| 医務室に応急キットを返して自室に向かう途中、ニコルに会った。 「ディアッカ!」 「ああ、ニコル」 「さっきの戦闘。データを洗ってたんですけど、ディアッカの戦績随分上がりましたね。動きも今までと全然違うし」 少し興奮気味に彼が言う。 「あー、そうかも。動きやすかったんだよ」 「、ですかね?」 「たぶん...アイツ、バスターの開発チームだったらしいから」 「そうだったんですか!?」とニコルが驚いた。 そういえば、艦長と隊長にはから聞いた話を報告していたけど、他の人にはあまり話していなかったと思い出す。 「らしいぜ。最初、オレもあんまり信じてなかったけど。今日ので信じたかも」 「へー、ブリッツは見てないのかな?」 興味を持ったらしくニコルが呟いていた。 そのままディアッカとニコルは別れ、当初の目的どおりディアッカは自室へと帰った。 夜中、音が耳についてイザークが目を開けるとディアッカがデスクについて何かしている。 「寝ないのか?」 「あ、わり。まぶしかった?」 「寧ろうるさかった。何しているんだ?」 「今日の戦闘データをまとめてんの」 イザークは眉を上げる。いつからそんな勤勉になったのだ? 「ほどほどにな」 「分かってるって」 イザークはディアッカに背を向けるように寝返りを打ち、そのまま再び眠った。 朝起きると向かいのベッドでディアッカはまだ寝ていた。時間的にはもう起きた方がいい。 「起きろ」と蹴っ飛ばして起こす。 気だるそうにディアッカは体を起こして頭を掻いた。 「もっと優しく...」 「起こしてやったんだ。これ以上の優しさがどこにある?」 イザークが返すと数秒間を置いて「そうかも」とディアッカは呟いてベッドから降りる。 「遅くまでデータの整理をするなとは言わんが、体調管理は怠るな」 「お前、母親みたいだな」 「貴様みたいな息子は要らん」 そんな会話をしながら服を着替えて朝食を摂りに行った。 その日の昼にディアッカは艦長に呼び出された。 「先ほど提出されたあのデータの事だ」 「はい」 少し緊張気味にディアッカは言葉を待った。 「隊長が、そこまでいうなら、と許可を出された」 ディアッカ自身もダメ元だったのでこんなにあっさり許可されることに驚いて言葉が出ない。 「ま、お前が責任を持って面倒を見るようにという言葉がついているがな」 「...は?」 「部屋も変えてやるから」 「え?」 「もういいぞ。辞令とIDはすぐに用意する」 艦長に退出を促されてディアッカは敬礼をして部屋を出た。 そして、その扉の前で「あれ?」とまた首をかしげる。 もしかして、貧乏くじを引いてしまったのだろうか? 「貴様も物好きだな」 夕方、イザークが部屋に帰ってきてそう言った。 「何?」 よく分からないので詳しい説明を求めると来客を告げるブザーが鳴る。 開けるとそこにはニコルが立っていた。 「え、どうした?」 しかも、大荷物を抱えている。まるで引っ越してきたかのような... 「僕、今まで同室の人が居なかったから」 と的を得ない返事をされた。聞きたいのはそういうことではなく、ニコルのその荷物だ。 「あれ?艦長から聞いてませんか?部屋を変えるって。僕とディアッカが入れ替えです」 「...オレ、誰と一緒の部屋?」 「やだな、さんですよ」 笑顔で言うニコルに絶句する。 予想してたけど...! ディアッカは天を仰いだ。 「こうなることくらい何となくでも予想できただろうが」 呆れたようにイザークが言う。 ディアッカは昨日の戦闘データを元に、がバスターのメカニックとして認められないかと提案したのだ。 元々、から得た情報は隊長と艦長に報告しているため彼らは彼女がバスターの製作に携わっていたのは知っている。 そして、彼女は成果を出した。 勿論、あの戦闘だけだから彼女のお陰かなんてのは分からない。 だがそれを証明するには彼女がバスターの整備を続ける必要があった。そして、それをしても良いと言う許可が降りなければ不可能だ。 彼女は志願しているわけではないのでザフトという扱いにはならないが、バスターのメカニックと言う立場は許可された。 今は、そういう状況になったのだ。 「んま、せいぜい頑張れ。貴様も女の趣味が変わったな」 イザークはそう言ってディアッカを部屋から追い出すように手を振った。 「や、そういうんじゃなくて...」とディアッカはイザークに言葉を向けていたが、「あ、まだ僕の荷物があるのであとでまた部屋に行きますから」とニコルが言ってそれを邪魔する。 あれよあれよと言う間にディアッカは部屋を追い出されて廊下に立っていた。 「マジで...?」 呟いても誰も答えてくれない。 深い溜息を吐いて重い足取りで元ニコルの部屋へと向かった。 |
桜風
08.7.1
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