| ディアッカは医務室に行って応急キットを借りた。 そして自室に戻って新しいタオルを持ち出す。 「何に使うんだ、そんなもの」 部屋に居たイザークに聞かれた。 「に貸すの」 というディアッカの言葉にイザークは眉を上げる。 「随分お気に入りだな」 皮肉を込めてそう言った。 「ま、オレが拾っちゃったみたいなもんだし?」 ディアッカはそう言ってそのまま部屋を後にする。 牢に向かう途中、偶然仲の良いメカニックに会った。 の事を聞いてみると彼は視線をさまよわせる。 「なに、心当たりあんの?」 聞いてみると渋々頷く。 どうやら、はバスターのコックピットに潜り込む際にメカニックとひと悶着したらしい。 ひと悶着と言うか、普通にそのメカニックを負かしたようだ。 それが彼のプライドを傷つけたのではないか、と目の前のメカニックが言う。 「そいつが鈍いだけじゃないの?」 眉間に皺を寄せてディアッカが聞くと 「いや、普通だろう」 「...まあ、暴れると思わなかったのかもしれないな」 「そうかもしれないな。ただ、無性にプライドが高いから、あいつって」 だから、そのプライドを傷つけてしまったを許せないのだろう。 「じゃあな」と言ってメカニックはその場を後にした。ディアッカも牢に向かって足を進めた。 牢に戻り見張りから鍵を借りる。 「、持って来たぜ」 ディアッカの声に反応しては振り返った。 「とりあえず、顔の方の消毒な」 脱脂綿に消毒液を滲みこませてそれを傷口に当てる。が痛そうな表情を作ったが、ディアッカは手を止めずにその顔にある傷を消毒していった。 「はい腕も」と促して袖を捲くらせる。 隠れる分こちらの方が酷い傷だ。骨は折られていないようだ。 「これだと、腹とかにもあるんじゃないの?」 そう言っての着ている繋ぎに手を伸ばしたら頭をはたかれた。 「いってー」と頭をさすりながらを見ると暗がりの中でも分かるくらい顔が赤くなっている。普通に恥じらいとかはあるらしい。 「べつに、の腹を見たくらいじゃなんともないと思うんだけどな」 ディアッカが呟いたが、はその手にある消毒液と脱脂綿を奪い取ってディアッカに背を向けた。 「背中はどうする?」 は首を振る。 本人が嫌がっているなら無理強いする必要はないだろう。この牢の衛生状態が悪いなら無理にでも消毒させた方がいいのだろうが、結構綺麗な場所だから傷口が化膿するほどには至らないと思った。 暫くしてはディアッカに向き直る。消毒が済んだらしい。 「で、これ」と言ってディアッカはタオルを渡す。 はそれを受け取ってスカーフと交換した。 ディアッカはそれを受け取って独房を後にしようとして、足を止める。 「あのさ、。一応、お前の身の安全って保証されるべきものなんだよ。だから、何かあったらオレに言えよ。いいな?」 はディアッカのその言葉に反応せずにそのまままた独房の隅に向かった。 肩を竦めてディアッカは独房の鍵を閉めて見張りに返す。 「国際条約、知ってるな?」 一応念を押してそのまま牢を後にする。 |
桜風
08.6.1