Flower garden 4





初めてを見たときには信じられなかった。

自分の恩師、といっても20年近く前の話だが、の父が教師として自分を受け持っていたことがあった。

そのとき、彼は娘をもの凄く可愛がっていた。写真を持ち歩いていたし、休みの日は学校にも連れてきた。

そのとき、バルトフェルドは彼女、に会っていた。

彼女の両親の写真を見たら、全員が母親似だと評しただろうが、自分の先生は頑としてそれは譲らなかった。

確かに、パーツだけを見たら似ているとも言えなくもない。当然だ、親子なのだから。

言い張っているの父親を可愛いとか少しだけ思った。

そんなこんなで彼女は覚えていなかったようだがバルトフェルドは何度かとあっていたし、一緒に遊んであげたこともあった。

だから、彼女がという名前で自分の隊に配属されたときには驚いた。

そもそも、赤を着ている人物は大抵空にいるものだ。

どうしてもナチュラルを蔑んでいる傾向にあるコーディネーターは地球に降りたがらない。あの下等なナチュラルの住んでいる地に足を踏み入れるのを嫌っている。

だから、エリートである赤は今回みたいな議会が決めた大掛かりな作戦のとき以外は大抵こんなところに降りてこない。

降りてきても大きな要所の基地、それこそジブラルタルやカーペンタリアのような基地に配属されるだろう。

それなのに、は此処を希望した。

ジブラルタル周辺では一番戦闘が多く、砂に塗れるようなそんな地を、だ。


、ねぇ...」

先に送られてきた書類を見てバルトフェルドは溜息を吐いた。

「どうしたの、アンディ。あら、この子...」

バルトフェルドが適当に机の上に投げた書類を見たアイシャが呟いた。

「この子、男の子?」

彼女の言葉に驚いてバルトフェルドは先ほどの書類をもう一度見た。

ぱっと見たときは一瞬自分の恩師の妻、若しくは娘と重なったが名前を見ても違うし、性別も勿論違った。

だが、改めてみるとやはり似ている。

当時の同期に連絡を取って話をしていると衝撃的な事実を耳にした。

あの夫妻は亡くなったらしい、と。

娘の事を聞いてみたが、それは知らないといわれた。が、家族で旅行に行っていた際に起こった事故らしいから一緒に亡くなったのではないかと言われた。

だが、それだけは推測らしい。

が配属されてダコスタに連れられてその挨拶に来たとき、

「やあ、よく来てくれたね。

と言いながら手をさし伸ばしてみた。

出し掛けた手が震えた。

注意深くその表情を観察すると動揺が見て取れる。しかし、それは長くは続かず、すぐに

「自分は、です」

と返された。

「僕はアンドリュー・バルトフェルドだ。君のお父さんの教え子だよ。君と一緒に撮った写真もある。見るかい」

バルトフェルドとの会話についていけず様子を伺うようにダコスタは沈黙を守った。

そして、バルトフェルドが机の引き出しから1枚の写真を取り出した。

「これは、君だろう?」

あまり物を保管しないバルトフェルドが珍しく大切に取っていたのは恩師の一家と自分が一緒に写っている写真だった。

何故それを捨てずに持っていたのか分からない。

の父の事は尊敬していたし、とてもお世話になったがそれでもこの写真だけを取っていた理由が分からなかった。

でも、この為だったのかもしれないと何となく思った。

様子を伺おうとを見たら目から涙があふれていた。

流石にそれには驚いた。

「すみません、心の汗が...」

の言葉にバルトフェルドは呆れる。

「それは、涙というものだろうが...認めたまえ。君がであってもこの隊への配属を取り消すなんてことはしない。ただ、理由だけは教えて欲しいと思ってはいるけどね」

乱暴に涙を拭っているにアイシャがハンカチを差し出す。

はそれを受け取って礼を言い、涙を拭いた。

そして、部屋の中を見渡す。

ダコスタ、アイシャ、そして、バルトフェルド。

「一度全部吐き出した方がすっきりすると思うんだがね。勿論、此処で君が口にしたことはここに居る僕たちだけの秘密だ。誰にも言わない。これは約束する。な、ダコスタ君?」

突然話の水を向けられて一瞬と惑ったが「はい」とはっきりと返事をした。

「ワタシも約束するわよ?」

そう言ってアイシャがそっとの肩に手を置いた。

数秒躊躇ったはゆっくりと口を開いた。









桜風
09.4.1