| 割り振られた部屋に入る。2人部屋にしても広いな、と思いながら部屋の中を見渡した。 「はベッド、どっちがいいですか?」 どちらも変わらないが、バスルームに近い方を選んだ。 「そういえば、さっきこっちに来る前に見たんだけど珍しいMSがあったな。クルーゼ隊のだって隊長から聞いたんだけど...」 「ああ、後で見てみます?たぶん、知っていると思うんですけどヘリオポリスで地球軍が開発していたMSですよ。作戦で奪取してそのまま使っているんです。僕のは黒い機体でブリッツって言うんです。はどんな機体に乗ってるんですか?」 「オレは、ディンだな、今のところ」 荷物をベッドに置きながらが応えた。 「“今のところ”、ですか?」 「ディンじゃなくても乗れるから。自機、って言っても汎用型のものだからな。ニコルみたいな特殊な機体じゃない。だから、乗換えがある可能性もあるし。何とも言えないな」 なるほど、とニコルは頷いた。 「でも、重力ってなれるのに少し大変かもしれませんね」 そんな事を言いながら部屋を出た。 「お、丁度良いところに。食堂行かね?」 そう声を掛けて来たのはラスティだった。 彼は相変わらずの顔をじっと見ている。 「オレ、後で行く。ちょっと建物内を歩きたいから」 そう言って食堂とは別の方向へと足を進めた。 ニコルが止めようとしたが、その背中が拒絶を示していたので声をかけ損ねた。 「あ、あれ...」 ラスティは呟いて頭をかいた。 「そりゃ、嫌だったんじゃないのか?」 ポテトを先割れスプーンに刺してディアッカが感想を述べた。 「や、だってさー...」 にんじんを突きながらラスティが口を尖らせる。 「しかし、と言ったか?狭量だな。あんな女顔をしているんだから女に間違われても仕方ないだろう」 「んじゃ、イザークは自分が女の子に間違われても平気なわけ?」 ディアッカが問うと睨まれた。 自分だって嫌じゃないか... 「まあ、任務に支障がないなら別に避けられても良いんじゃないの?」 ディアッカは肩を竦めながらそう締めてみた。 「ラスティ、気になってたんですけど」とさっきまでずっと黙っていたニコルが声を掛けてきた。 「何?」 「さっきの。・って...」 「ああ、俺の幼年学校のときの担任が女の先生で。娘が居るんだーって。写真を何回か見せてもらったんだけど。先生そっくりだったし、可愛かったから覚えてるんだけど...」 「その先生はどのプラントに住んでいらっしゃったんですか?」 「クィンティリス市。俺の親父が代表やってるとこだよ。まだ離婚する前だったから。家は俺んちとはコロニーが違ったけど...」 「そうですか...」と何事かを考えながら相槌を打つニコルに皆は首をかしげる。 「知り合いなのか?」とアスランが聞いてみる。 「たぶん...僕もそう何度も会った事があるわけではないんですけど。でも、ラスティが知っている・が僕と知り合いの彼女だったら。もう、ご両親と供に亡くなっているそうですよ」 沈んだ声で言うニコルに対してラスティが呆然とした。 「え、何で?!」 「事故だったらしいんですけど。僕の父と彼女のお父さんがひょんなことから仲良くなってて。その事故の話を聞いたときには両親の死は確認されていたんですけど、だけは行方不明ってなっていたらしいんです。 だから、彼女が生きていたら手助けをしよう思って探したらしいけど、結局見つからずに...それが1年くらい前の話だからもう絶望的だろうって。この間の休暇のときに父に聞かされました」 「事故って..まさか?」 コーディネーターを嫌う、寧ろその存在そのものを否定し、この世界からコーディネーター全てを排除しようとしている団体がこの世には存在する。 その団体、ブルーコスモスによってコーディネーターは多くの命を奪われている。 数ヶ月前に自分たちが知り合ったハーフコーディネーターの子は両親をそのブルーコスモスの活動によって亡くした。 そんな話が身近に感じられるからやはりコーディネーターの死を聞くとその原因が寿命ではない場合、ブルーコスモスに結び付けてしまう。 「いいえ。本当に事故だったそうです。家族でショッピングに行った帰りに大型トラックが突っ込んできて...そのトラック運転手は間違いなく僕たちと同じコーディネーターだったみたいです。居眠り運転ですね。トラックに突っ込まれて、避け切れなかったみたいです。結構大きな事故で巻き込まれた車が何台もあって。火災も酷かったって。あ、食事中にこんな話題、ごめんなさい」 「そっか...」 言葉の意味は理解したが、納得出来ないといった感じにラスティが言葉を漏らした。 もしかしたら、はの親戚か何かかもしれない。 だってあれだけ似ているのだから。 だったら凄く悪いことをしたな... ラスティは反省しながら天井を見上げた。 |
桜風
09.6.1