| 放課後になって「人と会う約束してるから」と先に帰ったがその用事を済ませて帰ってきたときには何だか沈んでいるようだった。 根掘り葉掘り聞くのも良くないと思いつつも、会って来たのがあの彼女の父親と名乗る男だったらどうしようとカガリは少しだけ心配した。 翌日のはいつもどおりで、疲れていただけなのかなとカガリも安心した。 校内の掲示板の前でが止まる。 「?」 キラが声を掛けるが、全く反応せず、一点だけ見ていた。 「何を見て..ああ、アルバイトの斡旋だね」 色々な経験を積むことができる。 この掲示板で紹介されているアルバイトなら許可が下りる。 勿論、後見人の承諾がなければならない。 『後見人』という表現をしているのは、この学校がナチュラルもコーディネーターもいるからだ。 コーディネーターは13歳で成人となっている。だが、ナチュラルはそうではない。 そういった環境の違いから『保護者』という名称は少々相応しくないと言うところから『後見人』と称している。 名前が変わっても、要は保護者のことなので、何の意味があるのかと生徒の間では疑問が囁かれている。 「するの?」 「うん!決めた!!」 即決したらしい。 「何で?欲しいものがあるの?」 「行きたいところがあるの」 満面の笑みでそう返しては歩き出した。 昨日、ディアッカと話をした。 ラスティが地球に行くことになった経緯と推測ではあるが、その背景についての話をした後、ディアッカ突然こういった。 「ちゃんってホント子供だなー」 と。 「何で?学校に通ってるし、色んな人とお話できるようになったし。カードも使えるようになった。大人になってるよ」 ムキになって返すに「そこが、子供だよ」と言いたかったが、ディアッカが言いたかったのはそこではないので此処では指摘しない。 「ちゃんには、武器が無い」 「は?!」 「大人が守ってくれるから、子供は武器が無くてもいいんだ。戦わなくていいからね。ちゃんっていつも思ってたけどホント丸腰だもんなー」 ディアッカが苦笑する。は首を傾げながら周囲の『大人』を見渡した。皆何かしらの武器を持っているようには見えない。 「実際の物理的なもんじゃなくて。スキルって言うか、さ。汚いこと出来ないでしょ」 ディアッカのいう『汚いこと』もきっと物理的なことではないのだろう。 「例えば、親の威厳を傘に着るとか。ちゃんのお父さん、経済界でもかなりの人だし、威を借れるよ」 「そんなのズルよ」 「だったら、自分の武器を身に着けないとなー。今回みたいに、守ってくれる人が遠くに行っちゃったら危なっかしいよ」 「守ってくれる人って、ラスティ?」 少し不本意そうにが問う。ディアッカはニヤニヤと笑いながら頷いた。 「ディアッカの武器って、何?」 「この美貌」 即答されては半眼になる。何が『ビボー』だ。 「まあ、冗談半分で」 半分は本気か... 「うーん、人を騙すの得意だし、親が最高評議会の議員だし。あと、そうだなー。まあ、自分の実力でいうと、アカデミーの成績悪くなかったからザフトレッドだし?」 『人を騙すの得意』が一番に来る辺りどうかと思う。 「他の例で言うと、ちゃんが知ってるやつでは...イザークだって、あいつああ見えて努力家だからスキルは多いし、ニコルは言うまでも無いよな?あと、アスランはラクスと並んでも引けを取らない。ま、アイツも優秀だし。ラスティは、俺が言うまでも無いよな?」 はコクリと頷いた。 ラクスだって、プラントの代表として忙しく大人たちの間に立っている。 カガリも似たような境遇なのかもしれない。他の、クラスの皆。 考え始めると自分だけ何も出来ない子供のように思えてきた。 「ディア」と店に入ってきた女性を見て、はぽかんとした。 「また浮気?!」 キッとディアッカを睨みながら彼女が言う。 「いーや。この子、ラスティのかわいこちゃん。手を出したら宇宙のチリになるから」 笑いながらディアッカが言う。の耳には届いていないことを見越しての発言だ。 目の前のは目を丸くして彼女を凝視してる。 「ディ、ディアッカ...?」 「んー?」 「えーと、わたしこの間この人モールで見た」 一生懸命言葉を選んだ。 「あー、うん。コイツ、当て馬にラスティを選んだんだよ」 「全く、当て馬にならなかったけどね!」 ディアッカを睨みつけながら彼女が言う。 「当て..馬?」 何だ、それ... 「あー、えー...今度会ったときラスティに聞いてみ?」 ディアッカが言いにくそうに言う。 「わかった」 「あ、やっぱ、待って。聞くな、聞かない方がいいかも...」 ディアッカがうんうん唸りながらそう言う。 一体、聞くのか聞かないのかどっちだ? でも、何となくやっと分かった。 ラスティが言っていた『大人』というものが何か。 年を重ねるだけで大人にはなれない。たくさんの経験をして、経験をすることできっとディアッカの言うところの『武器』というものが身につくのだ。 父の威を借りれるほど神経が図太くない。かといってラクスみたいに大人の間に立って話をすることなんて絶対にムリ。この先はどうかわらないが、とにかく今は出来ない。 だから、今出来ることを見つけては嬉しかった。 これなら、ズルしなくても自分が頑張ればきっと何とかできる。 |
桜風
11.3.7
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