| 本当に、砂漠って暑くて寒いんだなーと白い息を吐きながらラスティはレセップスの甲板に寝転んで空を見上げていた。 「青春してるか、少年」 「いやぁ、もう枯れ始めてますよ」 苦笑しながらその声に反応して体を起こした。 マグカップを両手にひとつずつ持ったバルトフェルドが立っていた。 「飲みたまえ」と差し出されてラスティは「どうも」と受け取る。 「ダコスタ君は付き合いが悪いんだよ」 「そりゃ、隊長を諌めなきゃならない立場の人ですから?」 そう言ってラスティはコーヒーを飲んだ。 「新しいブレンドですね」 「味が分かる部下がいるっていうのは幸せだねぇ」と呟いてバルトフェルドもコーヒーを飲み上々の出来に唸った。 「んで?説教ですか?」 「されるようなことをしてるのかね?」 ラスティは笑った。「それなりに理不尽ながらも心当たりがあるので」と返すと「まあ、理不尽ではあるのかもしれないね」とバルトフェルドも頷く。 「最近、女の子達の相談が増えたとアイシャが言うんだ」 「へー、たいへんですねー」 全く心が籠もっていないラスティの言葉を受けて窘めるようにバルトフェルドが咳払いをする。 「隊長、アイシャさんが寝室で待ってるんじゃないですか。さわやかだけど、ヤローの部下と一緒に月の下でコーヒーを飲んでる暇なんて無いでしょう」 「彼女は今シャワーを浴びてる。もう少し時間が掛かるさ」 それまでの時間を潰すために付き合わされるのか。 「君は、何を思って空を見上げていたのかな?ラスティ・マッケンジー」 試すように、少し楽しそうバルトフェルドが言う。 「空に置いてきたかわいこちゃん」 素直に応えるとバルトフェルドは笑う。 「君にそこまで想いを馳せさせるその『かわいこちゃん』に会ってみたいものだね」 「ダメです。減るから」 笑って返すラスティにバルトフェルドは不意に真顔になる。その眸はラスティを逃がさないように鋭い。 「何をしてる?」 「色々とかぎまわってます。オレ、そう言うの得意なので」 「質問を変えよう。何をかぎまわってる? 正直に返すラスティにバルトフェルドはなおも続ける。 「まずは選別せずに色々。その中から、空に上がれそうな情報を見つけたらそれを掘り下げて墓穴を掘らせる」 「君に喧嘩を吹っかけて、それを買わざるを得なくなったのはジェレミー・マクスウェル議員だそうだね。君の、血の繋がった父親だ」 「心は繋がってません。血は、仕方ないですけど」 「『心』か...悪くない表現だ。それで、君は空に上がって何をするのかな?復讐か?」 「上がってからはすることは特に無いですよ。上がることが重要なんです」 ラスティの言葉に少し戸惑いを見せるバルトフェルドにラスティはニッと笑う。 「自分が圧力を掛けて叩き落した人が上がってきたら...隊長、どう思います?」 「せこくないか?」 ラスティのしようとしていることはわかった。方眉を上げてバルトフェルドが言う。 「人によってはそれが大打撃。オレのかわいこちゃんに意地悪をしたからね、あの家の子供が。ちょっとお仕置きしなくちゃ」 「政界は、『ちょっとした騒ぎ』じゃないみたいだぞ?」 「政界の情報は隊長のところなら入るのか...」 ついと目を眇めてラスティが呟く。 「今回、君の行動が気になったから聞いてみたんだよ。そうじゃないと、中々此処まで情報は降りてこない」 「こっちに居るから入る情報もそれなりにありますよ」 ニッと笑うラスティにバルトフェルドは溜息をつく。 「そんな君に朗報だ。ひと月後、10日間ではあるが休暇だ。短い期間ではあるが、空に戻るのだろう?」 「あ、休暇?ということは、ジブラルタルに10日間ですね?ラッキー」とラスティは笑う。 「戻らないのか?」と意外そうな声を出すバルトフェルドに「親にはそう言ってますから」と言いながらラスティが頷く。 「かわいこちゃんは?」 「オレも男の子なんでかっこいいところ見せたいじゃないですか。ババーンと辞令を持って『どーだ』って」 ラスティの言葉にバルトフェルドは苦笑する。 「君の『かっこいい』の定義がイマイチ分からんよ」 「ジェネレーションギャップですね」 生意気なことを言われても特に気にならない。そんな感覚が妙に不思議だ。 「それは君の才能だな」 「親に感謝しておきます」 笑って返すラスティに「そうしたまえ」と返してバルトフェルドは立ち上がる。 「カップ、洗って明日もって行きますよ」というラスティの言葉に「じゃあ頼もう」と言ってバルトフェルドは彼に自分のものを渡して艦内に入っていく。 ラスティはコーヒーを飲み干してまたごろりと寝転んだ。 「『オレのかわいこちゃん』 か...」 ポツリと呟いてラスティは苦笑する。 よくもまあ、しれっと言ったものだ... 自分の発言に呆れながら空を眺める。 「おーい、腹なんて出さずにちゃんと大人しく寝てるかー?」 届かないからとても安心してラスティは声を掛ける。 その場にが居たらまた怒るだろうが、その反応も何だか少し懐かしく思えてきた今日この頃だった。 |
桜風
11.3.28
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