| 「おとうさん!」 会社から出ると声を掛けられて振り返るとが立っていた。 「どうしたんだい?門限、大丈夫なのかな?」 「届出を出したから、まだ大丈夫。ねえ、お願いがあるの」 「うん、じゃあ。オフィスに戻ろう」 そう言ってユーヒはの背を押しながらオフィスに戻ることにした。 がユーヒの仕事場に来るのは初めてだった。 初めて尽くしは相変わらず今も続いている。 応接室に案内されると秘書がコーヒーを出してくれた。 「、コーヒーは大丈夫だったかな?」 「飲めるようになったよ。でも、秘書さん帰りたかったんじゃ...」 が父の秘書を見上げると彼は微笑んで「大丈夫ですよ」と応えてくれた。 「すまないな」とユーヒも声を掛ける。 「外で控えておりますので、何かありましたらお声を掛けてください」 恭しく頭を垂れてそういった彼は静かに部屋を出て行った。 「さて、用件を改めて伺いましょう」 いつもと違う声音でそんなことを言われてはドキリとした。 「これを。同意書にサインください!」 そう言って職員室でもらって帰ったアルバイト同意書をテーブルの上に置く。 「ふむ...読んでもいいかな?」 規則が書いてある文書に手を伸ばしながらユーヒが言い、は緊張した面持ちで頷いた。 ちょっとの間のはずなのに、は落ち着かず、父の顔をチラチラと盗み見る。 「うん、まあ。サインしてもいいけど。アルバイトを始めたいと思った理由は?」 「ラスティに会いに行きたい」 キッパリとした口調でが言う。 「旅費くらい、私が出してあげるよ」 「ダメ!」 の見せた拒絶にユーヒは目をぱちくりとした。 「とても有難いけど、それだったらわたしはまだまだ子供のままになっちゃう」 ユーヒは首を傾げてコーヒーを一口飲んで、「詳しく聞かせてもらえる話かな?」と聞いてみた。 は少し躊躇いを見せたが話し始める。 「わたし、『子供』って言われたの」 一昨日ディアッカに会ったときの話だ。 「そこで、出来そうなものの候補としてこれが上がったということか...」 は頷いた。 「学校に行くのにおとうさんにお金を出してもらってるから偉そうなことはいえないけど、自分のしたいこと。ひとつくらい自分の力で何とかしてみたい」 まっすぐ自分の目を見て言う娘に少し、いや、かなり感動してしまった。思わず目頭が熱くなる。 ああ、取られてしまったなということも同時に思った。 「じゃあ、帰りのチケットは私が出すよ」 「え?!わたしの話...」 「うん、勿論聞いてたよ。はラスティ君に会いたい。だから、地球に降りたいんだよね?」 が頷く。 「私は地球に降りたに帰ってきてもらいたい。だから、帰りの分は私の願いによるものなんだよ」 あれ?なんか..ちょっと違わないだろうか。 家に帰るまでが遠足だって前にラスティが笑いながら言っていた。だから、往復でひとつの行為だろうと思うのだが... 「ここでが頷かないと、此処にサインが入りません」 脅された...父に初めて脅された... はうな垂れて「お願いします」と言う。 「じゃあ、お金が溜まったら言うんだよ?ああ、どの路線を考えてるのかな?」 「ザフトの...」 あっちか... まあ、確かにチケット代はあっちの方が安い。だが、ザフト関係者の推薦状が必要じゃなかっただろうか... 「エザリア様が国防委員会所属だって伺ったから...」 まあ、確かにそっちもいいだろう。 ラクスにお願いするかと思ったが、『ザフト』という言葉に縛られているようだ。 ラクスはどの機関にも確かフリーパスのような存在だったと思う。 まあ、間違いではないし、悪くないだろう。エザリアは凄くを可愛がってくれているし。 「考えているなら良い。じゃあ、此処で良いんだね?」 そういいながらユーヒがサインをする。 インクが乾くのを待ってにそれを渡した。 は嬉しそうに微笑んで受け取る。 「ありがとう、おとうさん」 「親離れをされるということがこんなにも寂しいものかと思ってるよ」 苦笑して返すユーヒには困ったように笑った。 「さて。がお金を無事に用意できるのが先か、ラスティ君が戻ってくるのが先か...どっちかな?」 「が..頑張る」 ちょっと怯んだに苦笑してユーヒは「無理はしないように」と釘を刺した。 「送ろう。車の中で学校の話を聞かせてくれないかい?」 ユーヒの言葉に「うん!」と元気よく頷いたにユーヒは目を細める。の背に手を添えて部屋を後にした。 |
桜風
11.3.14
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