Ever green 12





ラスティが居なくなり、先ほど父親と名乗った男も居なくなった。

ふらりとやってきたラスティはを守ってそのままどこかへ行ったのだ。手に持っていたのは、あの男がジェレミー・マクスウェルの息子が示したという証明書と研究所の出した公式な文書。

、大丈夫か?」

呆然と立ち尽くしているにカガリが声を掛ける。

は駆け出した。

「おい、!待て!!」

そんな声が耳に届いたが、今は足を止める気にはならなかった。

通りで車を拾って、場所を口にする。

今日、パーティがあるから休むとラクスが言っていた。場所も彼女が言っていた。

覚えている。

運転手に告げてなるべく早くそこに着くようにと頼んだ。

だが、運の悪いことに渋滞に嵌ってしまう。運転手が悪いわけではないと思う。

この状況ならもしかしたらラスティも嵌っているかもしれない。

それが浮かんでふと思った。何故自分はラスティを追いかけているのだろうか...

しかし、追いかけなくては、と思った。追いかけて止めないと大変なことになりそうだと思ったのだ。

ラスティを追いかけて止められるかどうかは分からない。

「そうだ」と呟き、モバイルを取り出して電話を掛けてみる。

『はい』と出てくれたのはニコルだ。引越しの手伝いをしてくれた彼らの番号は聞いている。

がラスティからモバイルをもらったと話すと彼らも番号を教えてくれたのだ。

「ニコルさん!ラスティ、居ますか?」

『え?あー、いえ。居ません。今日はそういうパーティではありませんし。どうかしましたか?』

ガヤガヤと言う音が遠ざかっている。室外に出たのだろうか。

「今、たぶん怒ったラスティがそっちに向かっていると思うんです。えーと、マクスウェル議員もそこにいるんですよね?」

『ええ、いらっしゃいますよ』

「えーと、息子さん..ジョウイさんでしたっけ?」

『ええ、ジョウイ殿もいらっしゃっていますけど...何かあったんですか?』

を落ち着かせようとしているのか、声音がいつも以上に柔らかく、話す言葉の早さもゆっくりになっている。

「あ、えっと...」

何処から話したらいいのだろうか。

混乱しているとニコルの背後のガヤガヤが少し大きくなった。何かあったのかもしれない。

『まずいですね。ラスティが到着してしまったみたいです』

「え?!お願いします。ラスティを止めてください!!」

切羽詰った声でがそう叫んだ。



ラスティがその会場に入ると一瞬その場が静まった。

何せ、大きな音を立てて扉を開けたものだから何かあったのかと皆が驚いたのだ。

皆の動きが止まっていたので目的の人物を見つけるのは一瞬で済んだ。

「おい」と声を掛ける。

ヘラヘラと笑って振り返ったジョウイ・マクスウェルは、ラスティと目が合うと同時にさっと表情が変わった。

そのままラスティが彼の胸倉を掴む。

「弱い方を狙うってどういう了見だ。クソ野郎」

その様子が目に入っていたディアッカとイザークは顔を見合わせる。何か心当たりはないかとお互い無言で問うたが、どうも把握していないということが分かった。

「ラスティを止めてください」

「は?!」

電話がかかってきたため席を外していたニコルが戻ってきた途端そう言う。

「どういうことだ?」

「僕も把握できないままなんですけど、今の電話はさんからで、ラスティを止めてほしいって」

「まあ、止めた方がいいだろうが...あいつをあそこまで怒らせたあのバカが悪いと思うのは俺だけか?」

イザークが冷ややかに言う。

いや、まあ。自分だってそう思う。

「外にいる。が向かってるんだろう。そっちを止める方が良い」

そう言ってイザークは部屋を後にした。

ディアッカたちはとりあえず一番止めやすい場所までは移動しようと話して声の聞こえる場所まで近付くことにした。


「あの人、全部しゃべってくれたよ。アンタ、自分のしたことが国際法上どういう扱いになるか知らなかったとか抜かさないよな?」

ラスティが低い声でそういった。

「な、何の話だ?!」

「今日、男があの子の通ってる学校まで押しかけてきて、彼女を誘拐しようとしたんだ。この書類を持ってね」

あの男から取り上げた書類を目の前に突きつける。

「アンタ、この研究所の職員買収したんだろう?んでもって、こうやって証明書まで付けて態々その書類に信憑性を持たせて。本人の許可なく遺伝子情報を他人に開示した。これって、どういう罪か分かってるよな?そこまで馬鹿じゃないよな?!」

その話を聞いて「おいおい」とディアッカは呟いた。研究機関内に買収された職員がいると言うことは、自分の父親が色々と面倒ごとに巻き込まれたということになる。

というか、ホントに...

「止める?」

「いいえ。ここはもう二度と立ち上がれないまで突き落とした方がいいでしょう」

ニコルも冷ややかにそう言った。

ラスティが此処に来たのは、が傷つけられたことが原因だ。だったら、ラスティの方が正しい。

に頼まれたことは頼まれたが、今となっては飲めないお願いだ。

イザークが外に出てくれていて正解だ。

ニコルは大きな溜息を吐いた。









桜風
11.1.10


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