| バイトを始めてひと月、だってその環境に慣れた。 学校の勉強も頑張りつつだから、体力とかその他諸々が大丈夫かな、と本当は心配だった。 体力面は、ルームメイトの筋トレに付き合っていたお陰で意外と着いていたらしい。 バイトは学校傍の喫茶店でホール担当となっている。 変なお客さんもそれなりにいるが、それらは正社員が対応したり、取り合えずそこまで酷いことになっていない。 でも、たまに酷いことになるときがある。 カランとドアの開く音がした。 「いらっしゃいませー」と振り返っては苦笑した。 最近、彼らがよく来るのだ。 「4名様ですね」と言うと彼らは頷く。 がバイトを始めた情報はキラからアスランに渡り、そのまま彼らの間で広がった。 初めて顔を覗かせた時は、彼らに周囲の空気はざわりと俄かに動いた。 彼らはどうやら有名人のようだ。 ニコルはともかく、他の人たちがそうだとは知らなかったはあのとき初めて驚き、彼らも驚いた。 でも、ラスティがああだし、も今まで引きこもっていたのだから知らなくても当然だったのだろうとすぐに納得した。 注文を受けてが下がったときにディアッカが「写真撮っても良いと思う?」と声を出した。 「は?」と眉間に皺を寄せてアスランが聞き返す。 「いや、中々制服が似合ってるし」 「撮ってどうするんですか?そのまま良からぬことに使うんだったらまたラスティにいじめられますよ」 呆れた口調でニコルが言うが「そのラスティに送ってやるの」とディアッカが笑う。 「やめてやれ」と言ったのは意外にもイザークだ。 こういうことに無関心であろうイザークが止めた。皆は驚き、「なんで?」とディアッカが代表して聞く。 「はラスティに会いに行くと言っていたが、おそらく、あいつには何も言っていないんだろう?」 「たぶんね。こういうのって驚かせたほうが楽しいじゃん」 ディアッカが頷いた。 「だから、だ」とイザークが言う。 ああ、そうか... 「それに、そんな写真を送ったらラスティに八つ当たりされるかもしれませんよ」 あり得る... ディアッカはひとり嫌な汗をかいた。 それ以降も彼らは時々やってくる。 揃ってやってくるときもあれば、ふらりと一人でやってくるときもある。 共通しているのは、がバイトに入っている日ということだった。 お陰で、がバイトに入っている日の売り上げは伸びているらしい。以前そっとが教えてくれた。 お礼を言われたが言われるようなことはしていない。 ただ、ちょっと気になっているだけだ。 マクスウェル議員があっさり後継を変えた。だから、ジョウイが逆恨みをしてもおかしくない。 ラスティはがジョウイに喧嘩を売りに行くことを心配していたらしいが、逆もあることを彼は気づいているのだろうか... いや、気づいていないはずがない。気づいているが、それを無視できる理由があるのだ。 考えても中々答えが出ない。ラスティ並みに性格が悪くならないと分からないのだろうか... 「なあ、ニコルは分かるか?」 ずっと考えていたアスランが聞いてみた。そこでニコルをチョイスする辺り天然だろう。 「それは、マクスウェル氏が全力で阻止するからでしょう?」 アスランの眉間に皺が寄る。 「ジョウイは少し前までマクスウェル氏が後継と周囲に紹介していたでしょう?後継ではなくなっても、その事実は消えません。これ以上泥を塗らすはずがない。塗られたら物凄く困るからです。 アスランはお父さんから話を聞いていませんか?」 首を振るアスランに「マクスウェル氏の地盤、もうギリギリらしいぞ」とイザークが言う。 「これ以上問題が発覚したらあっという間の失脚だ。幽閉でもしてんじゃないの?」 あっさりそう言うディアッカにアスランはジョウイに対して同情の念を抱く。 「自分の実力も知らずにラスティに喧嘩を売って、逆にもっと高く親にそれを買わさせた。自業自得だ」 素っ気無くいうイザークにディアッカが「つめたーい」と揶揄する。 「おまたせしました」と明るい声が割り込む。 テーブルの上に置かれたものが一つ多い。 「さん?」とニコルが言うとはぺろりと舌を出して「いつも来てくれる御礼です。食べてください」と言って下がる。 「成長が目覚しいねぇ」 苦笑して呟くディアッカに皆は何となく頷いた。 |
桜風
11.3.21
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