Ever green 4





が選んだのは留学生を受け入れるとしていた学校だった。

『世間』をみるならより多くの異なる境遇で育った人に出会ったほうが良いと考えた結果、そうなった。

意外と考えたなぁ...とラスティは感心した。

今まで外の世界と隔絶した中で生活していたから人見知りは激しいし、会話もさほど得意と言うものでもない。

チャレンジ精神が旺盛なことはいいことだ。

「引越し手伝ってあげてね」

コロニーが違うからやはり寮には入らないと通勤が大変になる。

イヤだなぁ...

ラスティはそう思ったが口には出さない。その先には母親の鉄拳制裁が待っているのが分かっているから。


『巻き込める者は巻き込んでしまえ』

ラスティはそう思って友人達に声をかけて引越しの手伝いを依頼した。

彼らは意外と付き合いがいいから文句を言いつつも手伝ってくれる。

「悪いなー」

「思ってないだろう」

ラスティの軽い言葉にイザークが鋭く突っ込む。

しかし、この引越しの仕切りは何故かイザークだ。いやはや、いい人材を確保したものだ。

「荷解きは自分でするんだよ?」

ラスティが確認すると「当然じゃない!」と怒られた。まあ、プライベートなあれやこれやがあるし、異性に見られたくないものとかるだろうし。

それを慮って言ったのに、怒られた。

ニコルの視線がかなり冷たい。

荷物を全て運び終えて帰ろうと廊下を歩いていると人に出会った。

彼女も引っ越してきたばかりのようだから新入生のようだ。外跳ねの髪に快活そうな印象を受けた。

「こんにちは」とラスティが挨拶をすると「こんにちは」と彼女は愛想よく返す。しかし、その隣にいる赤い髪の女の子には睨まれた。

やっぱ、女子寮に男がいるのがイヤなのか...

しかし、今週は引越しがあるから許可証を首に掛けている人は男でも寮に入れる。

許可証見えないのかな、と掛け直したが彼女の厳しい視線は変わらない。

まあ、いいか。

「ラスティ、行くぞ」

先を行っていたアスランに声をかけられて「うん」と返事をして「じゃあね」と彼女達にも挨拶をしてその場を後にした。



「女子寮、大きくなりましたね」

「大きくなった..んだろうね。寮の敷地内にあった射撃場も潰して増築したっぽいね」

ああ、だから広く感じたのか...

彼らは納得した。

「でも、ニコルが女子寮のことを知ってるなんて意外だったなー」

からかうようにディアッカがいうと

「男子寮とつくりが全く同じだと聞いたことがあったので。ディアッカやラスティのような用事で忍び込んだことはありませんよ」

目は笑っていないがニコリと微笑んで彼が言う。

「懐かしいなー」とディアッカが呟き「オレたちも若かったよね」とラスティが頷く。

そんな2人にイザークは盛大に溜息を吐いて見せた。

「ついでだから男子寮も覗いて行く?」

ラスティの提案に皆は反対しなかった。

今回、留学生を受け入れることにした学校こそ、昔アカデミーと呼ばれてラスティたちが学んだ学校だったのだ。

だから、学校の設備や施設のことは分かっているし、寮にも入っていたので懐かしいのだ。

戦争中はアカデミーが数校あったが、今ではプラントに1校だけとなっている。昔アカデミーだった校舎は、兵士を養成する以外の目的の学校の施設として使われている。

これも、戦争が終わったという目に見える形のひとつだ。

5人は一度車に乗って数百メートル離れている男子寮に向かった。

「何か、雰囲気が全然違うねー」

苦笑した。

昔はたぶん、『殺気』とかそういうのが凄かったと思う。でも、今は『活気』だろう。

そうは言っても。女子寮でも感じたが、どこか空気が張り詰めている。やはりコーディネーターとナチュラルが同じ屋根の下というのが落ち着かないのだろう。

オーブから留学できた人たちはともかく。ずっとプラントに住んでいる者たちにとっては初めての経験で、どのように接していいか分からないのではないのだろうか。

まあ、この間まで命を奪い合っていたんだし...

あの戦争が『終わった』と言っても、心の整理が出来ている人の方がきっと少ない。

「アスラン?」

不意に驚いたような声が聞こえてアスランが振り返ると見知った人が立っていた。

見知った人と言うよりも親友だ。

「キラ?!」

「やっぱり、アスランだ!どうしたの?アスランもこの学校に通ってるの?」

「誰だ?」とイザークが聞くが「さあ?」とディアッカが応じる。アスランの交友関係を全て知っていることなんて出来ない。

「あ、ああ。紹介するよ。キラ。キラ・ヤマト。月の幼年学校で一緒だったんだ」

紹介された少年、キラは「こんにちは」と挨拶をする。

ラスティたちもそれに応じ、アスランはラスティたちも紹介した。

アスランがザフトだと知ったとき、キラは驚いていた。その驚き方が尋常ではない、という印象はラスティが抱いたものだ。

でも、まあ。幼年学校の親友ならそのときと『ザフト』は結びつかないのだろう。

現に、自分だって幼年学校の頃を思い出して自分があの赤い制服を着るようになるなんて思っていなかったし。

「あ、ねえ。キラ」

気安く呼び捨てにされてキラはあっけに取られた。が、それを気にするラスティではない。

「あのさ、同じクラスになるとは限らないけど。って子が今年入学するんだ。ちょっと世間知らずなところがあるけど、良かったら仲良くしてあげてよ」

「あ、はい。僕もこっちに来て色々と不安なところがありますし」

キラはそう言って請け負ってくれた。

おお〜、アスランと同じく人の良い感じだなー...

幼馴染って似るもんだな、とラスティは感心して「ありがとう」と礼を口にした。









桜風
10.11.16


ブラウザバックでお戻りください