| キッチンに立っているとガタリと物音がした。 振り返ると珍しく引きこもり姫が出てきている。 「...なんで居るの?」 「ユーヒさんに頼まれて」 ラスティの言葉には溜息をついた。 2日の休みが取れそうだ。 その話をしたら母が異常に喜んだ。 母は籍を入れてユーヒの家に住んでいる。 ラスティは、どうしたものかと悩んだ結果、独り暮らしをしている。 気楽だし、1回やってみたいし、軍に居たから一通りの家事は出来るからそんなに困らないだろうし。それに、彼女が出来たら一緒に住めば良いし。 不純の塊が動機で、そんな生活を選んだ。 もうひとつの理由は、まあ、に異常なまでに嫌われていることだ。 あれから何度か会ったが、はちっとも打ち解けてくれない。 年が近いみたいだから、ジェネレーションギャップによる壁は無いと思ったけど、それ以前の問題のようで、頑張るのをやめた。 それがきっとお互いのためだと思ったのだ。 母もユーヒもどうやらがラスティに懐いていないことには気づいているようで特に強く引き止めなかった。 まあ、ラスティももう大人だし。 そんな別居生活が続いていたが、母がラスティにいつ休みを取れるかと再三再四聞いてくるのだ。 はいはい、旅行にでも行きたいんだよね... そう思って諦めて休みを申請したら通った。 申請が通った後に話をして怒られたが、それでも2人は既に準備万端だったらしく、旅行に行くと宣言して出て行った。 家に誰も居ないと無用心だから、とラスティは夜間の留守番役を頼まれて引き受けた。 メイドたちは住み込みではないらしい。 なら、まあ。仕方ないか、と請け負ったのだ。 仕事が終わって、の家に行くと、一応、ラスティが来るまで残っていたメイドに一通り家のことを聞いて彼女を送り出す。 その際、メイドがぼやいていたことがあったので、それを解決しておいてあげましょうと言う親切心を出したのだ。 空調の調子が悪い、とのこと。 業者に頼むほどではない気もするし... 彼女が言った空調はキッチンだった。 だから、キッチンの空調を調整するついでに、ホットミルクを作っていた。 そんなところに、がやってきたのだ。 「何してるの?」 「何か、キッチンの空調が悪いって聞いたから。直してみようかな、って」 軽く言うラスティに対しての眉間にシワが寄る。 「そんなこと、できるの?」 「まあ、一応。ザフトに居るから」 『ザフト』という単語に彼女の眉間に皺がより一層深くなった。 あれ?とラスティは思う。 男が嫌いなのではなく、軍人が嫌いなのかも... 「ザフトに居たら、皆できるの?」 「オレ、パイロットだから」 今度は目を丸くした。 意外と表情豊かだ。 「パイロットだったら、できるの?」 「うん。基本はメカニックに調整してもらうけど、メカニックがいつでも居る環境ってまずないからね。ある程度、何かがあってもMSを動かせるくらいにはなっているよ。その途中で落とされたりする可能性もあるけど」 「...ふーん」と面白くなさそうには相槌を打った。 ホットミルクにブランデーを少し落とす。 「で、ちゃんは何で出てきたの?オレが居ること、ユーヒさんに聞いてなかったの?」 「たぶん、聞いてる。忘れてた」 正直だな、とラスティは苦笑した。 は脚立の足元にぺたりと座る。 どうしたんだろう、とラスティはホットミルクを持ってそちらに足を運んだ。 「直さないの?」 「ああ、うん。先に直そうか」 ミルクを置いて、ラスティは脚立に昇った。 脚立の上から一々降りて工具を取っていると、「言って」といわれた。 「んー?」 「どれが要るのか、言って。渡すから」 おや、親切。 彼女の手伝いを一切期待していなかったラスティは「わーお、親切じゃん」とからかう。 彼女はラスティを睨みつけたが、怒って部屋に戻ることをしない。 まあ、手伝ってくれる方が楽だし、とラスティは彼女の手を借りて修理をした。 |
桜風
10.3.1
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