Ever green 24





ラスティの所属している隊がジブラルタルに滞在すると聞いたのは彼らの隊の休暇ひと月前だ。

これも特に機密事項ではなく、家族には教えることが出来る情報なのでディアッカが教えてくれた。

「溜まった?」

「ギリギリ片道分」

は苦笑して言う。

「片道?帰る気ないの?」

「帰りは、おとうさんが出してくれるって。わたしに帰ってきてほしいから、って」

ああ、ラスティにそのまま掻っ攫われたくないとか思ってるのかなー、などと思いながら「ま、片道でも間に合ってよかったじゃん」とディアッカが言う。

「うん」と頷くに「推薦書は?」と聞いた。

「エザリア様にお願いするために今連絡待ち。お忙しいみたいなんだけど...」

ああ、今丁度議会中だもんなー...

そう思いながら「間に合わなかったら他の人に頼んだらいいんじゃないか?」と言ったディアッカには首を振る。

「エザリア様にお願いするって決めたのに、間に合わないからって、失礼じゃない。そのときは、縁が無かったってことで」

「『縁』?」

「オーブではよくそう表現するみたいよ。タイミングが合わなかったり、欲しいと思ったものが次の日とかに売り切れてたりしたら『縁が無かったんだなー』って思うんだって」

の言葉にディアッカは苦笑した。自分は日舞を習っていたからそういう言葉にそれなりに馴染みがあるが...

「学校通ってる成果だな」

笑って言うディアッカには首を傾げた。

「ちゃんと『勉強』してるってこと」

ディアッカの言葉に彼女は満足そうに笑って頷いた。


エザリアは議会中の忙しい時期にも拘らず時間をとってくれた。

がエザリアにお願いがあると言っていたとイザークから前もって聞いていたことなので、なんとしても時間を取るんだとエザリアが頑張ってくれたお陰なのだが、はそのことを知らない。

本来ならエザリアとしても最高評議会にある自分に執務室にが来てくれる方が楽なのだが、万が一にでもジェレミー・マクスウェルに会うような事があったらフォローしにくいと考えて自分の家に招いた。

まあ、丁度そろそろ少しくらいは帰りたいと思っていたし。

「いらっしゃい」と歓迎してくれたエザリアの表情はショッピングに行ったときのような張りというか生気というかが見られない。

政治家って大変なんだ...

は用事が手短に済むように前もって連絡を入れていたので、すぐに本題に入った。

さん、大冒険ね」

サインをしながらエザリアがからかう。

初めてのひとり旅行が地球で、まずはザフト基地。中々思い切ったことだ。

「恋に冒険はつき物です!」

言い切ったにエザリアはぽかんとして、やがて笑い出す。

「そうね。この世で最強なのは恋する女の子よね」

エザリアの言葉には満足そうに微笑んだ。



が地球へと旅立つ日、ゲートには両親と、手が空いたというニコルとイザークが見送りに来ていた。

ちゃん。ガツンと行っておいで」

母の言葉には拳をグッと握って「もちろん!」と返す。

「いやぁ、女の子って強いなぁ」

苦笑して呟くユーヒに「そうですね」とニコルも苦笑する。

「ま、あれくらいじゃないとラスティの手綱は引けんだろうな」

イザークの言葉にニコルは噴出した。

さんの手綱捌き。これから楽しみですね」

「そういう意味で優秀そうだしな」

笑いながらイザークも応じた。

、ジブラルタルに着いたら、まず東のゲートから出るんだ。門が近い。門番が話の出来るやつなら、お前の名前を伏せてラスティを呼び出すように指示してくれると思う。母上の推薦状、失くすなよ」

これは、このシャトルを手配するのに必要だが、基地内を歩くのだったら身分証明の代わりとなる。

何せ、その推薦状にはあの最高評議会議員エザリア・ジュールのサインが入っているのだ。

「はい!」

バッグを抱きかかえて彼女は頷く。

ザフトの制服を身に纏った人たちに紛れてシャトルに乗り込むに皆は手を振った。

、大丈夫かしら...」

不安げに呟くラスティの母にニコルは微笑んだ。

「この経路を選んだ時点で、かなりの度胸です。怯まないでしょう」

「しかも、その理由が『ラスティに会いたい』ただひとつだけらしいですしね」

イザークも請け負う。

地球に向かってどんどん小さくなっていくシャトルを心配そうに眺める彼女は肩を竦めた。

「ま、心配してもしょうがないか」

「そうだね...ラスティ君は、チェスで負かして憂さ晴らしをさせてもらおう」

ユーヒの言葉にニコルとイザークは苦笑した。

「寧ろ、負けたほうがいいですよ」

「ラスティに勝つと言うことは、アイツが本気を出していない証拠ですから」

イザークの言葉にユーヒはきょとんとして、「益々生意気な息子だ」と呟く。

ラスティの母、ニコル、そしてイザークは顔を見合わせて笑った。

「それ、今更よ」

まあ、あの大物に正面から喧嘩を売るような子なんだから、生意気で当然なのだろう...

彼女に指摘されてユーヒは溜息をついて苦笑を漏らした。









桜風
11.4.4


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