Ever green 13





ジョウイ・マクスウェルの胸倉を掴んでいたラスティは突然羽交い絞めされた。

この部屋の警護に当たっていたSPがやっと動いたのだ。突然のことで動きが遅れた。

というか、ラスティはその気配に気が付いていたが、反応をする気が無かった。

これだけ大事にしたのだ。あとはせいぜい走り回ればいい。

「その無様な平民を叩き出せ」

ヒステリックにジョウイが叫んだ。

「第一、最初からおかしかったんだよ。コーディネーターこそが至上の存在なのに何故ナチュラルがプラントに共に住んでいる?あいつらと同じ空気を吸っていると思ったら虫唾が走る。あいつらは下等な寄生虫だ。我々コーディネーターが造ったこの世界の利権を吸い取ろうと虎視眈々と狙っている。そんな奴らが、空に上がってくるなんて間違っている!!」

血走った目でジョウイが高らかにそう言った。

「はあ?!」

「手に負えません」

ジョウイ・マクスウェルの演説にディアッカとニコルが心底呆れた。

今、このパーティは何の、誰が集まっているパーティだ。

羽交い絞めされたラスティはジェレミーに向かって口角を上げる。

「良いご子息をもたれましたね。明日からは自分の地盤を守るのが最大の仕事となるんじゃないですか?」

実際そうなるだろう。

人の口に戸は立てられない。

何より、この会場内に自分の政敵もいる。だったら、そいつらがこれを利用しないはずが無い。

ハタと気がつき、ラスティが持っている書類に手を伸ばしたが、その前にタッドが手を伸ばしていた。

「それを、預かってもいいかな?」

「どうぞ。そのために持ってきたので。男は学校の警備員に預けたんでどういう対応をしているかはオレには分かりません」

「...了解した。その子に謝罪を申し入れたいのだが」

「いいえ、結構です。一応話してみますが、断ると思います。ただ、二度とこんな不祥事が無いように」

そう言って、大人しく連行される。連行されるラスティは何の疚しさを感じない堂々とした様子であった。

「役立たずが」

吐き捨てるようにジェレミーは息子、ジョウイに言った。

そして、ラスティが出て行った扉を睨みつけた。

「ただじゃおかんぞ...」


外に出るとイザークとが居た。

「あれ?寮に帰るようにって言っただろう?」

さっきの怒気はなくなっている。はほっと息を吐いた。

「まあ、ついて来てしまったものは仕方ない、か。車を回してくるからちょっと待ってな」

そうに声を掛けてイザークを見た。

「手出し無用、って皆によろしく。あ、あと。オレが戻るまでもうちょい居て」

イザークは軽く手を上げて応えた。

ふとを見るとほっとしたような表情だ。

おそらく、中は今は大騒ぎだろう。招待状を持たないラスティが入り込み、現役最高評議会議員の息子の胸倉を掴んで締め上げていた。

今出てきたときには怒気はない。ないと言うか、上手に隠している。彼はそう言う自分の本心を隠すのが結構得意だ。

だが、自分がおかしいと思い、その許容範囲を超えるものはその信念を曲げない。戦争中も、危うく赤を剥奪と言うところまで強情を張った。

結局そのときは艦長のお陰で減俸くらいで済んだはずだが...

今回だってあれだけの怒りを見せていたのだ。簡単に納められるものではないだろう。

いや、自分の怒り以上の何かを相手に負わせることが出来たのかもしれない。

ラスティはアカデミーにいたときから状況把握が得意だった。成績こそ自分たち5人の中では最も低かったが、それは彼が特にやる気を出しておらず、赤を着れるレベルだったら良いやと思っていたその結果だ。

トップを狙えばもっと上にいけたかも知れない。

そのムラっ気が短所でそのまま評価に繋がることも分かるが...

だからこそ、先ほどラスティが怒っていたことを理不尽な何かだとは思えなかった。

パッパーとクラクションが鳴らされた。

「イザークさん、ありがとうございました」

「ああ、いや。気をつけて帰れよ。ルームメイトも心配してるだろう」

「はい!」と返事をしてはラスティの車に乗り込んだ。

ラスティは「手出し無用」と言った。

それだけの何かが戻ってくると言うことだろう。

まあ、マクスウェル議員の息子の胸倉を掴んだのだから、それなりのことはあるだろうが...

状況が全く把握できていないイザークはとりあえず状況を把握しようと会場に戻った。


「アホか」

今回の騒動の全容を聞いてイザークが冷ややかに言った。

「だよなー...」

苦笑してディアッカが言う。

「しかし、手出し無用とは...」

アスランが唸っていた。今回のはどう考えてもジョウイが悪い。だったら何かなんて無いはずだ。

「マクスウェル議員は国防委員会に所属しているからな」

イザークの言葉に皆も唸る。

ザフトの人事もそこで決まる。下っ端の人事は委員会が決めることではないが、圧力は掛けられる。

つまり、ラスティは何処かに飛ばされる可能性がある。

「まあ、ラスティの性格だとそうなるでしょうね...」

自分が敵とみなした相手はとことん突き落とす。

「今回、飛ばされるんだと思うけど?」

「ここで戻ってきたらそれこそ相手は良い恥じっ掻きですよ」

ああ、やるな。あいつならやる...

皆は同時に頷く。きっと地球に飛ばされて、そして堂々と帰還してくるんだろう。鼻歌とか歌いながら。

自分達の中で、誰を怒らせてもラスティだけは怒らせてはいけない。少なくとも、自分達の中の暗黙の了解だった。

「アイツの本気、拝めるんだなー...」

遠い目をしてディアッカが呟き、皆は静かに頷いた。









桜風
11.1.17


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