Ever green 16





家の鍵はイザークに邸に郵送してもらうように頼んだ。

「まあ、せいぜい一生懸命働いて来い」

夜勤だったイザークは少し抜けて見送りに来てくれた。

「オレ、戻ってきたらイザークよりも上の階級かもよ?イザークの隊長かも」

「悪夢だな」

げんなりとした表情でそう返されたラスティは愉快そうに笑う。

「んじゃ、あとはよろしく」

「必要以上に干渉するつもりは無いがな」

ラスティのいう『あと』が何かというのは察しがつく。

「聞かれたら、で良いから。あと、あっちに喧嘩を吹っかけないように止めることだけはお願いしたいなー」

「言っておく」

請け負ってくれた。

「んじゃ。また今度」

軽く手を振ってラスティはシャトルに乗り込んだ。

窓際の席に着いてデッキを見下ろした。イザークは律儀に最後まで見送ってくれるみたいだ。

ヒラヒラと手を振ると軽く手を上げて応えてくれた。


発射したシャトルの中で仮眠をとる。

そういえば、自分が本気を出したのって今までどれくらいあるだろう...

何となく手を抜いても何となく出来るからそれで充分で特に困らなかった。手加減している方が楽だったし。周りに色々と押し付けてきたし。特に、ディアッカとアスランだが。

まあ、でも。

今回は自分が売った喧嘩で、そうするって決めたのも自分だし。

「どん底、味わってもらいたいなー」

殆どの人に見せることの無い表情でラスティは呟いた。



ラスティが地球に降りてから1週間経った。

そういえば、いつ帰ってくるんだろう...

そう思って電話をしようとして思い出す。これだと連絡が取れない可能性が高いって言ってた。

えーと、じゃあ。

両親なら知ってるかな、と思って今度の休みに久しぶりに実家に帰ることにした。

「あ、ねえ」と部屋で宿題に励んでいるカガリに声を掛ける。

「どうした?」と手を止めて顔を上げてくれた。

「今度のお休み、えっと..うちに遊びに来る?」

友達を家に誘うなんてしたことがなくて、何か理由が要るのかとか思いながらも誘ってみた。

「いいのか?」

「うん。他に、ミリィとかも誘って。皆で」

「楽しそうだな。私は友達の家に遊びに行くことが今まで無かったから」

カガリは嬉しそうに笑った。

「わたしも、誘ったの初めて」

顔を見合わせて同時に噴出す。

「ちょっと皆に声を掛けてくる」

そう言っては部屋を後にした。



が友人を連れてくると言う事件に邸は朝から大騒ぎだった。

オーブの友達と言うこともあり、その文化を改めて勉強して失礼の無いようにとユーヒが家の者全てに通達した。

はまだ車の運転が出来ないので、ナビをして、家に帰る。

まだ数ヶ月離れただけなのに、何だか凄く懐かしい。

この邸に来てからは敷地から一歩も出なかったのだから、此処に根付いていた時間だって相当なものではあった。

だから、きっと数ヶ月程度でも物凄く懐かしいのだろう。

「お帰りなさいませ」とメイドたちに迎えられては首を傾げた。

「あれ?シフト制、やめたんですか?」

の言葉に皆は苦笑して「行き届かないことがあってはなりませんので」と古参のメイドがそう言った。

気合入れてるなー...

他人事のようにそう思った。

友人達はお土産を渡してきた。

「オーブの菓子だ。私たちが作ったから、市販のものに比べて味は落ちると思うが...」

代表してカガリが言うとメイドたちは頭を下げた。

部屋に案内されてカガリたちは部屋の中を見渡した。

「しかし、メイドまでいるなんて驚きね...」

ミリィがぼんやりと呟く。

「まあ、ちょっとずれたところがあったし。何となく納得したわ」

呆れたようにフレイが言う。

金銭感覚はフレイの方が麻痺していると思うけど、と思ったがそれについてはカガリもミリィも口には出さなかった。

「ごめんね、3人が同じ部屋で」

ドアをノックして顔を覗かしてきたのはだった。

「いいや。こういうのもいいだろう。それに、普段から共同の部屋じゃないか」

「そう言ってもらえると安心する」

そう言っては笑った。









桜風
11.2.7


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