Ever green 15





異動の辞令はあれから1週間後に出た。

「おー、ホントにやったんだ」

ラスティは渡された辞令を見てそう呟く。

「お前、何したんだ?人事の方に圧力が掛かったって言うじゃないか」

上司が溜息混じりにそういった。

「いやぁ、ムカついたバカがいたんで喧嘩吹っかけてみました」

「見事にお前のボロ負けじゃないか。もう少し賢い生き方が出来るやつだと思ってたけどな」

さらに盛大な溜息を吐いた上司が言う。

「ははっ。まあ、譲れないもんまで権力に屈したくないので」

「お前、出世できんぞ?」

眉間に皺を寄せて彼が言う。

「良かったですねー。確実にライバルがひとり減りましたよ」

「何が『ライバル』だ。ひよっこのクセに。もう良い。ほら、行け。明日朝一番のシャトルで出立になるんだろう」

促されてラスティは敬礼をした。いつも少しだらけた感じの彼にしてはきっちりしたそれに上司はお手本のような敬礼を返す。

「頑張って来い」

「ありがとうございました!」

部屋を出ると仲間達が苦笑していた。

「意外と人事も粘ってくれたんですね」

ニコルの言葉にラスティは首を横に振る。

「いーや。たぶん、オレの思惑通りになるのがイヤだったんだと思うよ、あのおっさん。けど、これ以外自分のカードがなかった。それだけ。オレは『マッケンジー』だから『』にちょっかい掛けらんないし」

ラスティの言葉に「お前、まさか」とディアッカが言う。

「だから、『マッケンジー』だったのか?」

「いや?言ったじゃん。それが気に入ってるって。それに、母親が結婚したからって態々養子縁組をする方が手間だよ。自活できるんだし」

「まあ、そうだな。で、いつだ?」とイザークがラスティの手に持っている辞令を覗き込む。

「明日の朝一のシャトル」

「これまた急な...」とディアッカが苦笑した。

「受け入れ先の隊が困るだろう...」

アスランが呆れたように言う。

さんには連絡するんですか?」

ニコルに聞かれ「まあ、言わずに行ったら後がうるさいだろうし」とラスティが返す。

「...なあ、ちょっと聞いてみていいか?」

ディアッカが言う。

「いいよ。答えたくなかったら答えないけど」

「お前さ..ちゃん、どう思ってんの?」

これは皆も疑問だった。ふんわりとは分かるが、元々そういう感情が周囲に分かりにくいラスティだけに、確信が持てない。

の方はあの鈍いアスランでさえ、何となく察することが出来る。

いや、『何となく』しか察することが出来ないアスランの鈍さは相当のものということも言えるのだが...

「可愛いよ?」

「いや、それ以上は?」

ディアッカが聞くとラスティはニコリと微笑んで答えを拒否した。

「まあ、いいや」とディアッカも苦笑する。

「んじゃ。オレ、正式に辞令が降りるまではこっちに戻ってくるつもりないから。当分、ばいばい」

ちょっとイラッと来る笑顔でラスティが言う。

その笑顔に慣れている皆は苦笑して敬礼を送った。ちょっと眉を上げて驚いた表情を見せたラスティも返礼する。



夜、部屋でカガリに付き合って筋トレをしていると電話が掛かってきた。

はそそくさと電話に応じるためにベランダに出た。

カガリの筋トレは結構本格的だから大変なのだ。

「もしもし」

『お?今日は出た』

笑いながらラスティが言う。

「うるさいなー。で、何ですかー」

『オレ、明日から地球の駐屯地に勤務になったから』

軽い口調で言われた。

「え?何で??」

まさか、と先日の出来事が頭を掠めた。

「わたしのせい?!」

『うわー、自惚れ屋さん』

語尾に音符マークがついているようなそれくらい軽い口調だ。かなりムカつく。

「なによ!」

『ま、向こうが筋を通さない喧嘩の売り方をしたから、正しい喧嘩の売り方を教えたらやっとそれに応じたってトコロかな?』

「...どういうこと?」

『大人になったら教えてあげるよ』

「またそればっかり!!」

思わずモバイルを投げてしまいそうなくらいイラつかされる。

『ははっ。あんまり怒ってると皺が増えるよ』

「誰のせいよ!」

『んじゃ、元気でねー。たくさん勉強しなよ。教科書以外のことも、たくさん。あと、それだと地球まで連絡をつけることが出来ないから。というか、オレの勤務先によっては一般の電波ムリかもしれないから。あと、お腹出して寝ないようにねー』

そう言ってラスティが通話を切った。

全く...

そう思いつつも、はにやけていてた。

この間の事件であのモールのこととかどうでも良くなった。全く自分は単純だ。

「ラスティからか?」

部屋に戻ると筋トレ続行中のカガリに声を掛けられて目を丸くする。

「聞こえてたの?」

の問いにカガリは苦笑する。

「いや、それはさすがにムリだろう。の今の表情を見たら何となく分かる。あと、それ」

『それ』とカガリに言われて自分が無意識にネックレスに触れていることに気が付いた。

誕生日にラスティからもらったネックレスはこちらに持ってきている。お守りだ。あんな図太そうなラスティからもらったものだからきっと自分だってそれなりに図太くなれる、と思って持ってきた。

それが何となくの言い訳と言うことも自分で自覚しているが見ないようにしている。

学校に付けて行って没収されたら悲しいので、学校に行っている間は寮に置きっぱなしにしており、帰ったら付けるようにしている。

「良かったな」

カガリに言われて「うん」と素直に言えた自分に驚いた。









桜風
11.1.31


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