| 「行ってきます!」 ラスティの休暇の日、は一緒にショッピングに出かけることにした。 ラスティから誘ったのだが、こうも簡単に頷いてくれるとは思っていなかったので思い切り肩透かしだった。 しかし、両親がそうなるように状況を作っていたらしい。 今日はの誕生日だが、両親は仕事で家を空けるという『設定』になっているらしい。 「何処に行くの?」 「んー、コンパクトに何でもあるところ」 そういったラスティの言葉に「どこだろう」とはワクワクしていた。 自分は知らないことが多い。 だから、何でも新鮮だ。 最近そう思うようになった。感動なんてそこら辺にゴロゴロしている。 部屋に引きこもっていたあの時間がもったいなかったと今更ながらに後悔しているのだ。 着いた先はマイウス市で最も大きなショッピングモールだ。 「人ごみ、大丈夫?」 「わかんない」 こんなたくさん人が居るところは正直初めてだ。見ただけで何だか気持ち悪くなってきた。 「ムリだったらちゃんと言ってね。避難できるところ探すし、休憩しながら動けばいいし。時間はたっぷりあるんだし」 ラスティの言葉に意を決したようには頷いた。 気合を入れて足を踏み出す。 と、そのとき。自分の手に自分以外の温度を感じた。 「はちびっ子だから迷子になったらちょっと見つける自信ない」 ラスティの言葉にムッとなった反面、何だかちょっと嬉しくて文句を言うのはやめた。 「仕方ないわね。ラスティが迷子になったら大変だもん」 代わりにそう言う。 「そうだね。がビービー泣いちゃうからね」 と返されて膨れっ面になった。 「おお、中々膨らむね」 笑いながらの頬をつつき、ラスティはの手を引いてたくさんの人が居るモールへと足を進めた。 ラスティが迷わずに行ったのは高級ブランドが並ぶブロックだった。 引きこもりのでも知っているそのブランド名にはおっかなびっくりだった。 「今度ニコルのコンサートがあるだろう?それで、ドレスを新調したらどうかな、って」 「え?!」 まさか、自分の買い物だとは思わなかった。 「青以外ね。青はステキなのたくさん持ってたから。デザインもいろいろあったし」 ラスティにそういわれて何故それを知っているのか、と聞きかけて以前クローゼットを勝手に開けられたことを思い出した。 「でも、高いよ...」 「気にしないの。オレだって、稼いでるんだし。、今日が誕生日って聞いたし」 伺うように自分を見上げるに苦笑して「このブランドって良いらしいよ」と言いながら手を引いて店内に足を踏み入れる。 「いらっしゃいませ」と声をかけてきた店員たちは何だかこちらを伺うように少し警戒したような表情を浮かべた。 「マティウス市の代表のエザリア・ジュール様がこちらのブランドを勧めてくださったんですけど」 ラスティが言う。 エザリアの名前が出た途端、彼女たちは蒼白した。 慌てて丁寧な接客を始める。 「ブランドって、物以外にもあるってのは知ってた方がいいよ?」 こっそりとラスティはに耳打ちをした。 確かに、自分たちだけだったらここまで待遇はよくないだろう。エザリアの名前が効いているに違いない。 しかし、エザリアの名前が出るまでと出てからと待遇が違うのは問題ではないだろうか。 そんな疑問を胸にしまって店内を見渡す。 エザリアが勧めるだけあって、デザインがとても落ち着いていて大人っぽい。 でも、今の自分が着たらどうだろう... 「、これは?」 そう言ってラスティが1着持ってくる。 デザインは落ち着いているが、他のデザインのものに比べて『大人の女性』というイメージからは少し遠い。 たぶん、色がオレンジで明るいというのもそのデザインの落ち着きを少し緩和してくれているのだと思う。 「着てごらんよ」 ラスティに勧められるとおり試着してみた。 「もうひとつ小さいサイズ、ありますか?」 には少し大きいようだ。 ラスティが言うと今、この店には無いといわれた。 「どうする?また来る??」 ラスティが聞くとは躊躇いがちに「ラスティ、また時間取れる?」とたずねる。 ラスティは目を丸くしてそして「いいよ」と笑った。 |
桜風
10.9.1