| 「ほら、これでいい?」 あのショッピングから2週間が経ってラスティが邸にやってきた。 母に頼まれていた書類をテーブルの上に置いた。 「ありがとう。ラスティは、どれがおススメ?」 「今度の留学生を受け入れる学校は此処だってさ」 そう言っていくつか持って帰ったパンフレットの中からひとつを取り出した。 「あら?此処って」 「施設、設備共に悪くないよ。寮もあるし」 そう言ってテーブルから離れてソファに座る。そのままごろりと寝転んだ。 「ちょっと、ちゃんと説明してよ」と母に言われるが、「オレ、超お疲れ様」と返して動こうとしない。 ラスティがやってきたことを知ってが自室から出てきた。 「ラスティ?」 ソファからはみ出している足だけが見えた。 「おかえり」とがラスティの顔を覗きこんで言う。 「うん、ただいま。オレ、超お疲れ様なんだ」 「...じゃあ。ホットミルク飲む?」 が言うと「ハチミツのやつね」とラスティが返す。 「わかった」と言ってがパタパタと駆けていった。 「どうしたの、仲良しさんね」 からかうように母が言う。 「兄貴が妹と仲が良くて何か問題でも?」 ラスティの言葉に母は苦笑した。 あのカフェでの小休止の後、また母達は買い物に興じ始める。 彼女達のストレスの発散方法とはいえ、自分たちにストレスが溜まるというものだ。 「で?は何故あんなことを?」 「さあ?オレもイマイチわかんないんだけど。やっぱりちょっと気になるんじゃない?周りと自分が違うってのが」 「そーゆーもんかなー」と呟いたのはディアッカだが「仕方ないだろうな」とアスランが頷く。 ナチュラルとコーディネーターだったらやっぱり体のつくりと言うか、元々の身体能力が違うからイザと言うときにやっぱりそこで差が出るし、それが気になっていたのかもしれない。 でも、それは周りでフォローできる体制が出来ているんだから気にしなくても良いだろうに... 不思議だなーと皆が首を傾げていた。 「や、寧ろお前らが不思議だよ」とラスティは苦笑した。 「なんで?」 「イザと言うときのフォロー体制まで考えて行動してる人って意外と少ないと思うよ?」 「僕達はアカデミーを出てますから。やっぱりすぐにそういう考えに行き着いてしまうってことですよね、きっと」 まあ、そうだなーと皆は思った。 どこか新しいところに行ったら避難経路とかすぐに考えるし、部屋の中に入ってもドアと窓がいくつで、ダクトが何処にあって、ということを確認してしまう。 「一種の職業病だな」 イザークの言葉に皆は納得して頷き、苦笑を漏らした。 「できたよ」 湯気が立っているマグカップを目の前に差し出されてラスティはソファに座った。 うとうととしていたようだ。この間の悪夢の8時間ショッピングを思い出していた。 「ところで。は、どんな学校行きたいの?」 マグカップを受け取ったラスティがそう訪ねてみた。 「どんな?」 「専門的な教育を受けたいのか。それとも、『学校』に行きたいのか。目的が違ったら行く学校も違うからね」 ラスティに言われては考える。 「勉強に行くんじゃなくて、世間を見に行きたい」 「んじゃ、専門性は飽くまでオマケだね」 そう言ってラスティが振り返る。母と目が合うと彼女は頷いた。 「ちゃん」と母が呼ぶ。 「なに?」と返事をしてはテーブルに向かった。 ああ、何だ。やっぱり若さだね... そう思いながらホットミルクを飲み干してマグカップを床にそっと置いてまたソファに寝転ぶ。 またしても瞼が重くなってきた。 いつの間にか、彼女は母と親子っぽくなっている。敬語もすぐに抜けるだろう。 敬語を使っているとやっぱり何処までも他人っぽくなるもんなー... ユーヒに対して基本的に敬語を使っている自分はどうにも『他人』だな。 学校のことを話していたら、寝息が聞こえてきた。 「ちょっとごめん」と言ってはソファを覗きこんだ。そして、パタパタと部屋を出て行く。 「あらあら」 ラスティの母は楽しそうに呟いて目を細めた。 中々良い感じじゃない... 彼女は自分の見立てがそんなに的外れではなかったことに満足して頷いていた。 |
桜風
10.11.8
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