| 実家に帰った翌日、ラスティはザフトの寮に戻った。 「幸せが逃げるぞ」 不意に声を掛けられて振り返る。 「あー、ディアッカ。何で?」 「お前、溜息吐いてたんだよ。何だ、しかも無意識?」 からかうように顔を覗きこみながらディアッカが言う。 男に顔を近づけられても全くこれっぽっちも嬉しくない。 正直にディアッカに言うと「俺もだよ」とげんなりとした表情で返された。 とりあえず、荷物を部屋に置いて落ち着いてから話をするというと興味を持ったらしいディアッカがついてきた。 「イザークは?」 「まだ。俺ら、セットじゃないんだけど...」 「まあ、イザークは2位だもんなぁ」 ラスティのぼやきにディアッカが神経質そうに眉を寄せた。 「あのさ、イザークが暴れるかもしれないこと言うのやめてくれるか?」 「んじゃ、それはウチの母親に言ってよ」 ラスティの応えに首を傾げながらディアッカは「おばちゃん?」と呟いている。 部屋に戻ると、まだ同室の仲間が居ないことが分かった。 「オレ、もしかして早いほう?」 「うん。ニコルもアスランもまだだぜ?」 珍しいなぁと思いつつも、でもそうなんだろうな、と納得も出来る。 「で、おばちゃんが何て?」 向かいのベッドに座ってディアッカが言う。 「母さん?」 「ほら、さっき。イザークが2位って」 「誰が、2位だ...」 なんと言う、間の悪い。 いや、これがディアッカクオリティ。 そんなことを思いながらぎゃんぎゃんイザークに怒鳴られているディアッカを見守っていると助けを求める瞳を向けられていることに気が付き..もうちょっと静観してみることにした。 しかし、静観してても中々イザークの怒り収まらない感じで、さすがにちょっと煩くなってきたので「イザーク、ひとの部屋で騒がないでくれるかな?」と言って止めた。 いやぁ、オレって友達想いだなぁ... 心の中で自画自賛してディアッカに視線を向けると、ディアッカは「ひでぇ」と声に出さずに口を動かす。 ラスティが気づいているにも拘わらず静観していたのはディアッカにも分かっていたことだ。 「まあ、いいじゃん。ちゃんと止めたんだし」 やはり声に出さずに口を動かしてそう返す。 「イザークが2位ってのは、ウチの母親が言ってたの」 「ラスティの母上が?」 今時母親のことを『母上』って呼ぶ人はどれくらい居るんだろう、と思いながらも頷いた。 「何かね。可愛い子番付を作ったんだって。それで、栄えある1位はニコルだけど、2位がイザークって」 「俺は?」 興味を持ったディアッカが聞くと 「ベスト10には入ってたけど..微妙だったねぇ」 とラスティが返す。 というか、正直覚えていない。 さすがに友人の母親に対して文句を言うのは憚れるのか、イザークはグッと何かを堪えていた。 「1位が良かった?ニコルを超えるのは至難の業だよ?」 ラスティが言うと、「いや」とイザークは律儀に応える。 『可愛い』番付なんて出来ればランクインしたくなかったんだろうなぁ... そうは言っても、母親からすればみんな『小さな子供』に見えるのだから、仕方のないことだ。よちよち歩きの頃から知られていると結局そうなる。 「で?」とディアッカが何かを促す。 これで分かったらエスパーだなー、と思いながらラスティは「なに?」と返した。 「ラスティは?1位はニコルなんだろう?で、2位がイザーク。妥当な線で3位にランクイン?」 3位が妥当かなぁ?と思いながらも首を振る。 「殿堂入り」 なるほど、その手があったか。 ディアッカとイザーク納得した。 「しかし、何でラスティの母上はそんな番付なんぞしたんだ?」 尤もな質問だ。 ディアッカもラスティに視線を向けた。 「あー、うん」 歯切れ悪くそこに至る経緯をラスティは話した。 話を聞き終わって、イザークとディアッカは苦笑している。 「おばちゃんらしいな」 「だな」 何だか照れくささもあってもぞもぞと落ち着きがなくなるラスティを見て、また2人は笑う。 「わらうなよー」 「はいはい」とディアッカ。 「レストルームに行かないか」とイザーク。 仕方ないので、ラスティは荷物を解かずにそのままイザークたちとレストルームへと向かった。 |
桜風
10.1.1