Blue bird 5





戦争はひとまず休憩となっても、やることはたくさんある。

1ヶ月なんて怒涛だった。

除隊するとかどうとかそんなことを考えている暇はなく、取り敢えずの休暇だった。

と、言っても3日間。

もっとほしいよなー、と思ったがもしかしたらちょうど良いかもとも思う。

ちなみに、あの後やってきたニコルとアスランに除隊のアンケートを行うと、意外なことに2人とも保留だった。

自分たちはMSパイロットで、軍事機密を知りすぎていると言うのがその理由だ。除隊しても結局行動制限などを受けることとなり、思うような自由は手に入らない可能性が高い。

だったら、除隊せずにこのまま、というのも悪くない手だとは思う。


「ただいま」と家に帰るとそわそわしている母が居た。

「もう出るの?」

「だって、遅刻出来ないでしょ?!」

こんな母を見たことない。

いつも落ち着いていて、離婚のときも全く取り乱さず、仕事を淡々と...

たぶん、違うんだろうな。

淡々とこなして、不安な気持ちを抑えて。

「すぐに支度するから」

「はやくね!」

こんなそわそわしている母は、結構可愛い。時間に間に合わないかも、という不安と好きな人に会えるという落ち着きのなさが混ざっている感じだ。

支度を済ませて部屋から出ると、ドアの目の前に母が居た。

「...はいはい。とっとと行きましょうねぇ」

そう言って母が持っているキーを受け取って家を出た。


ちゃん、だっけ?」

車を運転しながら不意にラスティが言う。

「ん?」

「オレの妹になるかもしれないって子」

「ああ、うん。ちゃん。ちょっと..人見知りが激しいところがあるみたい。あと、体があまり丈夫じゃないらしいわ」

「珍しいね」

プラントに住んでいると言うことは、コーディネーターのはずだ。体が丈夫なのが殆どだ。もちろん、そうでない人も居るが、そういう人はそれがコンプレックスになっていることが多い。

「本人に言っちゃダメよ?あー、心配だわ。あなたってば、意外と色々と気を遣うべきところをあっさりスルーしてサクッと失言しちゃいそうなんだもん」

「違うよ。分かってて、言ってるの」

「尚悪い。ね、お願いよ?」

懇願するようにいう母に溜息を吐く。

「ユーヒさんだっけ?その人がオレを気に入らなかったら無視してくれていいんだから。オレも自分の食い扶持くらいは稼いでるんだから別に困らないし。これからの人生は、母さんが好きに選んで進んでいいんだよ」

「ラスティが冷たいぃ〜...」

母がさめざめと泣くような仕草を見せた。

ちらりと横目でそれを見たラスティは肩を竦めた。


別のコロニーにある少し敷居の高いレストランでの待ち合わせだった。

こいういうところ、どれくらいぶりに来るんだろう。

母は、きっとユーヒと共にデートとかで来ていたのだろうが、自分は久しぶりだ。

まあ、ドレスコードがどうのこうのって言われた時点で寮内で友人たちに色々確認したから大丈夫だと思う。

さすがに、しょっぱなで躓くのは良くないだろうから。

既に、相手が来ていた。

やるな、とラスティは唸った。

時間の前、しかも15分も前だ。仕事はどうした、忙しいんじゃないのか??

母は少し足早に、でも嬉しそうに、自分たちを見つけて立ち上がったユーヒの元へと向かった。

何か、複雑な心境だ。

ラスティも少しだけ歩調を速めた。

「お忙しいのに、申し訳ない」

そう言って頭を下げたユーヒに「こちらこそ、遅くなりまして...」となどとラスティも挨拶を返す。その言葉、物腰は社交界に出しても引けをとらないものだ。

ふと、視線感じるので見ると母が感動の視線を向けている。

あんたが躾けたんだよ、と心の中で突っ込む。まあ、寮で友人たちがあれやこれやの指導してくれたお陰もあるのだろうが...

しかし、この場にはユーヒしかいない。

席を外しているのかな、と思ったがどうやらそうではないらしい。

「すみません、は今日は体調が悪いといって...」

と、言うことは欠席らしい。

まあ、別にと母が結婚するわけではないし。

自分としてはユーヒと挨拶できればいいのだろうし。


その日の食事会の終わりに、ユーヒが頭を下げてきた。

ラスティは目を丸くしてとっさに反応できなかった。

ああ、ちょっと悔しいなぁ。

そう思いながらも「母を、お願いします」と深く頭を下げてさらに言葉を続ける。

「ちょっとわがままだったり面倒くさいこととかあると思いますけど、そこらへんは目を瞑っていただけると...」

「ちょっ!何で此処でそういうことを?!」

母が慌てる。

その様子を見てユーヒは笑う。

「面倒くさいの、大歓迎です」

その言葉にラスティは苦笑した。

完敗だ。

「よかったね、母さん」

「も〜!あんたって子は!!」

恥ずかしそうに、嬉しそうに彼女はそういった。

「ああ、ラスティ君。今回の休みはいつまでかな?」

ユーヒに聞かれて明後日までだと話した。

「そうか」と言うユーヒに「でも、ムリに寮に入らなくてもいいって言うか...シフト制なので。今月いっぱいは夜勤がないんです」と応えた。

「では、明後日..でいいかな。うちに来てもらえないか?やっぱりに会ってもらいたいし」

「妹になる子が可愛くなくても構いませんよ」という心からの本音を慌てて飲んで「わかりました」と快諾する。

「ありがとう」

ユーヒはとても嬉しそうに礼を言った。










桜風
10.2.1