| 夜、独りで歩いて帰っていると大通りの方からクラクションが鳴らされた。 振り返ると軽薄そうな笑顔を浮かべた私の幼馴染のディアッカ・エルスマンが手を振っている。 「よう、。乗って帰るか?」 「いやぁ、ディアッカと密室で2人きりってちょっとねぇ...」 そう言うと鼻で笑って 「誰がみたいなの襲うかよ。いいから乗って帰れよ」 そう言われた。 ああ、ムカツク。 ムカツクけど、まあ乗ってあげてもいいかなって思ってディアッカの運転するエレカに乗り込んだ。 「何でこんな時間に一人で歩いてんだよ」 エレカを走らせながらディアッカが聞いてくる。 「うーん、ちょっと用事がありまして。で、気がつくとこんなに暗くなってた。ビックリだよね」 そう言うとこれ見よがしに深い溜息。 「プラントも最近物騒になってんだぞ?」 そういわれた。 ディアッカと私は同じ歳だけど、よく私にお兄ちゃんぶった言い方をする。 今回もそんな感じだなって思った。 「聞いてるのか?」 「うん、聞いてる」 うん、聞いてるよ。 ディアッカは普段他の女の子には凄く優しいというか、軽いのに私には凄く真面目。 何でだろう? 「ねえ、何で?」 「自分の頭の中で考えた事の最後だけを口にするなよな。分かるかっつーの!」 呆れたようにそう言われた。 む〜、幼馴染なんだからそれくらい分かってよ。 「やっぱいいや」 そう言うとまたしても溜息。 「幸せが逃げちゃうよ?」 「誰がそうさせてんだよ」 「誰かしら?」 そう答えると軽く睨まれた。 今日の天気は快晴らしい。 プラントは天候も管理しているから外れることはない。 窓の外を覗くと、今朝天気予報で言っていたとおりに月が出ている。 「ねえ、ディアッカ。まだ時間ある?」 「ああ、別に構わないぜ」 と言ってくれた。 「お月見したい」 そう言うと 「はあ?月見?あ、ああ。そうか。今日は満月か」 そう言って納得する。 「んじゃ、いいトコロに連れて行ってやるよ」 と言ってハンドルを切った。 向かった先は閑静な住宅街の外れ。 エレカを降りるとさっきのところよりも月が近くに見える。 「うわ、綺麗!!」 振り返って目に入ったディアッカの髪が月の光を受けていつもよりも明るい金髪に見えた。 以前、図鑑で見た『月見草』を思い出した。 凄く綺麗で、それ以来私の好きな花になったそれに、少しだけ似てる。 ホンモノは見たことないけど、でも、きっときれいで優しい色をしてるんだろうなって思った。 「だろ?誰にも教えて無いんだぜ?」 ディアッカが得意そうに言った。 「まったまたー。女の子連れてきてるんでしょう?」 そう言うとあからさまにムッとした表情になる。 あ、あれ?? 「連れてきてない」 「ご、ごめん...」 何だか私のさっきの一言がディアッカを怒らせたらしい。 謝った後もディアッカは怒ったままで、私はどうしていいか分からない。 「ね、ねえ。ディアッカ」 返事をせずにディアッカは視線だけを私に向けた。 ちょっと待ってみたけど何も言わない。 いつもみたいに「冗談だって!」とか言ってくれるのを期待してたのに。 ディアッカは一度溜息を吐いて 「泣くなよ」 と困ったように言った。 「だって、...ごめんなさい」 たぶん私が悪いんだと思う。 だから、謝る。 「あのさ、。何で俺が怒ったか分かるか?」 はっきりとは分からない。 でも、失礼なことを言ったんだと思う。 「あのな。俺は、この場所は好きな子しか連れてくる気がなかったの」 「私が来たから怒ったの?」 「や。俺が連れて来たんだろ?」 少しだけ情け無い声でディアッカが訂正した。 そう言えばそうだ、と頷く。 「つまりは、そう言うこと。分かる?」 『そう言うこと』とは何を指してるんだろう...? そう思ってディアッカを見上げると、やっぱり困った顔をして立っていた。 そして、突然の真っ暗闇。 目の前の鼓動が聞こえてディアッカに抱き締められたってのが分かった。 「だから、俺はが好きってコト。分かった?」 耳元でそう言われる。 「でも、ディアッカ。女の子と沢山遊んでるじゃん」 そのままの姿勢で聞いてみると 「アレは、全部トモダチ。遊んでるだけだって。とっておきの場所には誰も連れてきてない」 そう言ってディアッカは私を離して顔を覗きこむ。 「分かった?」 やっとまっすぐに合わせてくれたディアッカの眼は月の光を受けて夜空のようで凄く優しかった。 いつもの、ディアッカだと思ったら安心した。 だから、ディアッカにもう1回抱き付いて「分かった」って返事をした。 「それならよろしい」とディアッカもおどけた口調でそう言う。 「もう少し、月を見てても良い?」 「じゃあ、俺はを見てるから」 ディアッカの言葉に驚いて隣を見ると優しい目のディアッカと目が合ってしまい、慌てて夜空を見上げた。 さっきまで見ていた月が別物のように見えて凄く不思議な感じがした。 |