| ラスティの両親が離婚に至ったのは、必然だった。 少なくとも、彼にとってはそうだった。 母親の言葉、父親の語る想い。両方を耳にして、それは両立、共存できないことを感じていた。 そして、両親が離婚する際、ラスティは母親の元へ行くことを選んだ。選ばざるを得なかった。 父には既にもうひとつ家族があった。 それは褒められたことではないだろうし、認められることとは思えないが、出生率が下がっているコーディネーターの中でまあ、凄いなぁ、とラスティは何となく思った。 ほんのり、気づいていたし。 父を支持するつもりはないが、それでも自分にも想いがあり、守りたいものがあった。 だから、アカデミーに入った。 両親の離婚のことを知っている友人たちは実に絶妙な距離感と気配りを見せてくれた。 お陰で凄く楽だった。 『マクスウェル』から『マッケンジー』に変った。ただ、それだけだった。 もちろん生活環境は変ったが、母は強し、とかいう言葉をどこかで聞いたけど、そのとおりだと思いながら日々の生活を送っていた。 「帰ってきたら話があるの」 クルーゼ隊の配属が決まり、翌日にそこへの赴任を控えている中、夕食を摂りながら母が言う。 「...帰って来れないかもよ」 そのつもりはないが、可能性は否定できない。 だから、そういう。 その言葉を聞いて、母が見せた表情は、『呆れ顔』だった。 ラスティは思わず声を上げて笑う。 普通、こういうときは『悲しい顔』をするだろう。寧ろ、そうしてほしい。 だが、彼女が見せた表情はその期待を裏切った。 「ばかねぇ。『憎まれっ子世に憚る』って言葉知らないの?あなた、死ぬときはいちばん最後よ」 それは紛れもなく母の願いだ。 「そっかなぁ?だって、オレみたいに可愛い子いないよ?」 笑いながら返すと母は溜息をつく。 「ニコル君に対抗しても無駄よ?」 あ、そっか。ニコルは可愛いや。 ラスティはすんなり納得して「じゃあ、2番目」と懲りずに言う。 「イザーク君も可愛いわ」 「...オレ、何番目?」 イザークよりも下のか... ほんのり傷つきながら返した。 「知りたかったら、帰ってくることね。それまでに番付作っておくわ」 母にそういわれてラスティは笑う。 「番付かぁ...わかった。すぐには戻れないと思うけどね」 「そこは、期待していないわ。あなたひとりでどうにかできることじゃない。もっと、こう...偉い人の仕事だもの」 悲しそうな表情を見せた母のそれには気づかないフリをした。 その偉い人は一向に戦争を収束させられない。だから、ラスティのような少年兵が戦地へと赴くことになるのだ。 日々流れるニュースは何処までが真実かは分かったもんじゃない。都合の悪い話をバカ正直に国民に知らせることがどれだけ利になるのかさっぱりわからない。 食事を済ませて、ラスティは立ち上がる。 「ねえ、オレが戻ってきたら何て名前になるの?」 母がしたい話なんてとっくの昔に感づいている。 「帰ってきたら、よ」 息子が感づいていることも承知で、母は人さし指を口に当てて微笑んだ。 |
桜風
10.1.1