」 「ん?」 「いつもありがとうございます」 が頭を下げてそういった。 ディアッカはきょとんとして苦笑した。 「ていうか、お礼とかそういうの、良いって。オレがしたいからしてるんだし。が喜んでくれたら、オレが嬉しいんだから。『ありがとう』も嬉しいけど、『ディアッカ大好きー』の方が嬉しいなー。ついでに、抱きついたりキスされるともっと嬉しい」 ディアッカの言葉にはあんぐりと口を開いた。 「い、いつも言ってるじゃない!」 改めて求められると恥ずかしい。 しかし、ディアッカとしてはそうやって一々表情を変えて声を出すを見るのが何より楽しいし、幸せなのだ。 だから、ちょっと拗ねさせてしまうことがあるが、からかうように本音を口にする。 しかし、今日のは違っていた。 「ディアッカ」といって腕を引く。 思いもよらない力がかかったため、ディアッカは体勢を崩された形となった。 そのままは少し背伸びをしてディアッカの頬にキスをした。 「ディアッカ、いつも大好きだよ」 そういって、堪らなくなってダッシュで自室に入って鍵をかけた。 「え、ちょ..、反則!ちょっと、出てきて。こら!」 の部屋のドアを叩きながらディアッカが訴える。 「お..お望みどおりだったでしょ!」 ドアの向こうから少し強がったの声が聞こえる。 「いや、出来ればお返しをしたいので出てきてください」 ドアの前でディアッカが言うと 「今はムリ!恥ずかしいもの!!」 というそっけなくも可愛い返事が返ってくる。 あ、くそ。このドア蹴破って今すぐにキスしたい。 「なあ、ー。出てきてくれよー」 その後しばらくの間、ドアの前で情けない声を出しながら、ディアッカは訴え続けたのだった。 |
リクエスト内容
『「stray cat」のヒロインで、ディアッカとヒロイン、お互いが1番大好き!な甘いようなほのぼのとしたお話』
リクエストありがとうございました!!
桜風
09.7.5
ブラウザバックでお戻りください