stray cat 15





休暇はあっという間に終わった。

けど、休暇があと何日で終わると数えているのは終わるのが嫌だからではなく、終わってからも楽しいことがあるから。


「ただいまー」

部屋に入るとがいた。

<おかえり>

「ドック?」

<今戻ってきたところ>

それなら良かった、とディアッカはに袋を渡す。

はぽかんとディアッカを見上げた。

「何が欲しいって聞いても答えなかったから。適当に買ってきた」

は驚いた表情でパクパクと口を動かした。何か言っているのかと思って唇を読んでみたが、言葉が出なくて動かしているだけだと気づく。

そう多くない荷物を置いて上着を脱ぐ。

がディアッカの腕を掴む。

「ん?」

<要らないって...>

「あ、それ却下」

あっさりそう言われてはぽかんとした。

「スカーフだよ、それ。の好みが分からなかったからいろんなデザイン買ってきた。好きなの巻けよ。スペアがあるほうがいいだろう?」

が袋の中身を出さずに覗き込んでいるとブザーが鳴る。


ディアッカが応じると同期が揃ってドアの外に居た。イザークでさえその場に居る。

「どうした?」

「ディアッカに用事があるんじゃないんです」

さらりとキツイことを言ってニコルが部屋の中に入ってきた。

さん、お土産です。これ、僕の住んでいるコロニーでとても人気なんですよ。ロールケーキ。甘いの大丈夫だって言ってましたよね」

「あー、じゃあ。俺メチャクチャタイミングが良い!俺紅茶。お袋が言うには美味いらしい。お茶の味は良くわかんないけど。これでケーキ食おうぜ」

そう言ったのはラスティだ。

先日会ったばかりの彼が何故お土産なんて思ったのだろう?

が聞こうと思って端末を立ち上げようとしたが

「あ、言ってください。僕が訳しますよ」

とニコルに言われた。じゃあ、と先ほど思ったことを言うと

「だって、俺らが休暇中には俺の機体も整備してくれてたんだろう?お礼だよ」

と何言っての?といった表情で返されて困惑した。

「じゃあ、俺からも」とアスランが言って丸い物体を渡してくる。

「機械が好きだって聞いたから」と言葉を添える。

それは突然ぴょんぴょん跳ね始めた。

「お前、どれだけ作ったら気が済むんだ?」

呆れたようにディアッカが言う。

と言うことは、彼はこれに似たものを大量生産しているということだ。

だが、は結構喜んでいる。

「解体するなよ」

一応、ディアッカが釘を刺した。

目に見えてがっかりするに苦笑を洩らす。こういうものを見たら解体したくなる性格だと思ったが、その通りだったようだ。

「今度、図面をやるよ」

は嬉しそうに頭を下げた。

そして、皆の視線がイザークに集中する。

イザークは少し怯んだが、そのまま持っていた袋をに渡した。

中には古い本が入っていた。

「前に、聞いたことがるけど見たことがないと言っていた本だ。機械工学の。馴染みの古書店に置いてあった」

は急いでその本を取り出した。

本当に、自分が求めていた本だ。

嬉しくてその本を掲げながらクルクルとその場を回る。

「ムカつくことに一番喜んでますね」

ニコルが面白くなさそうに呟く。

「ヘリオポリスにもなかったのか?」

眉間に皺を寄せてイザークが言う。

「そうだよな。ヘリオポリスになくてもオーブからも取り寄せられたんじゃないか?」

ラスティが続ける。

<探したんだけど、結局注文する術がなくて。本の存在は聞いてたんだけど、絶版だし。ヘリオポリスの古書店にはなくて。古書店の本って足を運ばないと手に入らないでしょ?>

「まあ、確かにな」

よく足しげく古書店に通っていたイザークは同意した。

「ああ、それと。その著者の本が他にもあったから一緒に入れてるぞ」

イザークが言うとは嬉しそうに目を輝かせて勢いよく頭を下げる。

それを面白くなさそうに見ているのはディアッカだ。

何だ、自分のが一番喜んでもらえなかった。

の喜ぶ表情を想像して買ったのに、それは殆ど全てイザークに持っていかれた。

せっかくカウントダウンして戻ってきたこの部屋なのに、何だか全然楽しくない。

子供みたいに拗ねている自分に気づいてディアッカは溜息を吐いた。









桜風
08.11.1


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