| 出港の日取りが決まった。 それが決まればあとは慌しくなる。 ばたばたと時間に追われる毎日を送っていた。 「、顔色が悪いぞ?」 昨日からの顔色が悪い。疲れているのかと昨日は強制的に早く寝させた。 が、今日も起きてからずっとふらふらしているようだ。 「休ませてもらったら?お前休暇なしだったんだし。許可下りると思うぜ?チーフに話してやろうか?」 ディアッカが心配そうに聞く。 は首を振った。 今のうちにやっておきたいことが沢山ある。特にヴェサリウス組の機体は、今の内に弄っておきたい。 「まあ、体調管理はきちんとしろよ」 ディアッカは渋々そう言って自分の訓練のために部屋を出た。 確かに、ディアッカが言うとおり体調は悪い。 しかし、コーディネーターは病気にならないのがウリだ。今、ここで病気というものに罹るわけにはいかない。 だが、一応気にもなる。 は重い足取りで恐る恐る医務室に向かった。 ドクターがいないのを確認して体温計を使う。 今まで見たことの無い数字が表示され、どうしよう、とうろたえた。振り返ると薬品棚がそびえ立っている。 ゴクリとつばを飲み、方目を瞑ってその薬品棚を見上げた。 どれを見ても同じに見えるし、やはりコーディネーターの乗る艦に風邪に効くというような薬なんて置いていないだろう。 しかし、このままでは同室のディアッカに得体の知れないこの病気らしきものを移してしまうかもしれない。 これだけお世話になっているのに、さらに迷惑を掛けるのか... それは避けないと。 だったら、どうする...? の頭に浮かんだのはただひとつだった。 「なー、ってば体の調子が悪いんだろう?早く寝ろって」 夜中に目を覚ますとが端末を立ち上げてなにやら作業をしている。 ディアッカに声を掛けられて振り返り、手を合わせた。ごめん、と。 「無茶すんなよ」 彼女は強情だから言っても無駄だと悟りきっているディアッカは一応そう言って再び眠りについた。 朝起きると隣のベッドは綺麗に整えられていた。 大体起きる時間が同じだから、彼女は洗面所にいるか、ベッドの上でボーっとしているかのどちらかが常なのに。 変なの、と首をかしげながらシャワーを浴びるべくバスルームに向かった。 シャワーを終えてそのまま昨晩の作業していた端末の前に足を進める。 「何、これ...」 そこにはディスクと折りたたまれたメモ用紙が一枚。 嫌な予感がしつつもそのメモを開く。 『さよなら。ありがとう』 その文字を見て頭の中が真っ白になった。 何だ、これは... ドアのブザーが鳴る。 まだ思考が停止したままだが、それに応じて出た。 「公安部の者だ。・が脱走した。彼女はザフトの機密事項をいくつも目にしている。彼女はどこに行った」 そう言われて何が何だか分からない。 ディアッカはと同室で、一番親しい者だと言うことで拘束された。彼女の脱走を幇助した疑いがある、と。 「ディアッカ!?」 公安部の人間に連行されるディアッカの姿にイザークが声を上げる。 「何?どうしちゃったの??」 にMSのことで相談があったため、ラスティとアスランもこちらに来ていた。 「が、居なくなった」 ディアッカがラスティの言葉に反応して呆然とそう呟く。 その一言で今のディアッカの状況を把握した。 イザークは溜息をつき、ニコルとアスランは視線をあわせる。ラスティはニッと笑った。 最初に動いたのはイザークだ。 ディアッカの前を歩く公安部の人間の鳩尾を打つ。 後方の者はラスティがやった。 呆然とするディアッカに「は責任を持って貴様が連れて帰って来い!」とイザークが言う。 状況が把握できないディアッカの腕をニコルが掴んだ。 ラスティが「ほら!」と公安の懐からディアッカの手錠の鍵を取り出して投げて寄越す。 それを受け取ったのはアスランで、「走れ」と言った。 訳の分からないままディアッカは走り始め、一度振り返る。 イザークとラスティがクルーに取り押さえられていた。 2人はディアッカを見ていた。「行け」と言っている。声を出さなくても伝わる彼らの意思だ。 基地を出るときにはディアッカは独りになっていた。 ニコルもアスランもディアッカを逃がすために力を貸してくれた。 「...」 納得出来ない。 本人を探し出して、姿を消した理由を聞く。 そして、必ず連れ戻す。 自分を逃がしてくれた仲間たちに報いるのはこれしかない。 彼女がどこに行ったかは分からない。 だが、公安が見つけるまでに彼女を見つけなければ庇ってくれた仲間たちの行動が無駄になってしまう。 「...」 もう一度呟く。 彼女の声は自分の耳には届かない。それでも、きっと見つけられると思った。 |
桜風
08.12.1
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