| ふと気が付くとそろそろ日付が変わる時間になっていた。 イザークは本を閉じて手元の電話を一応見てみたが、特に着信があったとの経歴はない。 昨日電話するとか言っていたと思うのだが...と思いながら本を枕元において寝る姿勢に入ったところで着信があった。 ディスプレイを見てそのまま通話ボタンを押す。 『キャハハハハ!!』 壊れてる... 電話の主は・。イザークの最愛にして、ちょっと困ったところのある恋人だ。 はお酒を一定量以上飲むと突然壊れる。 それが楽しいらしく、友人たちは遠慮なく飲ませる。 実際、自分も第三者だったらそこそこ楽しむと思う。だが、残念ながら第三者ではない。 なので、一緒にいるときはイザークが気をつけてみているからそうなることは少ないが... 今回は誰が一緒だったのだろう?盛大に文句を言ってやりたい。 イザークは電話から顔を離して溜息をつき、気持ちを切り替えて「もしもし」と声を出した。 『イザーク!』 「ああ、どうした。今日は一段と...」 壊れているな、という言葉は敢えて言わない。 『イザーク!』 「どうした?」 この状況になったは怒っても仕方ない。ああ、自分も全く大人になった。 『あのね、あのね...』 「ああ、なんだ?」 促したイザークは5秒ほど待ってみた。 が、続きが出てこない。 寝たのか? 家で電話をしているとは時々そのまま寝てしまうことがある。 なので、今回もそれかと思ったが、耳を澄ませて聞いてみればの背後からは雑踏の、少しざわざわした音が聞こえる。 街中で寝るのは危険だと思い、慌てて「」ともう一度名前を呼ぼうとして口を開けた途端 『たんじょうびおめでとー!!』 といわれた。 時計を見て確認するとちょうど日付が変わった。 もしかしたら時間を見ていて沈黙したのかもしれない。人騒がせな、と思いつつもやはり少しくすぐったい。 「ああ、ありがとう」 イザークの返事に電話の向こうのは満足そうに「うふふ」と笑っている。 「、今どこだ?」 『ん?』 「迎えに行く。どこだ?」 そういいながらイザークは手早く着替えていた。 『えー、いいよ。遅いし』 「今ので目がさめた。というか、オレがに会いたい」 電話の向こうでは「うへへ...」としまりのない声で笑っている。 『ねえ、イザーク』 「なんだ?」 家を出て車に乗り込んだイザークは車のキーを挿しながら返す。 『わたし、幸せだよ』 少し不意打ちを食らったような気がしたが、イザークは「オレもだよ」と返す。 チュッと電話の向こうで音がして少し驚いて思わず電話を耳から離す。 『...イザーク、硬い冷たい』 「それは電話だ」 まだ相当酔っ払ってるようだ。 「むー...」と電話の向こうから聞こえる不満そうな声に「あとでいくらでもしてやるから。とにかく、今はどこにいるんだ?」と声を掛ける。 『いくらでも?』 「が満足するまで」 「うへへ」とはまた笑い、「えーとねー」とやっと現在地を口にし始めた。 ああ、そこなら車で10分もかからない。 「今から行くから大人しく待ってろよ」 『はーい。イザーク、大好き』 「オレもだよ」 そう言ってイザークはチュッと電話にキスをして電話を切ってアクセルを踏んだ。 |
桜風
09.8.8
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