| 家に帰ると、家の中からたくさんの人の気配がした。 みんな都合をつけてきてくれたんだ... そんなことを思ってを促して家に入る。 時間はちょうど。オレって凄い!! そう思ってに続いて家に入った。 「おふくろ!」「母上!」「母さん!!」「...何してんの」 パンと賑やかな音がした。クラッカーだ。 そして、息子たちに怒られた母親4人。 彼女たちはに向けてクラッカーの紐を引いていた。 は目を丸くしている。 たぶん、普通だったら痛い思いをしているはずだ。 だけど、ちっとも痛くない。目の前に何かが飛んできたのは何か視界に入ったから知っている。 でも、今目の前にあるのはラスティの手の甲だった。 「危ないだろう!?」と、ディアッカが母親を叱る。 「だってぇ...」 「だってじゃない。ちゃんが怪我でもしたらどうするんだよ」 呆れた口調でディアッカが言う。 「ラスティがいるから大丈夫だと思ったのよ」 実際、の元へと届いてしまったクラッカーの蓋はラスティが受けたためには当たらなかった。 「そりゃ、大丈夫だけど。危ないことには違いないし。人に向けてクラッカーの紐を引いてはいけません、って書いてるでしょ」 やっぱり呆れたようにラスティがいい、自分の母親を見た。彼女はさらりと視線を逸らす。 深い溜息をつき、「ま、入ろう」とラスティがを促した。 「あ、あの..これ...」 「今日が誕生日って聞いたし」 さっき同じ言葉を同じ人の口から聞いた。 「え、何?!...あれ??」 「さんのバースデーパーティです。ご両親が企画立案、ラスティ全面協力の下、僕たちはご招待されたんですよ」 ニコルに説明を聞いては驚いて両親を見た。 母は照れくさそうにしているが、父は満面の笑みだ。そして、ラスティを探すと既にダイニングに向かっていた。 「ミートパイ、たくさん作ったからね」というディアッカの母親に「多過ぎだって、おばちゃん」と笑いながら返している。 「さあ、さん。プレゼントを渡したいわ。行きましょう」 そう言ってエザリアが彼女の手を引いてダイニングへと向かう。 さっきまで賑やかな笑い声が聞こえていたのに、とはキョロキョロと部屋の中を見渡した。 でも、その姿が見えない。 はこっそり部屋を出た。 階段を昇ると出窓のところに腰をかけてラスティは外を眺めていた。 もう外は随分暗い。いつの間にそんな時間になっていたのか... 「主役が抜けてくるのは、やっぱマズイでしょー」 笑いながらラスティが言う。 静かに階段を昇ったつもりなのに... そう思っているとラスティは窓ガラスを指差した。見ると、自分の姿が映っている。 「...ディアッカさんのお母さんが探してたわよ」 「勘弁。アレ以上ミートパイ食べたらオレがミートパイになっちゃう」 笑いながらラスティが言う。 「どう?初めてのバースデーパーティは」 ラスティの言葉に照れくさそうには俯いた。 「うれしい」と素直に言葉が漏れる。 「それは良かった。母さんたち、大喜びだよ」 クツクツと笑いながらラスティは言う。巻き込まれた、という表現が最も正確な大騒ぎだった。 彼女の誕生日を祝うのは反対じゃないし、いいことだと思う。大賛成だ。 けど、規模を大きくしすぎだ... 「、おいで」 そう言ってラスティが手招きをした。 何だろう、とは首を傾げてラスティの元へと足を向ける。 「はい、向こう見てて」 そういわれて窓に向かって立たされた。 「なに?」 ラスティが立っているのは自分の後ろだから、何だか不安だ。何をされるか分からない。 「誕生日おめでとう」 そう言ったラスティに驚いて振り返ろうとしたが、頭を掴まれて顔を動かせない。 「...ありがとう」 「誕生日プレゼント」 そう言ってラスティの腕が自分の胸の辺りまで伸ばされた。 びっくりしているとシャラッと音がした。目の前の窓ガラスを見た。 ネックレスのようだ。 「使い方的にはちょっと間違ってるかもなんだけどね」 笑いながらラスティが言う。窓ガラスでは色が良く分からない。 ネックレストップに手を伸ばしたが、ラスティに阻まれる。 「。誕生日プレゼント、何貰ったの?」 「えーと、エザリア様からはドレスで...」と指折り数えながらは先ほど貰ったものを口にする。 とても嬉しそうに。 「ねえ、。知ってる?」 は首を傾げた。 「母さんってとオレはたぶんうまくいかないんじゃないかって思ってたらしいよ。だから、オレはマッケンジーでいいって」 「へ?!」 頓狂な声が漏れる。 「まあ、確かに。中々うまく行きそうにないよね」 ケタケタと笑う。 何か、これって..恋をする前に失恋って言う感じだろうか。 ラスティの笑い声に何となく傷ついた。 「とりあえず、子供には手を出さない宣言してる手前、やっぱりね...」 楽しそうに、笑いながらラスティが言う。 つまり、それは... 「まずは、が大人にならないと。ね?」 「大人だよ」 「無駄に年を重ねただけじゃ大人にならない。色んな経験をして、たくさんのものを見て、感じてゆっくりと大人になれるものなの。、それが全然まだでしょ?」 言い返せない。 は俯く。 「」と一層優しい声が耳に届く。 振り返る。 さっきみたいに阻まれることはなかった。 その代わり、目の前には夕闇の中の青空があった。ラスティの顔が至近距離にある。 びっくりして目を瞑ると頭上でチュッと音がした。 「ほら、戻ろう」 「こ、子供には...!」 頭を擦りながらは訴える。頭にキスされてしまった。 「ははっ。これくらい手を出したうちに入らないって。挨拶だよ、挨拶」 からからと笑いながらラスティが階段を数段下て「お手をどうぞ?」と手を差し出した。 は真っ赤になりながら自分の手を重ねた。 「いつかぎゃふんって言わせてみせるんだから!」 古臭い表現をするんだなー、と思いならもラスティは「ぎゃっふーん」と笑いながら言う。 「もう!」 ムキになるにまたラスティは笑う。からからと楽しそうに。 の胸にはネックレスに通してある羽がモチーフのリングが躍るように跳ねていた。 |
桜風
10.9.1