| 息子に虚仮にされた。 ジェレミーは頭に血が上る。 ラスティとしては虚仮にした覚えはないし、そのつもりもない。 だが、必要以上に高いジェレミーの矜持を傷つけたのは、今になってだが理解した。 発言する前に一呼吸入れるのを忘れていた。 「、ごめん」 先に謝る。 は何故謝られたのか全く分からなかった。 だが、その後すぐに理解した。 傷つけるために紡がれた言葉。それがたくさんジェレミーの口から溢れてくるのだ。 ラスティを傷つけるもの以外に、彼の母親。そしてユーヒ。 しかし、ラスティもこれ以上口応えするわけにはいかない。下手に最高評議会議員を怒らせると色々と面倒なことになる。 特に、根に持つタイプのジェレミーが相手となると、我慢をしなくてはならない。下手に口応えするとに迷惑をかけることになる。 「私の息子に何か?」 何で来るんだ!とラスティは心の中で毒づいた。 やってきたのは母とユーヒだった。 「中々の家に取り入ったな」 「そういう見方しかできないのですね、相変わらず」 怒りをこめたその眸でジェレミーは元妻を睨みつけた。 はどうしていいかわからず、周囲を見渡す。 「ダメだよ」 ラスティが暖かい彼の手での目を覆った。 「なんで?」 不安そうな声でが言う。 たぶん、ニコルやディアッカもちろんイザークはや自分が助けを求めたら助けに来てくれると思う。 だが、下手をすれば彼らの『家』に迷惑が掛かる。 彼らはたくさんの柵の中に生きているのだ。昔は自分もそうだった。だから、それがとても面倒なことなのは良く知っている。 「大丈夫、大船に乗ったと思って?」 さっきみたいに軽口を返す余裕はもうないようで、はコクリと頷いた。 を庇いつつ母を庇おうとしたら、それはユーヒによって制された。 『彼女は私が守るよ』と彼の瞳が言う。 何となく寂しい喪失感のようなものを覚えたが、とても安心できた。 妻の前に立つユーヒ。 彼を見て、ジェレミーは鼻で笑った。 「金持ちに取り入って業績を上げているようだな」 「そのように解釈されていても構いません。ですが、私の妻や子供たちを傷つけるのはやめていただきたい」 『子供たち』という言葉には、自分が含まれている。 ラスティは何だかくすぐったい気持ちになった。こうして利害を抜きにして父親に守られたことはない。 血は繋がっていないのに、それでもどっちが『家族』かと問われれば、こちらだと思った。 「ジェレミー、そろそろおやめなさい。恥ずかしい思いをするのはあなたよ」 割って入った声にラスティは絶句した。 も同じく絶句する。 「あなたの息子を今すぐ会場の中から探し出してみせます!」と宣言して確実にそれを遂行できる自信がある。 今まで顔を見たことはない。ラスティの父親について興味を持って調べたときに名前だけ見て覚えた。 『エザリア・ジュール』 彼女が助けてくれている。 「エザリア...」 バツが悪そうにジェレミーは目を伏せた。 「向こうでお前に挨拶をしたがっている人たちがこちらに注目しているぞ。いいのか?」 さらにやってきた同僚が続けた言葉に溜息をつき、「ジョウイ、来い」と今の息子を引き連れて去っていった。 「エザリア、ありがとう。タッドも」 「ありがとうございます、ジュール議員。エルスマン議員」 母とユーヒがエザリアに礼を言う。 ラスティは思わず振り返った。 ヒラヒラとディアッカが手を振っている。 今度何か奢らないと... ラスティは軽く手を上げて彼らに答え、小さく頭を下げた。 |
桜風
10.7.1