Flower garden 13





作戦決行日。の大爆笑が廊下に響いた。

「それは、いくら何でも...!!」

が指差して笑っているのはじゃんけんで負けたらしいイザークだ。

可愛らしいワンピースを着ている。後ろから見れば完璧だ。

だが、正面から見たら誰もが逃げていきそうなそんな感じ。

「難しいんだよ。って、は上手いな」

「殆ど手を加えてねぇよ。というか、イザークだって無理に化粧なんてするからそんな面白いことになるんだろう?」



指を差しながら笑っているの名を呼んでニコルがたしなめる。その姿で口調が乱暴すぎる、と。

「あ、えーと。とりあえず。クレンジングで落としたほうがいいわ..よ」

昔はこんな口調で話していたはずなのに、今は何だかしっくり来ない。

「くそ、何だってこの俺が...!」

「じゃんけんで負けたんでしょう?諦めることね」

が流暢に女性のような言葉で話すのでイザークは気味悪そうに見下ろす。

「...気持ち悪いぞ?」

「ほっとけよ。あ、じゃなくて..放っておいてよね」

「イザークも是非ともを見習って口調を改めないとなー」

ラスティがからかうとイザークが怒鳴りつける。

「イザークは、失敗だったかな?」

独り言のようにアスランが零して「だな」とディアッカが同意した。

が、「自分が」なんて言おうとは思わない。

とりあえず、イザークの尊い犠牲に甘えようと思っている。


クルーゼ隊では、ニコル・組とラスティ・イザーク組が市内に出ることになった。イザークにはディアッカが着くはずだったが、ラスティが市内に出たいと言っていたし、情報収集は人なつっこくて社交的な性格のラスティも結構得意だから任せることにした。


「どこに行きましょうか」

割り振られた地区に着いてニコルがそう聞いた。

「やっぱ、人の集まるところじゃないか?予算出たし、メシ行こうぜ」

「...口調、気をつけてくださいね、?」

昔の本名で呼ばれてドキリとした。

「別に、“偽名”を使ってもいいでしょう?女の子に“”ってのはないと思いますよ」

「あ、ああ。そうね。ごめんなさい」

「せっかくそんなに可愛らしい格好をしているんだから。これは、デートなんですよ?」

「ニコルは、楽しそうね...」

半眼になって抗議の意味を込めてそう言った。

「それは勿論。この作戦を考えてくれた誰かに直接お礼を言いたいくらいです」

「わたしは文句を言いたいわ」

そんな言葉を交わしながら結構流行っている店を見つけてそちらで食事をすることにした。

その土地の名物料理を口にする。

「そういえば、砂漠は何が名物なんですか?」

「ケバブ、かな?ヨーグルトソースかチリソースのどちらかを掛けるんだけどね。ヨーグルトソース大プッシュの人が居るよ。たしかに味はまろやかになるけど、わたしはチリソース派かな?」

そんな話をしながら運ばれて来た料理を口にする。

勿論、仕事も忘れておらず会話をしながらも周囲の会話に神経を向けていた。

食後の紅茶を口にしては満面の笑みを浮かべる。

「どうしたんですか?」

「こんなに美味しい紅茶、凄く久しぶりだから。ほら、ウチの..大家さん。コーヒー党で。自分で豆をブレンドして飲ませてくれるんだけど。それはもう、本当に濃くて...美味しさが全く分からないのよね」

大家、とは何を指しているのか最初分からなかったが、きっと隊長の事だろうとあたりをつけた。

「そうでしたか。ああ、。ケーキもありますよ?」

当分口に出来そうにないから食べたいとも思ったが、今食べたらまた我慢するのが辛いかもしれない。

そう思って「太るから」と適当に応えて首を振った。


食事を済ませてショッピングモールへと向かった。

レディースのテナントを冷やかしながら歩き、そのまま人の多そうな広場へと向かった。

丁度休日のようで、家族連れも多くその憩いの場で過ごしている。

突然銃声が鳴った。

とニコルは姿勢を低くして反撃できる態勢をとった。

もしかして、潜入していることが地球軍にばれたのか。

潜入自体は警戒されている可能性はあるが、それでも今の自分たちがザフトというのは見ただけでは分からないはずだ。

歴戦の勇者と呼ばれる人物であるなら、それなりに顔も知られているかもしれないが、自分たちはまだまだひよっこのはずだ。

この銃の引き金を引いている人物たちはブルーコスモスだったら、その組織の大義名分『青き清浄なる世界のために』と叫ぶだろうが、そうでもない。

「テロかな?」

「何とも言えませんね...この街は、一応地球軍の恩恵を受けているはずですからブルーコスモスっていう線はないと思います」

頭を低くしたままそんな会話をした。

コーディネーターを狙ったテロなら、バナディーヤで何度か遭遇した。

何度もやってくるブルーコスモスの構成員たちの命をバルトフェルドは毎回容赦なく奪っていった。

そんなことを考えていると「きゃあ!」と声が上がる。

この広場に居た女性が人質にされたらしい。

はニコルを見た。

「こんなことなら、僕が女装をしておけばよかったって今頃後悔してますよ」

が考えていることを察したニコルが小さく呟く。

そして、はその言葉を聞いて嬉しそうに笑った。

つまり、ニコルはがしようと思っていることに反対はしないということだ。任務優先を考えるのだったらここは彼女が人質とされたままやり過ごすべきだろうが、それはイヤだ。

「何かあったら、フォローよろしく」

そう言っては人質を取っている人物たちの傍へと静かに向かった。









桜風
09.9.1