| 次の連休のときにラスティはにディスクを返しに行った。 「ありがとう。次、別の貸してくれる?...・の」 は瞠目した。 「何で...わたし、言わなかったよ?」 「ニコルが聞いたことがあったんだよ。ニコルは音楽に関して外すことはないからね」 何気なく口にした名前。 はまた目を丸くした。 「ニコルって、ニコル・アマルフィ?」 「そう。やっぱり知ってるんだ」 「何で知り合いなの!!??」 何でこうも責められるように言われるんだろう... ちょっと理不尽な思いをしながら「幼馴染みたいなもんだよ」と応えた。 「...ニコルのピアノ好きなの?」 それにしては、この部屋にはニコルのディスクがない。 は徐にベッドの下から大きな箱を取り出した。 まさか、と思っているとその箱から大切そうにディスクを取り出している。 ディスクのジャケットにはニコル・アマルフィの文字がある。 そんなところに仕舞っていたのか... 「とても優しい音色なの」 「うん、そうだね」 「大好き」 「オレが?」 「バカじゃないの?」 だって、こうもまっすぐな瞳で言われたら何となく勘違いしたいじゃないか。 「ところで、・って..親戚か何か?」 おお〜!自分にしては結構婉曲的な質問の言葉だ。 ラスティは自分で自分に花丸をあげる。 「...ママよ」 「と、いうことは...ユーヒさんの元奥さん?」 あれ?これって突っ込みすぎたのかな?? 「おとうさんは..ユーヒ・は..叔父さんなの」 ...つまり。えーと... やっぱり突っ込んで聞きすぎたってことになりそうだ。 「ごめん」 「...ママは、病気で亡くなったわ」 『病気』なんて単語、とても珍しい。普段の生活で聞くことは滅多にない。 「ニコルが、・のディスクを手に入れようと思ったら月かヘリオポリスに行かないとムリだったって...」 「ナチュラルだからね」 だからは戦争をするザフトが嫌いだったのだろうか。母の同胞..ナチュラルが同胞なのは母親だけだろうか。 「も?」 何か、もう最後まで聞いてしまえと思ってラスティは半分やけっぱちになって質問を重ねる。 「たぶん、ね」 「『たぶん』って何で?あ、言いたくないときはちゃんと『言いたくない』って言ってね。どのラインまで聞いていいかちょっと分かんないけど、疑問は解消したいってのが今の正直な気持ちだから」 「バカがつく正直ね」とは呆れた口調で言う。 「美徳だよ」 「正直が美徳なのは『バカ』がつかないレベルまでのはずよ...わからないの」 『分からない』というのは、どのレベルまで聞かれたら不快かどうかってのが分からないのだろうか。 いや、それはないな。いつもラスティの余計な一言には不快そうにしているから。 ということは... 「自分がナチュラルかどうか分からない、ってこと?」と確認すると頷く。 「そもそも、父親が誰なのかわからないの。ママは最後まで教えてくれなかった。おとうさんも散々聞いたらしいんだけど、教えてもらえなかったって...遺伝子を確認したら分かるとは思ったんだけど、それどころじゃなかったし、知るのが怖かったし。それにあの時勢の中、ナチュラルがプラントに居るってのは危険でしょう?」 もしかしたら、以前男が嫌いって言っていたその原因もそこにあるのだろうか。 これは、流石に聞かないことにした。 「今度さ」 ラスティが意識して声のトーンを変えた。 「今度、たぶんそう遠くない未来にニコルがコンサートを開くと思うよ。聞いたら、半年以内には開きたいって言ってたし。のこと、招待してくれるって」 ラスティの言葉には目を丸くして、そして嬉しそうに笑った。 「ホントに?」 「ニコルはそういう約束破らないし。延期ってのは、まあ、仕事の都合であるかもしれないけど、招待ってのは確実」 ラスティの言葉にはそわそわとスケジュール帳を眺め始める。 いいなぁ、ニコル。 こうも簡単にを喜ばせることが出来るんだから。 こんなことならピアノ、もっと一生懸命血を吐くくらい練習すればよかった。 今更思ってもどうにもならないことを思いながらラスティはの笑顔を眺めた。 |
桜風
10.5.1
ブラウザバックでお戻りください