| バルトフェルドの車を遠慮なく借りてラスティは基地を出た。 「んで?何処がいいの?食事、買い物、観光」 しかし、の反応が無い。 「どうかした?トイレ??」 ラスティの言葉にはムッとして「違います!」と返す。 「じゃあ、何で黙ってるの?あ、先にホテルに行って荷物を置いてくる?」 「それでもいいけど。違うの」 何が違うか分からない。 「というか、ごめんなさい」 「あー、うん。突然ごめんと言われたその内容が分かんない。何に対して、ごめんなの?」 「せっかくのお休みに」 「お互い様。で?それがなかったら、次もある?」 「考えてなかったの」 が俯いた。考えていない、って何を? 「何を?」 ちょっと悩んだが、ラスティに導き出せる答えが無かったので、聞いてみた。 「わたし、ラスティに会いたいっていうだけで降りてきたから、特にその後考えてなかった」 この子、素直なのはいいことだと思うけど... ちょっと脱力仕掛けてラスティはそれに耐える。 「じゃ、荷物置いて、観光してメシにして、みやげ物を考える。何日こっちに居るの?」 「1泊2日」 これまた短いな... ラスティがそう言うと「ホテル代はおかあさんが出してくれるって言うから...」と恥ずかしそうに言う。 つまり、は今回の旅行では、地球に降りるだけのチケット代しか溜まらなかったらしい。 しかし、「ま、今回来て正解だよ」とラスティが請け負う。 「何で?」 「オレ、年内には戻れると思うし」と何事も無いように言う。 「へ?」 「目処はついた。あとは、隊長に協力してもらったら帰れる..と、思う」 おそらく、この休暇中に下準備が出来る。あとは、タイミングを誤らなければ動けるはずだ。 「ま、未定だけどね」と軽く言うラスティにはぽかんとした。 本当に、父の言っていたとおり、ラスティが先か、自分が先かの世界だったようだ。 「で?ホテルは何処?」 「えっと、ここ」 メモを取り出してラスティに渡す。 「ふーん」と何気ない反応だが、内心驚いている。 奮発したなぁ... ホテルのランクはかなり高い。だが、安全性を考えたらなるべくランクの高いところの方が安心できるのだろう。そのホテルは便利がいいところで、その上夜の繁華街からは程よく離れているし、ザフト基地からもちょっと離れているから何かあっても巻き込まれないだろうと予測できる。 よく調べたなー、と心から感心した。 車を走らせていると公園の前に差し掛かった。 「あ、」とが呟くのでラスティはブレーキを踏む。 「ちょっと寄り道する?」 ラスティの提案には喜んで「うん!」と元気よく頷いて外に出た。 いやぁ、出来れば戻るまではお子様のままで居てもらいたいものだなぁ... ラスティはそんなことを思いながらの後をゆっくり追った。 相変わらず花とか植物が好きなのか、咲いている花を覗き込みながら嬉しそうにしている。 「ラスティ」 ベンチに腰掛けてを眺めていると彼女は駆けてきてラスティの顔を覗きこむ。 「何ですかー」 「あのね、ラスティなら知ってると思うけど。わたし、ラスティが好きなの」 これまた超ど真ん中の全力ストレート。 変化球も覚えてもらいたいものだなぁ... 基本的に自分が変化球の人間なのでまっすぐに来られるのは苦手だったりする。 「うん、知ってる」 ラスティがそのまま淡々と返すとはグッと詰まって一度俯く。 そして、意を決したように顔を上げた。 「でも、今オレがをどう思ってるかは言わないよ」 先回りされた。 先回りされたが、何故そんなことを言うのだろう。相変わらずラスティはイジワルだ。 ラスティは微笑んでの頭にぽんと手を置いた。 「プラントに帰ったら言うよ」 「...いつ帰ってくるの?」 「遅くて1年以内」 キッパリと返すラスティには首を傾げた。何で帰れるのか、それだけの自信が何処から来るのかとても不思議だった。 「オレの全力って、自分でも怖いよ」 苦笑して漏らすラスティが益々分からない。 ちょっと拗ねたにラスティは笑って「これあげるから拗ねない拗ねない」と宥める。 そこがまた子ども扱いされたようでイヤなのだが、手の上に載せられたものを見てそんな感情はあっという間にどこかに行った。 「すごい、これ...自然の?」 「そこに生えてたから自然でしょう。他のは三つ葉だったし」 ふと目を落としたら、四葉のクローバーがあった。女の子はこういうのが好きだしなーと思って抜いたのだ。 四葉のクローバーが出来るのは遺伝に関係するから、今となっては簡単に作れるしそういった意味では珍しくないのだが、昔からの言い伝えて重宝されるみたいだ。 「ねえ、ラスティ。プラントに戻ってくるのもっと後でも大丈夫だよ」 何のことだろう。ラスティは「なんで?」と返した。 「だって、うん。わたし、ラスティのことずっと好きだっていう自信あるわ」 もう、ホントどうしよう。変化球、投げてよ... 色々と挫けそうになるが、ラスティも自分のペースを崩されるのはイヤなので、そのままのペースとテンションを保つように心がけながら 「へー...せっかく学校の通ってるのに。気になるのも出てこないんだなー」 と返した。 「仕方ないわよ。うん、仕方ない。だって恋って盲目なんでしょう?」 「...、オレをどうしたいの?」 「わたしはラスティの隣に立っても、ラスティが恥ずかしくない大人になりたい」 微妙に質問に対する答えにすればずれていたが、まっすぐ眸を見てそういわれ、ラスティは思わず視線を逸らした。 自分が地球に降りてほんの数ヶ月で此処まで成長されると正直、こちらの戸惑いが大きいんですけどー... 心の中では誰にともなく文句を言いつつ、もう隣に立っても全然恥ずかしくないよと言いそうになった自分の言葉を飲んで 「まあ、もうちょっと時間あるし、頑張って」 と返した。 また拗ねるかな、と思ったが彼女は微笑み、「見てなさい」と返してきたものだからラスティは目を丸くした。 女の子に追いかけられるのは慣れている。慣れていると思ったが、は別格だったらしい。 追いつかれっこ無いと思っていたから、追いかけられるのが平気だったし、面白かったが、の場合はあっという間に追いついて捕まえられそうだ。 「は怖いなぁ」 独り言で呟いたつもりが、意外と大きかったらしくの耳にも届いたようで、「なんで!?」とムキになって言うに閉口したのは言うまでもない。 「隊長」 門限に戻ってきたラスティはバルトフェルドの部屋に居た。 車の鍵を返すのが目的だが... 「隊長、これから半年、物凄く面倒なことに巻き込まれてくださいね」 そう宣言した。 ラスティの自信溢れる眸にバルトフェルドは深く溜息をつく。 「やっぱり、君は貧乏くじだったね。それも、とびきりの」 そう呟いたバルトフェルドにラスティは敬礼を向けた。いつもの緩いそれではなく、お手本のようなきっちりとした敬礼。 もう一度バルトフェルドは溜息を吐いて「君のかわいこちゃんを見れたから、まあ、その分働きましょう」と応じてくれる。 「を見たから応じるって言うんだったら、とことん付き合ってもらわないと釣り合いが取れませんよ?」 「生意気を言うな」 素っ気無く返されてラスティは「ありがとうございます!」と笑った。 |
桜風
11.5.2
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