| 地球軍との戦争真っ只中。 さらに、此処は砂漠を縦横無尽に駆ける旗艦のMSデッキに収納されたMSのコックピットの中だ。 「発進、どうぞ」 「・、出る!」 そう告げて発進した。 この世界の人間は大まかに2つに分けられる。ナチュラルと呼ばれる者とコーディネーターと呼ばれる者。 コーディネーターは殆どが宇宙のプラントと呼ばれるコロニー群で生活している。宇宙に浮かぶ砂時計のような形をしたコロニーがコーディネーターの帰るべき場所となっている。 しかし、ナチュラルの中にはコーディネーターの存在を認めようとしないものが多く、また、コーディネーターはナチュラルを蔑んでいる。 そんな歴史が続き、今ではそれぞれの間で戦争が行われている。 始まりは何が原因だったのだろうか。 最初はきっと些細なことだったと思う。 それでも、戦争はなくなるどころか大きくなっていき収拾がつかない状態に陥っている。 数で勝るナチュラルの地球軍。 対して、技術で勝るコーディネーターのザフト。 激化の一途を辿っているこの戦争には若き戦士と呼ばれるものたちの占める割合も増えてきた。 そして、その若き戦士と呼ばれる者の中に“・”も名を連ねている。現在15歳だ。 この砂漠での勢力は現在地球軍とザフトの間で拮抗している。お互い、隙あらば領地を拡大しようとしている。 大きな作戦はないが、戦闘はずっと続いている。 『よーし、これくらいでいいぞ。全機帰艦しろ』 隊長機からの通信を受けて各機が帰艦の体勢をとる。 『ああ、』 「誰の事ですか、バルトフェルド隊長」 が応えた。 『他の者は聞けない。ちゃんと君の機体にだけにチャンネルを合わせているんだ。そうピリピリしなさんなって』 カラカラと笑いながら隊長である、アンドリュー・バルトフェルドが言った。 「します。...で?オレに何か用ですか?」 『あら。オレなんて可愛くないわよ』 隊長機は復座型だ。時々、ではあるがアイシャと呼ばれる女性も搭乗している。 「可愛くないようにしているんです。それで、何ですか?」 溜息交じりに言うと 『ああ、帰艦したら隊長室に来てくれたまえ』 「了解しました。・は帰艦し次第、隊長室に伺います」 バルトフェルドは律儀に復唱した部下に苦笑して『ああ、そう急がなくてもいいからな』と返して通信を切った。 「しかし、困ったもんだねぇ」 肩を竦めて言うバルトフェルドに「そうねぇ」とアイシャも応えた。 あんなにピリピリして生活をしていたらそれこそ神経が焼き切れるだろうに... 隊長室でを待っているとドアが3回ノックされた。これはのクセだ。 「入りたまえ」 「失礼します」と部屋に入って敬礼したのは赤い制服に身を包んだ元・で現在の・だ。 がドアを閉めた。 「それで、だな。何を飲む?コーヒーがいいだろう?」 「苦くないコーヒーなら。この間頂いたコーヒーを20倍くらいで薄めたものなら頂きます。というか、自分は紅茶派なんですけどね」 「20倍で薄めたらコーヒーの香りが仄かにする水になるじゃないか。まずいぞ」 「では、この間のコーヒーを水で割ってミルクと砂糖をたっぷり入れた感じで」 「却下だ」と言いながらコーヒー豆をブレンドし始めた。 「隊長、自分はコーヒーを飲むためにここに呼ばれたのですか?」 厭味たっぷりにそう声を掛けた。 「焦ることないだろう?ほら、そこに腰掛けたまえ、」 「だーかーら!何度言ったら分かるんですか?自分は、・です」 「こっちも何度も言っているだろう?この部屋に居るときくらい、素に戻りたまえよ。先生が今の君を見たら嘆くんじゃないのか?」 そこまで言ってバルトフェルドはしまった、と心の中で舌打ちをした。 「アンディ!」とアイシャに叱られて肩を竦める。 「すまない、少し言い過ぎたな」 「べつに、隊長は謝られることは何一つ仰ってません。事実、きっとその通りです」 そう話をしているとドアがノックされて「失礼します」と人が入ってきた。 は振りかえって敬礼を向けた。 ドアを締めて振り返った彼の目にその姿が入ったため、彼も敬礼を返す。 「何だ、呼ばれていたのか」 「うーん、ダコスタ君。君は間が良いのか悪いのか分からないなー」 腕を組んでしみじみとバルトフェルドが呟く。 は思わず名前を訂正するタイミングを逃してしまって微妙な表情をしている。 「は?」と聞き返したが、気を取り直してダコスタはバルトフェルドに用件を伝える。 今、この部屋にの正体を知るものが揃ってしまった。 親が嘆く。 確かに、その通りだろう。 彼らはとても良識を重んじる人物だった。 でも、今は嘆きようがない。 もう言葉を交わせない存在になってしまったのだから... |
桜風
09.3.1